芸術起業論

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344011786

感想・レビュー・書評

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  • 欧米の芸術の世界には確固たる不文律が存在しており、そのルールに沿わない作品は「評価の対象外」。取引されているのは人の心。アーティストの目的は人の心の救済。自分の欲望をはっきりさせる必要がある。芸術は欲望の強さ。欧米では日本的な、曖昧な「色がきれい〜」的な感動は求められていない。知的な「仕掛け」や「ゲーム」。日本は主観。欧米は客観。絵画は紙や布に絵の具を乗せた痕跡。それ自体に価値はない。「人間の想像力を膨らませる」という付加価値。想像力を膨らますための起爆剤がいくつも仕掛けられていなければならない。

  • 文章は下手だが、面白い。

  • 20150709 読了
    最強やわ。
    世界で戦う覚悟。
    これやね。

  • アンディ・ウォーホルは西洋美術史での文脈を作成する技術が圧倒的に違った。
    『インタビュー』という雑誌を創刊し、セレブな友人を増やす。
    共産国の象徴、毛沢東の肖像画を描いてスキャンダルを狙う。
    「操作できる範囲の外」さえも、まるで作品が演出しているかのようにしむけているのがウォーホルの技術。

    本当の批評は創造を促す。
    芸術家が提出した謎に対して美術評論家がある種の客観性を与える。
    客観性があるからこそ芸術家が作品を作り続けることができる。

    ヴァネッサ・ビークロフト
    http://matome.naver.jp/odai/2136305166045875501
    http://matome.naver.jp/odai/2140307183221435401

    日本独特の文化体系を欧米美術史の文脈に乗せる。狩野派は職業的絵描き集団。それは日本では芸術作品制作を集団で行うことの下地でもある。現代のアニメ工房は歴史的必然性のあるもの。

    ファインアートとサブカルチャーの区別なく、すべての表現が娯楽としてごちゃ混ぜになった。
    第二次世界大戦で無条件降伏した日本は、アメリカの支配下で民主化された。その過程で、日本には階級社会がなくなった。ここが欧米と日本の差。
    戦前は貴族の抱えたもので世界に通じるものであったが、戦後民主主義の世界では美術はすべての人が理解できるものであるべきだと認定された。

    欧米の美術は平等に楽しめない。欧米の美術は階級と共に形成され、美術界に資金が投入され活性化されてきた。

    日本では大衆娯楽の形で子供も大人も巻き込む芸術が育った。現代の漫画やアニメの発信地は日本。ここに世界の美術界で戦うための優位性がある。その芸術性の根幹を日本人独自の方法論で欧米に伝える。

    興味を抱かせて、楽しませて、ひきこんでいく。ありのままの説明では不十分。文化の精神性を説明することが、案外現代の美術の世界では大切である。
    背景や動機の設定は生まれ育った環境や芸術のよりどころを咀嚼しないと一歩も進めなくなる。

    作品制作のデータベースとして歴史を使う。漫画の世界ではこの方法はすでに使われていた。

    多数の目を並べると圧迫感という錯覚を与えることができる。西洋絵画の遠近法は錯覚の技法。

    明治以降、日本の美術家たちは西洋美術史の輪郭に沿い、ワクからはみ出していないかを気にしながら、同じ色を塗り続けていた。西洋に追いつくために新しい輪郭を西洋の文化に求め続ける日本人。文化とは色を塗る行為ではなく新しい輪郭をつくる行為だということを忘れたままの美術史が続いてしまった。

  • 大学の先輩にお勧めいただいた本を読了しました。

    芸術について直感的な意見しか持っていなかったし、
    そのことがプリミティブに正解だと信じ込んでいた自分に
    まったくそうではない世界が存在することを
    こと細かく教えてくれた本となりました。

    また、芸術の世界での世界における成功者の一人の本ですが、
    他のあらゆるジャンルに通ずる内容があるなぁと思いました。

    日本人が日本が現代に至るまでの背景を理解し、
    そしてそれが色々な世界の国々において、
    どのような文脈をもって捉えられるかを考えた上で、
    自らの長所をもって戦い、そして共感を呼ぶ。

    村上さんがたどったプロセスは概ね上記のようなものですが、
    あらゆるアートだけでなく、ビジネスすらも相似の方法論で
    成功への道を拓くことができるのではないか?
    そう感じました。

    音楽のシーンでの具体例としては、
    最近のBABY METALの海外での評価は
    まさにこの手法に当てはまると思いました。

    日本的な要素である和楽器を取り入れつつも
    ガッチガチの欧米音楽であるメタルを基軸におき、
    歌うのは日本独特の文化である『kawaii』を体現する
    アイドルという組み合わせの妙。
    そしてYouTubeという国境を飛び越えたSPによる
    全世界への認知拡大戦略。

    これが2014年のビルボードワールドチャートの
    年間ランキング5位に入ったという成功を
    もたらしたのだろうな、とこの本を読んで思いました。

    結局、この本を読んで芸術への理解が深まったのか?
    と言われると、正直よくわからないし、
    多分それほど深まっていないような気もしますが、
    それ以外の部分で得られた知見が非常に多い本でした。

  • 誰がなんと言おうと村上隆は成功者であるのだから、そこから学ぶことは大いにあります。批判があろうが、「これだから日本人は駄目なんだ。」と村上隆は思うだろうし、そう思われては反論のしようがないですね。芸術家というよりは戦略家、起業家。そして、当たり前ですが、とてつもない努力家に感じました。考え方がとても挑戦的で、しかもそれこそ確信犯でわざと狙って書かれているので、潔いです。文章中にも繰り返しあるように、日本文化、西欧文化を詳しく勉強したから成せる芸当でしょう。オタクの搾取とか、オタク文化の不勉強とか批判されていますが、全てはお金のため、自分の欲望を満たすだけという村上隆の信念が説明してくれます。少し気になるのは、結局、村上隆はこの本を出版して何をしたかったのだろうということです。日本人にもっと世界で活躍して欲しいのか。日本芸術は欧米芸術のルールを見習わなければならないのか。日本文化にもっと矜恃を持つべきなのか。それこそお金稼ぎか。よくわかんないけど、最後の砦とも言える日本文化は西洋に犯されてはいけない気がします。文化の棲み分けは重要でしょう。しかしながら、世界の第一線で活躍して、しかもあくまで日本文化の紹介に徹底した村上隆を誇りに思うとともに、彼の作品にはなんともいえない生命力とかパワーを感じることは拭えない事実ではないでしょうか。鵜呑みにし過ぎず、でも頭の片隅には残しておきたい本って感じ。

  • 芸術の世界で成功するには、ただ闇雲にがんばればいいってわけじゃない。作品づくりのために何日も徹夜して身体を痛めつけても、自分のことばかりいくら見つめても、何も状況は変わらない。
    本当に成功したいなら、業界の構造を学び、歴史を学び、自分の周りの環境から整えていくことが必要。アーティストでさえも、自分自身のブランディングが必要だ。と、村上隆は言っている。

    本当に成し遂げたいことのためには、なりふり構わず勉強して、戦う術を身につけなくてはいけないっていうのは芸術に限らずどんな状況にも当てはまる。
    「ただ努力するだけ」っていうのは、逃げていることと同義になる場合があるんだってことを肝に銘じておこうと思った。

    村上隆は、自分と同類の「自己プロデュース型」努力系アーティストとしてウォーホールやデュシャンを挙げている。反対に、一握りの本当の天才として、マチスの名を挙げる。高みにまで上りつめたアーティストの一人として、自分は本当の天才ではないということが痛いほど分かるのだろう。
    村上隆は会社を起こし、新人アーティストを育成している、らしい。一握りの本当の天才が現れるのを、待ち望んでいるんじゃないだろうか。

  • 自分の好きなジャンルをとことん追求・分析することの重要さ。

  • ちと思うところあって、この辺りがコンセプトなんだろうなと思い手に取った。
    狙いはドンピシャ。でも、中身は思った以上にビジネス書で、これはけっこうこのコンセプトをベースにどうモデル化するかは、よほど考えないとエラい目に遭うな。

  • とっちらかったつじつま。
    その中にびびびと来るものが散らばっている。

    重圧を作ることができる人とそうでない人では、行動の結果にかなり差がつくでしょう
    「ピンと来た」を快感に思う教育を施された欧米人と、そうでない教育を施されてきた日本人の差
    ものを伝えることは娯楽だと割りきらなければなりません。

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著者プロフィール

北海道大学スラブ研究センター教授。1942年長野県生まれ。
上智大学外国語学部ロシア語科卒業。(社)ソ連東欧貿易会ソ連東欧経済研究所調査部長を経て,1994年4月から現職。2000年4月から2002年3月までスラブ研究センター長。
専門分野は旧ソ連のエネルギー経済,ロシア極東経済,日ロ経済関係。
著書・論文には,『めざめるソ連極東』〈共著〉(日本経済評論社,1991年),『ソ連崩壊・どうなるエネルギー戦略』〈共著〉(PHP研究所,1992年),「ロシア石油・天然ガス輸出市場の形成」西村可明編著『旧ソ連・東欧における国際経済関係の新展開』(日本評論社,2000年),「サハリン大陸棚石油・ガス開発にともなう環境問題」(『ロシア研究』日本国際問題研究所,2001年),『サハリン大陸棚石油・ガス開発と環境保全』〈編著〉(北海道大学図書刊行会,2003年)など多数。

「2004年 『北樺太石油コンセッション 1925-1944』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村上隆の作品

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