造林学フィールドノート

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  • Amazon.co.jp ・本 (165ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784339052589

作品紹介・あらすじ

現在、森林が注目を集めている。それは木材や林産物の生産だけではなく、生物多様性や遺伝子保存、環境保全、そして保健休養など、多面的に着目されていることが現在の特徴である。
 森林に興味を持つ人、「森林が好きだ」という人は、数多い。しかしながら、いざ森林について学んでみたい、一から勉強をしてみたいと思っても、意外にそのハードルは高いかも知れない。 
 そこで本書は、そのような森林に興味を持っている、森林について知りたいという人が手に取り、学んでいく際のまさしくノート代わりになる指針書、手引書として書いたものである。
 通常の造林学の教科書では、森林帯、森林分布など、「森林」の大枠から論じていくものが圧倒的に多い。しかし、本書では、森林は個々の樹木の集合体であることから、樹木の特性を冒頭におき、まずは樹木を知ることから、順次、森林環境、森林土壌、育苗、更新、今後の造林学の課題へという流れをとった。森林に出かける前に、まずは日常空間の中にも見られる身近な樹木に親しむことから始めてみてはいかがか?という提案である。このことは、造林という一連のシステムが定式化してしまっている現在のわが国において、いつの間にか、個々の樹木の特性を顧みることが忘れ去られてしまっている感があり、そのため、その樹種の適地ではない場所に植林がなされ、あまりにも安易に樹木、樹種が、ルーティンワークの造林として取り扱われてしまっていることへの疑問も同時に呈している。

 森林は、多様な生命によって形成される生命集合体である。無機物の土壌の上に、個々の木本植物をはじめとした植物が成立、生育し、森林を形成している。その個々の植物、樹木が有機的に相互関係を持つことによって、当初の計画とは異なった森林の姿となっていくことが時に見受けられることも森林環境の持つ特徴である。いわば、森林が成立するということは、高度に多重な組み合わせ(combination)、確率(probability)のことでもある。そして、それらを一つの系(system)として考えた場合、まさしく森林は「複雑系:complex system」である。森林が多様、複雑であるならば、それに伴った多様、複雑なアプローチが必要とされる。

 これらの背景を考えると、造林学を考え、進める上では、生物学、数学などをはじめ、地理学、気象学、物理学、化学など多様な科学的アプローチが必要とされることが自明である。
 また、森づくりは、空間形成、環境創造でもあり、その地域の風景、景観をも創出し、美学、芸術、アートとしての側面、要素もあわせ持っている。

 本文には、随所にコーヒーブレイクなどのコラムやクイズもちりばめ、単調な学習とならないように心掛けた。
 タイトルを「フィールドノート」としたのは、森林をめぐり歩きながらの手引書、ノートであり、造林学の理論体系の本ではないことが一番の理由である。このノートが読者の森林への興味の発芽、伸長成長の一つの糧、雨滴となり、やがて大きな森林の世界へとその枝葉が伸びていくことを願っている。

著者プロフィール

1964年 長野県長野市生まれ
1986年~1987年 米国ミシガン州立大学農学部林学科 東京農業大学派米留学生
1988年 東京農業大学農学部林学科卒業
2000年 岐阜大学大学院連合農学研究科 生物環境科学専攻 博士課程 修了
     博士(農学)
2002年 東海女子大学 専任講師
2004年 兵庫県立大学 助教授
2006年 東京農業大学 准教授
2010年 特定非営利活動法人 日本森林保健学会 理事長(兼任)
2011年 東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科 教授
     現在に至る 

「2023年 『造林学ワークブック 森林科学の学び方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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