はぶらし

著者 :
  • 幻冬舎
3.36
  • (25)
  • (97)
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  • (34)
  • (2)
本棚登録 : 672
感想 : 129
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344022416

作品紹介・あらすじ

脚本家の鈴音は高校時代の友達・水絵と突然再会した。子連れの水絵は離婚して、リストラに遭ったことを打ち明け、1週間だけ泊めて欲しいと泣きつく。鈴音は戸惑いながらも受け入れた。だが、一緒に暮らし始めると、生活習慣の違いもあり、鈴音と水絵の関係が段々とギクシャクしてくる。マンションの鍵が壊されたり、鈴音が原因不明の体調不良を起こしたり、不審な出来事も次々と起こる。水絵の就職先はなかなか決まらない。約束の1週間を迎えようとしたとき、水絵の子供が高熱を出した。水絵は鈴音に居候を続けさせて欲しいと訴えるのだが……。人は人にどれほど優しくなれるのか。救いの手を差し伸べるのは善意からか、それとも偽善か。揺れる心が生む傑作ミステリー!

感想・レビュー・書評

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  • 病める水絵のホラー感。
    生理的に受け付けない
    です・・・

    櫛木さんの『侵蝕』を
    彷彿とさせます。

    転がりこんできた知人。

    家に置いてあげて仕事
    を見つけてあげて息子
    の面倒まで・・・

    その見返りに睡眠薬を
    盛られ家探しされて、

    あげくが逆恨みされて
    罪悪感を植えつけられ。

    そうやってつけこむ人
    と、つけこまれる人の
    関係式。

    主人公の鈴音みたいに
    おひとよしで、

    言うべきことを言えず
    なことがある私。

    つけいる隙を与う以前、

    そもそも水絵みたいな
    人とは関わらんように
    しよう、うん。

  • もしも、、、
    10年前に会ったきり、新しい携帯電話の番号も教えていないので2年くらいは音信不通になっている高校時代の友人から
    「夫から暴力を受けて離婚した。慰謝料も引越しで使いきってしまった。仕事もリストラされ、住む家も失った。頼れる親戚もいない。お願い。次の仕事が決まるまで子供と一緒に1週間だけ泊めて欲しい。」
    と頼まれたらどうしますか?

    私だったら、、、どうするだろ?
    1週間だけ。幼い子供も連れている。
    どうする?どうする?

    独身で自宅マンションと、別に仕事部屋ももっている脚本家の鈴音は、嫌々ながらも水絵と7歳の耕太を受け入れる。

    初日に水絵と耕太に買い置きの歯ブラシを2本渡す。次の日、「新しいの買ってきたの。だからこれ、どうもありがとう。」と水絵が手渡してきたのは、昨日使った歯ブラシの方だった。

    …怖っ!
    ん?どういう神経?

    鈴音もどんどん水絵に対して違和感や嫌悪感を抱いていていくが、なかなか仕事が決まらない水絵に対して「出ていって」と強く言えない。

    読んでいる間 ずっと嫌な気持ちにさせられる。
    自分の良心が試されているような感じ。
    また水絵が『罪悪感』を抱かせるのが上手い!
    水絵と耕太を「これ以上は助けられない」と思うこちら側が悪なのか?と思わせるのが上手い!

    本の紹介を読んだら これは心理サスペンスらしい。
    でもね、最後まで読み切ったとき わたしには水絵の存在がホラーにしか思えなかった。

    最初から最後までずーーーっと水絵にイライラさせられっぱなしだけど、それさえ我慢すれば1日でサクッと読み終えちゃいます。

    『手を差し伸べるのは善意か、偽善か』

  • めっちゃ神経を逆撫でされた!不快さにため息まで出た。
    シングルマザーが子供をつれて昔の知人を頼って居候する話。初めに感じた小さな違和感は最後まで解消されず。気持ちがささくれだつイヤな感じが見事に描かれている。

  • 終始、いろんな意味でイライラする。
    10年も会ってなかった友人の家に転がり込んで、しらっとしている水絵もイライラするが、それを断れない鈴音にもイライラする。
    しかも、これと言う展開を迎えないまま、ラストに至る過程にもイライラ。
    読後感がかなり悪い。

  • はぶらし
    近藤史恵

    ✁┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    「はぶらし」、我が家は夫婦で同じの平気で使ってますけどね。お風呂に1本しかない私用の歯ブラシ、勝手に夫が使ってた。他人だと流石に嫌だけど、夫だとどうでも良くなる。夫婦揃ってそれをどうでも良いと思える価値観だから一緒にいられる。だから、価値観が違う他人が一緒に住むって大変だと思う。

    夫と離婚し、更にはリストラされ、住むところもない7歳の息子を持つシングルマザーの水絵。主人公の鈴音は押し切られるように、水絵の居候を1週間限定で許してしまう。

    居候期間を上手に延ばし、鈴音が見つけてくれた求人に良い顔をしなかったりするところは、一体この人はどうしたいんだろう?って不安になった。

    仕事やお金が余裕にあって独身の彼女なら...って鈴音を選んだって言うのは間違ってはいないんだろうな。でも、努力があって今の位置があるのだし、鈴音も彼氏と別れたり、仕事が上手くいかない時もあったりするのに簡単に「羨ましい」というのは違う。

    更に、こういう時に「結婚して子供がいたら制限される」を持ち出すのはずるい。結婚も子供も自分の選択してきたもののはず。「じゃあ、耕太がいなければいいの?」は水絵なら言いそうなセリフだなって思った。

    鈴音には、何上手いこと水絵に丸め込まれてるの!ってイライラ感が。水絵の息子の耕太がとてもいい子なので、彼がいるかどうかで鈴音の判断は違ってたのかも知れないけど。
    2人のそれぞれの気持ちも分かるなぁって思うところもあった。

    水絵の元夫が出てきて、息子の前で母親の悪口を言うのを、鈴音が否定していたのが印象的だった。水絵が辛い思いをしていたのが分かって味方をしたくなったんだよね。この人に耕太預けて大丈夫なのか?って思ったけど、ちゃんと好青年に成長してた。

    水絵が夕食の準備したり美容院行ったりしてた費用は、鈴音以外の人から盗んだものだったのかなぁ。

    ちなみに私は、美容院へ行く回数は半年で1回。前髪2週間に1回くらい自分で切って、ちゃんと整えられてると思ってる。

    2022/10/02 読了(図書館)

  • 嫌なかんじと怖いかんじと、ヒロインに移入してしまう度合い、
    移入しつつも「何しとんねん」って、ツっこみたくなるかんじと。
    最後、種あかし的なことがあってもなお、ジワーっと怖くなるかんじ。

    マジで故郷の同級生で、十数年会ってない、音信の無いようなヤツが
    ふいに連絡してきたりとか、要注意だから。
    ロクなことないなーーって思いを強くしました。

    でも、このヒロインは悪いことばかりじゃなかった、とか思ってそう。
    オススメです。

  • 人を助けることと、助けられることは難しい…というのがよく分かる

    一度助けられてしまうと、図々しくなってこれが当たり前と思ってしまう感覚、急に助けられなくなると冷たいやつだと思ってしまうというのは実際の生活でもあることかもしれない。

    一方で、助ける側も難しい。
    ずっと助け続けるわけにもいかないし、そこに責任が伴うと逃げてしまいたくなる。
    助ける義理はないと割り切れないのがお人好しで、そこにつけ込まれてしまうこともある。

  • ☆3.5。
    えー、水絵が怖くて気持ち悪い。
    結果何事もおこらなくてよかった。耕太くんがちゃんとした子で良かった。

  • 人はどこまで他人に手を差し伸べることができるか。
    今回のこの作品は、頼られてしまった鈴音側で物語は語られているけれど、もしも、作者が頼る側の水絵側の立場で描いたとしたら、書き方次第で、それぞれの相手への心証は変わってくるのかもしれない。
    余裕のある者とない者では、見える世界は全く違うし、それぞれに互いに分からないような、譲れないものや言い分がある。
    人助けもどこで線引きするか…はとても難しい。

    家出した義母を引き取り、1年一緒に暮らしたことがある。
    当時、私は病気を抱えて退職、夫の会社もリーマンショックで、金銭的にも収入が四分の一に減り、困窮していた最悪なタイミングで、転がり込んできた義母。

    他に頼る人も行く所もないのに、「好きでここにいるんじゃない。こんなところ出て行きたい」と言い放つくせに、遊んでばかりで仕事も探さず出ていく気配はゼロ。
    援助しているこちらが色々我慢して節約してやりくりしているのに、「外食したい」だの「旅行に連れてけ」だの我が儘放題。
    それどころじゃないのに、気分転換にカーテンを変えたい、庭を変えたいと、どんどん家が義母の物や好みで侵食されていく腹立たしさ。

    歯ブラシに関しては、本当に呆れる事件があった。
    ちゃんと色分けして、義母の歯ブラシを買い与えたのに、それを使わず、私がずっと使っていた歯ブラシを義母も使っていたのだ。
    違和感を感じて問いただすと、「だってピンクの方が可愛いかったから」とか摩訶不思議な答え。

    一緒に暮らすと、自分の生活がどんどん侵食されていく。
    こちらも全てに妥協できないので、「こうして欲しい」と意見すると、「私はこんなに我慢しているのに?」と悲劇のヒロインぶって耳を貸さない。
    言い争いが絶えなくなり、結局義母を追い出す形に。

    人を頼ることは決して悪いことではない。
    もっと人に「助けて」とSOSを出せる社会であって欲しいし、助け合えるような社会であって欲しいと思う。
    でも、人にどう思われようと、自分の人生を守るのは、結局自分しかいないということ。

  • 今年に入ってからツイてない事が続けざまにあった鈴音。
    仕事の企画が中止になったり、2年つき合っていた恋人と別れたり・・・。
    そんなツイてない彼女のトドメとなる出来事が起きる。
    10年間疎遠だった同級生の女性から突然電話があり、一週間だけ同居させてほしいと言う。
    彼女は夫と別れ、子供を連れて家を出た。
    しかし、仕事もないし、行き場もないと言う。
    嫌な予感がしつつも一週間だけならと承知した鈴音だったが-。

    タイトルとなっているハブラシが象徴的な話です。
    同居を決め込んだ初日、同級生の女性は主人公にハブラシが無いと訴える。
    そこで鈴音は新しいハブラシを貸す・・・というか、あげると、彼女は翌日買ってきた新しいハブラシでなく、使った方のハブラシを返す。
    この女性はどこか感覚的にズレいている所があり、一事が万事そんな感じで同居生活は進行する。

    だから主人公は彼女と同居してイライラする。
    それでなくても自分の家に他人がいると気をつかうものだし、自分の家なのにリラックスしきれないというストレスがたまっていく。
    ・・・と言っても思ったほどは同級生の女性が傍若無人に振る舞っていないという印象も受けました。

    彼女は子供・・・男の子を一人連れて主人公のもとを訪れるけれど、その子供というのがおとなしくて聞き分けのいい子だし、彼女も最初の約束通り、一応ちゃんと仕事を探すし、家事もしてくれる。
    そういう彼女の様子が使い古しであれハブラシを返すという行為に表れていると思います。

    これが子供がどうしようもない暴れん坊だったり、女性が仕事を一向に探さない、男を家に連れ込むとかいう状況なら分かりやすい。
    主人公の女性も良心の痛みなど感じず、彼らを追い出す事が出来たでしょう。
    そうでない、ビミョーなラインにいるというのが正に困った、という感じです。

    これを見ていると、お金を借りる人の事をパッとイメージしました。
    借りる時はペコペコしてお金が借りられると感謝する。
    でもいざ、そのお金を返せと言われるとまるで自分のモノを返せと言われたようなふてぶてしい態度をとるようになる。
    この物語の同級生の女性も最初は一週間だけ・・・と言いつつ、同居する内にそれが当たり前だと思うようになり、主人公の女性を責めるようになる。

    主人公の女性はお人よしだと自分で自分の事を言っていますが、確かにそうだと思います。
    住む所を提供しているだけでなく、仕事も紹介したりして・・・。
    そこには早く出て行ってほしいという気持ちがあるにしても十分親切だと言えます。
    相手はそれほど親しかった訳でなく、困ったからと言って10年ぶりに頼ってきた人なんだし。
    そんな彼女はイライラしつつも言い合いになると後で相手女性の気持ちを分かってなかった、と自分を責めたりする。

    親切というのはどこまでしたらいいものなのか?
    自分自身が満足するまで?
    それだと、主人公はどこまでもイライラしつつそれと同じだけ罪悪感を抱えてしまい、それがさらに相手に対するいらだちになるという悪循環になっていたでしょう。

    ラスト付近の文章を読むと、同級生の女性が主人公に信頼を寄せていて、迷惑をかけながらも一応それまで世話になった所とは線引きしていた様子が見えて、少し切ない気持ちになりました。
    彼女は彼女でショックを受けて傷ついて、だからああいう行動に出たのだと・・・少し理解できました。

    これは読んでいる間中、私がこの二人の女性だったら・・・と想像しながら読む本でした。
    私が主人公ならどうするか。
    この場面、そしてこの状況で-。
    反対に自分が同級生の女性なら-。
    ・・・というか、私には10年も会ってない同級生を頼ろうという発想は最初からないけど・・・。
    ラストはあっさりした印象ですが、この話どう落ち着くの?とハラハラ、イライラしつつ読める本でした。
    面白かった!

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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