不連続の世界

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344015395

感想・レビュー・書評

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  • 音楽プロデューサーの塚崎多聞が出会う不思議な話の短編集。前作があるのを知らずに読んだが、登場人物の説明もあり、内容に困ることはなかった。家近くの散歩も含み、仕事や目的で出かけた先での話となっている。
    5編の話は、それぞれが不思議でちょっと気味の悪い感じであり、ミステリーの側面はあるが、どちらかというと怪談的な要素が近いと思う。
    好きなのは、「悪魔を憐れむ歌」。聴くと不幸が起きる歌とその歌手を追っていくと、聞いていた話よりもさらに不思議で君の悪い話が待っていた。怖さの部分がジワっとくるのがよい。「幻影キネマ」と「夜明けのガスパール」も、どういった話か探りながら読んでいった先の楽しみが感じられた。「砂丘ピクニック」はゆるい感じの推理はよいが、二つの話の絡み方がわからなかった。
    全体的に不思議な感じに、じわじわと来る怖さは好きな感じの本だった。もう少し怖さがあってもいいかと思う。もう一作の「月の裏側」はSF色が強いそうなので、そちらも読んでみたい。

  • SFやホラーの要素を含んだ作品『月の裏側』の続編。

    五編が収録された連作短編集で、あとがきによると、恩田さん流のトラベルミステリとのことです。

    でも、旅情感はあまり無くどちらかと言えば、都市伝説系のミステリやホラーに近いものを感じました。

    前作と同様に、じわじわと押し寄せてくる恐怖感の演出が巧みで、それぞれの作品が持つ、不気味さや不思議さが際立ちます。


  •  短編ミステリーが一本の糸でつながってる感じのイメージを抱きつつ読みすすめた。

     最後まで読むと、短編ではあるもののその実大きな一つの話にもなっていて、とても興味深いものであった。

     身の回りで起こる不思議なことは、人の心というものが生み出す魔法なのかもしれない(有り体に言えば、思い込み、である。)。そんな感想を抱いた。

     心の有り様で魔法のような現象も生み出せる。本当に人間というものは興味深い生き物である。


  • 「月の裏側」の塚崎多聞の登場する短編集。
    全編を通してうっすらミステリ風の話。月の裏側の続きを期待していたので少し期待外れだったが面白かった。

    収録順が初出順では無く、多聞の年齢設定順になっているのが良かった。
    老成したキャラクターだか、若者の時と中年の時とは雰囲気が違って、それが面白かった。

  • 音楽プロデューサーの多聞さんが各地で、いろんな人と関わる中で起きる謎を個人的見解で語っていくようなお話。連作短編集5話。

    ミステリというよりかはホラーにちかくて、ホラーというより奇妙な、不気味でじゃあ結局あれはなんだったの…?って想像力を働かせられるようなそんなお話。

    1つ目の短編に出てくる、夢の話が好きでした。SFチックででも現実の何かを指し示すようなあの悪夢…。すごく好きです。場所が記憶を持つようになり、人間に干渉して夢を見せる…「風車の色を確認していたのでは?」の部分がまだ落とし込めてないので、再読したいです。

    2つめは聴くと死んでしまう音楽、山の音の話、3つめが映画のロケを目撃すると人が死ぬと怯える男の人の話、4つめが砂丘、5つ目が夜行列車…個人的に3つめの幻影キネマも、尾道の情景や海の匂いが思い出されて好きでした。

    でも癖は強いかなー!と感じた一冊。恩田陸何冊か読んでなれてから読んだほうがって勧めたくはなるかも。

  • 第156回直木賞受賞作家作品。
    大して面白くない。
    短編の集まり。

  • 『月の裏側』で登場した多聞さんが主人公の短編の寄せ集め。なんだか夢枕さんの陰陽師シリーズを思い出す風情。

    『木守り男』
    桜の季節、川べりを散歩する多聞は、売れっ子脚本家で豪邸と呼べる家があるにもかかわらずこの川のそばに今にも崩れそうな家を一つ持っていて、その家にいるとき男は過去の売れない脚本家だった時の自分を演じる田代に不思議な夢の話を聞かされる。田代によると、そのおんぼろな家にいるときにだけ見る夢なのだ。その夢の続きが気になった多聞に田代は答える
    「コモリオトコにでもきくんだな」
    (懐かしいは恐怖に似ている。)

    『悪魔を憐れむ歌』
    "聞くと死にたくなる歌"を歌う"セイレン"という女性シンガーの噂が気になり調べに来た多聞を、山の音が誘い込む。
    "あたしは眠れないの 今夜もあの音が聞こえてくる"

    『幻影キネマ』
    メジャーデビューが決まったバンドのデビュー作のⅯⅤをメンバーの一人の故郷である映画などで有名なロケ地にもよくなるO市で撮影することになってから、その町出身の保は何かにおびえ始めていた。彼にその恐怖の理由を尋ねる多聞は、ある恐ろしい話を、そしてその話の意味するところの根っこを聞くことになる。
    赤い犬が走り回り、窯を持った子供。犬の映画。

    『砂丘ピクニック』
    知り合いの翻訳家の仕事がらみの旅行に同行した多聞。彼女はある科学者がまとめたエッセイのような思想書のような奇妙な原書を訳している彼女は、その中の一節がどうにも納得できず、多聞の同行を依頼してT県の砂丘に来ていた。なんと砂丘が消えたというのだ。その消失の謎を追ううち、二人はもう一つの消失事件に遭遇する。

    『夜明けのガスパール』
    多聞は友人の誘いで夜行列車で怪談を話しながら香川まで行き讃岐うどんを食べに行くことになっていた。ガラスを叩く音がすると人が死ぬ。娘(だと信じている)の写真に写りこんだ母親らしき霊。患者の腹の中から出てきた拳大の髪の毛。話が続く中、多聞の心の中には一年前から失踪している妻ジャンヌのこと。その彼女から最近送られてくる写真の意味は。そして空が白む頃には…。
    現実を見なさい。共有できるのは恐怖だけかもしれない。

    怖い。こんなに文章で怖い思いをするとは。夏に読めばよかった。多聞さんの出ているもう一冊『月の裏側』の時も同じようなこと思ったけど。
    恩田さんにしたら(失礼!)お話の着地点は見やすい。
    おお、と思う描写もたくさんあった。
    私はこれくらいのミステリーが好きだ。
    飄々とした多聞さんの唯一人間味を剥き出しにした最後の章は胸が痛んだ。彼はこんなときまで静かに折れ曲がろうとするのか、と。
    友人に貸すなら夏、月の裏側とセットで。どちらから読むの?と聞かれたらどうしようか・・・。

  • 音楽プロドューサー、多聞の周りでは奇妙なことが起きる。
     それが解決されるというわけでなく、「どうです、奇妙でしょう」といった形の話が5編。
     その中で、「夜明けのガスパール」という1篇が特に面白い。

     夜行列車で怪談話をしながら、四国に讃岐うどんを食べに行くという会に参加した4人組の中で、多聞の心は、1年前に自分の前から姿を消したジャンヌのことが気になっている。
     彼女からは時々写真の葉書が届き、この頃の無言電話は彼女ではないかと思っている。
     仲間の一人が、ガラスを叩く音を聞くと人が死ぬ、という自身の体験話を語る。しかし、話していく中で、それは自分で叩いているのではないか、そうした形で納得しているのではないかということになってくる。
     その無意識の捻れを自分で作り出しているという話を聞いている中で、また、電話がかかる。年をとった女性の声が「いい加減に現実を見なさい」という。
     そして、多聞の現実が仲間の口から明らかになる。そのためにこの催しが計画されていたのだった。

     人は、現実が過酷で信じたくないものやことは、きちんと見ようとしないものだ。そして、もっとすすむと、自分にとっての現実を捻じ曲げて、別の物語を作ってしまう。

     多聞のひょうひょうとした生き方の中にも、そうした現実があること、それもとても強烈なそれがあり、これを読んだあとにまた、他の4編を読んでみるとまた違った味わいが出てくる。

  • 多聞さんは、本当に好きなキャラクターですね。引き付けられます。多聞さんが出てる本がまだあるようなので、楽しみです。何気なく始まる謎解きが素敵です。
    ラストは嗚咽が止まらなくて、家で良かった。

  • 夏の終わりに鳥肌。昨日読み終わった本も世にも奇妙な物語系だったけど、これも負けじと死なないミステリー。さすが恩田陸、退屈しなかった!多聞さん、他の本にも出てくるらしい。読んでみよう。一冊の中でしっかり時間が進んでることがいい。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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