間違いだらけの経済論

著者 :
  • ごま書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784341081942

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  •  出版社が、出版社だけにノウハウ本の類か、あるいは、経済学の知見に基づかない欺瞞性の強い経済本だと思われるかもしれないが、著者の野口旭はそのような学者ではない。読者に基本的用語の使い方を説明し、その使い方の例を出来る限り素人にも分りやすく提供しようとする姿勢を持つ学者である。出版社が庶民向けの出版をする出版社であることも手伝って、手軽にそれでいて突っ込んだ理論の展開もある良書。
     通貨暴落という通貨危機の原因は、資本移動を認める固定相場制にあるという至極まっとうなそれでいて人口に膾炙していな経済論が収められている。輸出と輸入の差額が、国家の利益になるという俗説の否定が、リチャード・クーの暴論を批判することによって明らかにしている。経常収支の黒字は善、赤字は悪といった俗説を投資貯蓄バランスの観点から、見ることがマクロ経済としては政党であることを明快に分りやすく説明してくれいている。経常黒字は、資本収支の赤字であり、資本の流出を招くことになる。日本は、米国の経常赤字を、外貨準備残高の累積として「ファイナンス」しているのであり、またそれが、米国と日本、中国、東南アジア、資源産油国の貯蓄投資バランスからすれば、貯蓄が投資をうわまった状態である経常黒字によって米国経済を支え、そしてアジア諸国の繁栄を齎しているといえるのである。相互の利益にかなった経済体制が90年後半あたりから出来ているのである。
     貯蓄投資バランスから経常収支を見るという至極まっとうな経済論を、筆者はこの本から知った、その意味で、貴重な一冊となっている。マクロ経済の専門知、とトンデモ知と腑分けする著者より金融政策を経済を手なずける一策として把握する著者に老獪な目を認める、そこに共感するはの筆者だけではなかろう。

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著者プロフィール

[現職]専修大学経済学部教授。[専門]国際経済,経済政策,経済理論史。
『経済政策形成の研究―既得観念と経済学の相剋』(編著)ナカニシヤ出版,2007。『グローバル経済を学ぶ』ちくま新書,2007。『エコノミストたちの歪んだ水晶玉―経済学は役立たずか』東洋経済新報社,2006。『昭和恐慌の研究』(共著)東洋経済新報社,日経・経済図書文化賞,2004。『経済論戦―いまここにある危機の虚像と実像』日本評論社,2003。『ゼロからわかる経済の基本』講談社現代新書,2002。『構造改革論の誤解』(共著)東洋経済新報社,2001。『経済学における正統と異端―クラシックからモダンへ』(共編)昭和堂,1995。

「2012年 『変貌する現代国際経済』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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