はるひのの、はる

著者 :
  • 幻冬舎
3.85
  • (62)
  • (141)
  • (86)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 682
感想 : 141
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344024137

作品紹介・あらすじ

ある日、僕の前に「はるひ」という女の子が現れる。「未来を変えるために、助けてほしい」と頼まれた僕は、それから度々彼女の不思議なお願いを聞くことになり…。時を越えて明かされる、温かな真実。切なくも優しい連作ミステリー。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「あ、加納朋子さんの新作が出てる♪」
    と、もうそれだけでうれしくて手に取って、読み始めてわずか数ページ。
    誰かの大きな腕に抱き上げられて、瞬く間に
    昔、花冠を作って遊んだふるさとの草原にぽん、と降ろされたような。

    やわらかなひらがなの並ぶタイトルで、どうして気づかなかったのでしょう。
    優しすぎて危なっかしかったサヤが、しっかりと子供を見守る母親になって。
    よちよち歩きの赤ちゃんだったユウ坊が、初恋を知る少年、ユウスケへと成長して。
    『ささらさや』の懐かしいあの人この人を「おかえりなさい!」と抱きしめたくなります。

    霊を見ることができるだけじゃなく、会話さえ交わせるユウスケ。
    彼らをまったく怖がらないどころかさらっと受け入れ、お願いまで聞いてしまうのは
    幽霊になってもしつこく(?!)妻子を見守り、世話を焼き続けた
    父親の遺伝子を受け継いでいるからかしら、と微笑ましくて。

    何年かに一度、気まぐれのように現れる謎の少女はるひに導かれて
    ユウスケが佐佐良の町の人々を、小さな奇跡で繋げる物語。
    「時」がお話の行方を大きく左右する作品であることも、
    時間ものが大好きな私にはこの上ないプレゼントでした。

    ユウスケが失った初恋が、よりよき未来を連れてくるのがせつないけれど
    「これは母としてのエゴだ」と覚悟を決めてする、「時」の改変が、
    それが幼子だろうと、いい大人になった男性だろうと
    また別の母親の愛しい子供を救うことに、頼りない母である私は胸が熱くなるのです。

    一章一章読み進めるたびに、なんてお話にぴったりなの?!と
    ページを遡って眺めずにいられないファンタジックな扉絵も、とても素敵です。

    • まろんさん
      gumi-gumiさん☆

      私も『ささらさや』シリーズ、大好きです!
      やっぱりgumi-gumiさんとは本の好みが合っているんだなぁ、とうれ...
      gumi-gumiさん☆

      私も『ささらさや』シリーズ、大好きです!
      やっぱりgumi-gumiさんとは本の好みが合っているんだなぁ、とうれしいです♪
      切ない物語ではあるのだけれど、
      あどけない赤ちゃんだったユウ坊が、幼児から素敵な青年へと
      成長していくのが見られて、幸せ気分も存分に味わえましたよ。
      『てるてるあした』に登場する人たちのその後もちょっぴり描かれていたりするので
      gumi-gumiさんも佐佐良に里帰り(?!)した気持ちで
      加納さんの優しく温かい世界に浸ってくださいね(*'-')フフ♪
      2013/09/15
  • いろんな願いがある。
    その願いが誰かを守る時もある。
    その逆もあるかもしれない。
    この物語の中で叶えられる願いは、皆を救ったかのようだけど、たぶん見えないところで泣いている人がいる。
    その人から見たらこの物語は暴力的なお話になってしまうかもしれない。
    自分さえ良ければいいのかと。
    自分のためにいろんな人の運命を引っ掻き回したと。

    こんなに優しい物語を読み終わった直後にこんなことを考えている自分が嫌になるけど、どうしても想像してしまう。
    はるひが誰かを不幸にしてしまっていたらどうしよう。なんてことを。

    はるひは自分のことを「とんでもないエゴイスト」だと語る。
    もし誰かを不幸にしたとしてもきっとはるひは諦めなかっただろう。
    そのことも全て含めて抱え込んで、傷ついて、でもやっぱり守ろうとしただろう。
    そこまでは書かれてないけれど、この物語はそういう物語でもあると思う。

    一人で走り回って、何度もやり直して、きっと心細くて、つらくて、怖くて、何度も泣いたと思う。
    それでも叶えようとした願いがエゴの塊だったとしても私ははるひが好きだ。
    実害を被ったら同じことは言えないだろうからすごく無責任な言葉になってしまうけど、好きだなと思う。
    優しいユウスケのことも。
    好きだな。
    どんな願いも願うことは止められない。
    否定出来ない。
    そう思った。

  • 佐々良シリーズ最終作。
    今回の主人公は、さやの息子ユウスケ。幽霊が視える体質を持ったユウスケが、不思議な女の子に協力を求められて、不思議な体験をしていく。
    一つ一つのお話は独立しているように見えて、最後に一気に繋がる瞬間、背筋がゾワっとした。何となく気付いてはいたけれど、「あの時のあの子は、やっぱりこの子だったのね…」と、テストの答え合わせをする時のドキドキ感にも似ている。
    さやさんやおばあちゃんズがあんまり出てこなくて寂しかったけど、次世代の子にバトンが繋がっていくのを感じて、これはこれで良いお話でした。

  • 職場で昼休みに読んではダメだった。電車の中でも読まない方がいい。切ないけど暖かい[ささら]の最後の物語。

  • 加納さんらしく柔らかさのある不思議な話でした。また、時を置いて読みたいと思います。

  • 遠い遠い未来でいい。
    あの人に出会えるなら、
    いつまでだって待っていられる--。

    ささらシリーズの第三弾
    佐々良という街で起こる不思議な出来事…。

    その記憶は、もしかしたらもっと遡る事が出来るかもしれない。
    ただ、ユウスケがはっきり憶えているのは、小学校に入学するより
    もっと前の春…『はるひ』という女の子と出会った。
    はるひは、ユウスケを知っているけどユウスケははるひを知らない。
    はるひにはやらなきゃならない事がある。
    未来を変える為に、助けて欲しいと言う…。
    それから、度々彼女の不思議なお願いを聞く事になり…。


    『ささらさや』では、赤ん坊だったユウスケ
    赤ん坊だから、幽霊が視えるのかと思っていたが、
    小学校入学前から始まる今回のユウスケは、相変わらず視えていた。
    はるひの不思議なお願いをきくうちに関わってくる幽霊達…。
    優しいゴースト達のお話に入り込んでしまいました。
    ミヤのお話が良かったなぁ。
    んー猫じゃないの?猫じゃないの…って思ってたらやっぱり猫ちゃん
    去年亡くした我家のにゃんも嫉妬深かったなぁ…。
    長電話が嫌いでとんでもなく大声で鳴き叫びながら
    ドタドタ走り廻ってた…。
    そんな事を思い出しながら読んでたら涙が溢れて止まらない…。
    はるひのお願いを果たしながら、ユウスケもどんどん成長してゆく
    物語も進んでいく。

    『はるひのの、はる 前』で、ユウスケが高校の入学式からのお話を読んですぐ
    えっ!?どーして?
    それは、はるひとユウスケが無かった事にしたんじゃないの…?
    頭の中は?マークだらけ…。
    でも、『はるひのの、はる 後』で、丁寧に謎を解き明かしていく。
    あぁ、こんな風に繋がっていたんだ。
    全てが繋がった時、はるひの切実な願いがわかりました。
    切なかった…。
    ほんの少し歴史を変えてしまう事で、皆が幸せになる。
    とっても、ファンタジー色!?が強くなっていました。

    赤ん坊のユウ坊が、どんどん素敵な少年から青年へと成長していく
    姿を追えてとっても嬉しかった。
    本当に良い子に育ったね。
    あのお母さんやお夏さんや珠ちゃん達に育てられたからそうだよね。

    やはり、切なくて優しくて温かいお話でした。

  • ささらシリーズ第3弾。
    じーんと心にしみて、ほろりと涙がこぼれる作品。
    ユウスケの優しさ、母のおおらかさに、ほっこり。
    亡くなってなお、この世に魂を残す人たち。
    ばらばらに思えたエピソードが、一つになっていく。
    ユウ坊がこんなにも大きくなるなんて、感慨深い。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-0817.html

  • 独立してるみたいだけど、前作があるらしい。
    図書館にあるかさがしてみよう。

    タイムリープと、幽霊が見える少年の話し。

  • ささらのヨウスケが主人公。連作短編は好きなかたち。最後になぞが解き明かされるのも好きな形式。殺人のない推理小説とも。それぞれ、せつなくも良い話ばかり。

  • ごちゃごちゃしたーーー

全141件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

加納朋子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
辻村 深月
貫井 徳郎
宮部みゆき
恩田 陸
辻村 深月
辻村 深月
米澤 穂信
有川 浩
伊坂 幸太郎
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×