静電気と、未夜子の無意識。

著者 :
  • 幻冬舎
3.31
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本棚登録 : 168
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344022317

作品紹介・あらすじ

女子大生に刺さった。美人だけど不器用な未夜子の恋。

感想・レビュー・書評

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  • 良作。
    そうそう、恋ってこんな感じ。
    特に報われない恋って、こういう空気を帯びてたわ。
    恋愛小説はこうでなければな。
    甘さより苦味や傷みの方が強くなければ。
    余り期待してなかっただけに、かなり良かった。
    表紙も素敵で手元に置いておきたい一冊。

    『さよならと言ってしまうと、いままでなんとも思っていなかったものにも、
    なんだかさよならするのが名残惜しくなるからいやだ。』

    お気に入りの一文。

  • 読みながら浮かんできたのは渡辺あや脚本『ジョゼと虎と魚たち』で、たぶん木爾さんはこの作品が好きだと思う。言うなれば田辺聖子さんの『ジョゼ〜』という短編を渡辺あやさんが映画脚本にし、その影響を受けた木爾さんが自分に取り込んでさらに自分の中の物語の土台というか雛形にし小説にしていったような気がした。

    怖いものを好きな人と見たかったジョゼのような未夜子のカミナリ。僕は映画『ジョゼ』がとても好きなので勝手に夢想してしまった。亘という名前は恒夫を彷彿させるしツナ子はジョゼの祖母のようだ。

    0「未夜子と、格好よくてつまらない君達の夢。」の田辺睦夫は『メゾン・ド・ヒミコ』の岸本春彦の欄干にもたれている姿が浮かんだ。金魚たちはラブホテルでジョゼが見た古代魚のように未夜子の中に巣食っていてそれが亘との記憶と溶け合って空に浮かんでいるみたい。未夜子は恒夫で亘はジョゼと置き換えれるかなというのは僕が渡辺あや脳だからかもしれない。全然違ったら申し訳ないけど。

    未夜子は可愛くて他の女子からもおはようよりも嫌みや悪口を言われた方が多い女の子だが嫌みではない、ある意味では不思議ちゃんなのだろうがそれがすごく活きている。
    花火の時に洋を見ているかつての同級生は昔だったらきっと売れ残った金魚を大量に安く買って夜のプールにその金魚を放ったような女子たちに見えた。最近起きたプールに金魚を放った女の子達が浮かんだ。
    彼女達が羨む未夜子の間には友情なんか成立しない、恋に真っ直ぐな彼女はその辺りをシカトして自分の景色を自分の色彩で彩って何を言われても気にしないだからこそ美しさの中で燃える花火や生きていた金魚は鮮やかで終わった後の空の煙る景色や死骸になった金魚は哀しく朽ちている。
    気持ちやその感情にある自意識や景色を色鮮やかに書ける人なんだなって思った。絶対『ジョゼと虎と魚たち』好きだと思うんだよなあ、きっと。

  • [内容]
    未夜子は、大学のキャンパスで、いつも天文学書を読んでいる風変わりな男の子・亘に出会う。それまで恋人は顔で選び、格好いい男の子とばかり交遊してきた未夜子だったが、亘に出会ったことで、人生が激変してしまう。亘のことが気になって仕方のない未夜子は、追いかけて追いかけて、亘の部屋まで乗り込むものの、いつまでたっても彼女としては認めてもらえず――。美人なのに不幸な未夜子の恋の行く末やいかに。

    --
    単純な恋愛話、では片づけられない。
    ただまっすぐにこの人の文章が好きだと思った。
    読み始めてから最後まで、書き手ひとつひとつの言葉や台詞、情景、心理描写すべてに心を持って行かれた。
    内容的に、不思議系、というかちょっと股がゆるふわな女の子感はあるけど、なんでか惹かれる。
    別の作品があるなら読んでみたい。

  • 不思議。主人公の行動、思考が理解不能。

  • 新聞広告で見かけてタイトルが気になってずっと読みたかった作品。ファンタジーだな。人のことを本当に心から好きになれたら、こんな気持ちになるのかな。主人公には全く共感できないし、全体的にふわふわしてる印象。自分のことをいい年して名前で呼ぶ女はなんか嫌いなので、主人公にいれこめないのかも。ただ2作目が気になる作家ではある。2013/017

  • R18を受賞した作品のような性的な激しさはない。
    静電気と、未夜子の無意識…片想いなのに体を許す女の苦しみが切々とつづられている。金魚を掘り起こすあたりに深い哀愁を感じさせる。
    未夜子と、格好よくてつまらない君達の夢…複数の男と関係を持つのは男好きな女の宿命なのか。そして本当に好きな相手とは結ばれないというオチも宿命なのか。
    未夜子の、まだ明けない夜…評価はこの作品。片想いの相手を忘れられず、その気持ちがどこまでも煮詰まってしまう状態で、前にも後ろにも動けなくなってしまう。それでも唯一見た目ではなく中身を一瞬でも認めてくれたその男を忘れることはできない。こんな感電したように誰かを好きになれたら幸せだろうな。

  • かわいいだけが取り柄の女の子が、ある日突然ださい男の子に「かみなり」に打たれたみたいに恋に落ちる。

    ただそれだけの話で、ひたすら未夜子の亘への恋心が綴られた物語だけど、その世界にひきこまれて、未夜子の言葉に共感のような、なにか納得させられるような魅力がある。
    たった1人の女の子の恋心をここまで真摯に、丁寧に描いているのも珍しい。

    この人のほかの作品も読んでみたい。

  • 鱗のような未夜子。
    ぽろぽろ剥がれているというよりか、ぽろぽろ剥がれ亘にひっついてる。
    可愛くて痛々しくてて愛されてる子が未夜子。

    なんだか読んでいて普通に生きて死にたいと思った。
    普通の人で生きていきたいと。

    それと、ページが残り少しになっていくときにラジオから
    素敵、綺麗とか思っていた曲が流れた。
    けど、読んでいる時だけ汚く感じた。怖かった。
    綺麗なものまで汚くするけど、汚いものが流れていく感じで
    気持ちはスッキリした。

    亘のあの最後の知っていたのには嗚呼、運命と思った。

  • 装丁が夏っぽいなと思って図書館で借。
    なんとなく流してしまったかな。
    へー。と思って終わってしまった。

    でも、本気で人を好きになるってことは、こういうもんだとも思いました。

    うまくいくにしろ行かないにしろ、区切りは必要。

  • 「未夜子って、10代だっけ、20代だっけ」というのが読んだ後の感想。10代の戸惑いも、20代のどっしりさも未夜子は持っている。わたしも、「君たち」ととろけるような恋愛をしたかった。どろどろで透明な夜を、いつか過ごせますように。

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著者プロフィール

チレン(きな・ちれん)
京都府出身。大学在学中に応募した短編小説「溶けたらしぼんだ。」で、新潮社「第9回女による女のためのR-18文学賞」優秀賞を受賞。美しい少女の失恋と成長を描いた『静電気と、未夜子の無意識。』(幻冬舎)でデビュー。その後、少女の心の機微を大切に、多岐にわたるジャンルで執筆し、作品表現の幅を広げる。近著に、引きこもりの少女の部屋と京都が舞台の恋愛ミステリ『これは花子による花子の為の花物語』(宝島社)がある。黒歴史と少女の淀みを描いたミステリ小説『みんな蛍を殺したかった』に続くのが、本作『私はだんだん氷になった』である。

「2022年 『私はだんだん氷になった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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