魔法使いクラブ

著者 :
  • 幻冬舎
3.24
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本棚登録 : 455
感想 : 100
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344017528

作品紹介・あらすじ

小学校4年生の結仁は魔法使いになりたいと真剣に願うちょっと変わった女の子。放課後は毎日、幼なじみの史人、葵と魔法使いになるための特訓をしていた。合い言葉は、「3人の願いが叶うまで魔法使いクラブをやめてはいけない」。しかしある日、七夕の短冊にその願いを書いたことがきっかけで一瞬のうちに、クラスの笑い物になってしまう。一人だけ違う世界にはじきとばされたような、さみしくて怖い気持ちに襲われる。8年後、高校3年生になった結仁はまだ、「世界は突然自分を裏切り、はじきだす」という呪いのような記憶にしばられて生きていた-。

感想・レビュー・書評

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  • 私の感覚に物凄く合った本だった。
    10代のあやうさや不安定さをタイトルに反してとても現実的に描いていた。
    結仁みたいな女の子は、というか子どもは、
    誰かが無理にでも連れ戻さなければならない存在のはずだけど、
    色んなことが少しずつずれてこうなってしまうのかなあ。。

    最後のみんなのやるせなさ、というか、
    分かりあえたはずなのにひとり対岸にきてしまった結仁に
    幸せの黄色い車がきたことが何かの希望でありますように。

  • 結仁、史人、葵。三人は幼馴染で、魔法使いクラブのメンバー。

    お互いの願いを叶えるために自分たちで考えた魔法を唱えたりする可愛い小学生。でも、小学生にだって社会はある。魔法使いになりたいなんて言う女の子はハブかれてしまう。そんなときも魔法使いクラブは味方。

    中学生になって世界が広がっても、魔法使いクラブは健在。恋愛とか嫉妬とかそういう話をする仲ではない。でも三人は味方、のはずだった。恋愛や学校でのポジションが変わり、揺れる三人の関係。

    年齢的には高校生。あんなに勉強して合格した高校も、崩れていった家族のことも、今ではどうでもいい。自分の身体の写真を撮られようが、結仁の心は冷めている。
    あの夜から口を聞いていなかった魔法使いクラブがまた集まったとき、魔法なんて使えないことはみんなわかっていた。でも三人集まれば何か起こせる気がした。みんなが心に傷を負っていた。史人の告白は魔法の正体。痛すぎる真実。

    -----------------------------

    「あと3秒で信号変わったら今日はついてる日! 3、2、1‥‥」
    小学生のころ、毎朝願掛けをしていた。
    中学でも毎朝。高校でもしょっちゅう。
    大学、社会人になったいまでも信号のたびに賭けている。
    石を家まで蹴って帰れたら、明日は超ラッキールールとかあったな。強烈な自己暗示。

    絶対みんな同じように考えてるはずなのに言わない。バカだと思われるからかな。

    小説のなかで、結仁は「魔女になりたい」と短冊に書いて笑いものになっちゃってた。つらいな。でも、史人と葵っていう世界を共有できる友だちがいるってのは羨ましい。「あと何秒で信号変わったらラッキー!」なんていまだに朝考えてますとか誰にも言えないもん。

    中学、高校と進むにつれて、どんどんと自分の世界が、社会が広がっていくなかで、魔法使いクラブの活動は消える。でも、会わなくても結束は残ってたところに光がある、と思ってたら史人の告白。
    魔法使いクラブが三人の結束だと思ってたら、史人はそれに縛られていたのかな。

    安直な表現しかできないけど、深みがある小説だった。読み手側に想像の余地を持たせる感じ。心わしづかみ。

  •  周りばかりが変わっていってしまって、変わらないのは結仁だと思っていたのですが、本当に変わらなかったのは史人だけだったのかもしれません。
     人間は変わりたい時は変われないのに、変わってしまうことを止めることはできないんですよね。史人はきっとずっと三人で魔法使いクラブをやっていたかったんでしょうね。
     それは多分、愛とか恋とか言うよりは結仁が伊田君に抱いていた感情に一番近いような気がします。

     偶然とか奇跡とか思っていたことがもし誰かが仕組んだことだとしたら。
     それはどこか不気味で恐ろしいことだけれど、根底にあるのは多分好意よりも純粋な何かなのに起こったことはとてもおどろおどろしい。
     でも、兄妹の絆とかの下りは爽やかでしたね。
     最後に残るのはやはり家族というか、血縁という変わらないものなのかもしれませんね。

     リアルに怖いところも含めて、楽しめる作品でした。
     ちょっと悲しい小学生時代思い出したけどなっ!(ぁ

  • 不穏な方向に進んだだけ進んで、最終的にはっきりとした救いが描かれていなかったから結仁がどうなったのか気になる。

  • 少女悠仁の小学生から高校生までを描く。実体のない達観さのために孤立しがちであるが、孤高でさえいられずに残念.

  • 978-4-344-01752-8 361p 2009・11・25 1刷

  • 読み終わった日からしばらくは胸が痛くて突然泣き出したりする日々で、そのぐらい心に突き刺さっていた。
    昔のこと、変わった関係のこと、あの頃も今も大して関わらない人、手を繋げるぐらい近くにいても違う時間では気が遠くなるぐらい遠くにいる他人。
    ずっとずっとさみしかったことが目の前で物語になっている、と思った。
    思ったから、とてつもない親近感をもって読み進めていた。
    そうしていたら、あの、とてつもなく、心臓が速くなるラストシーン。畳み掛けるようにこころがひっくり返された。
    "関係性"のことをずっと考える。
    触れられる距離で触れ合っていたのに認識さえ不安になるほど遠くにいった他人にも、思考があり人生があること。
    少しだけ、さみしくない。

  • どうしようもない終わり方が好きだ。

  • ファンタジーではありません。爽快感はありません。
    つまり、人生ってこういう感じ、と語りたくもならないと思います。
    小説の絶対的評価、というものは難しいと思います。
    要は、私には合わないものだった、のでしょうね。
    第1章、そして第2章、登場人物のつまずきがどのように解決されていくのだろうと思いながら開いた第3章。
    もし、これがハリウッド映画なら、最後の色はもっともっと印象的に描くのではないか、と思った。かえって、強い印象に残さない程度のさり気なさが日本的なのかな。
    謎の種明かしは好きな感じ。
    登場人物、私のそばにはあまりいてほしくないタイプでした。
    おそらく、私が上のように感じたということは、作者の意図通りなのだろう、とも思いました。

  • このお話はいろいろな見方ができると思いますが、私は淡い初恋の話だと思っています。
    変わってゆく環境、自分の成長、淡い初恋を持ったままなので、取り残されてゆく自分。
    三部構成ですが、後半になるに従ってドロドロ現実味を帯びてきます。
    でも、人生ってそんな感じですよね。

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著者プロフィール

二〇〇五年に「窓の灯」で文藝賞を受賞しデビュー。〇七年「ひとり日和」で芥川賞受賞。〇九年「かけら」で川端康成文学賞受賞。著書に『お別れの音』『わたしの彼氏』『あかりの湖畔』『すみれ』『快楽』『めぐり糸』『風』『はぐれんぼう』などがある。

「2023年 『みがわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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