近所の犬

  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026315

作品紹介・あらすじ

直木賞受賞第一作! 『昭和の犬』の次は、『近所の犬』。

相鉄線沿線のおんぼろアパートでもっさり暮らしている「私」は、
近所の犬を見るのをたのしみにしている。
お金持ちのプライド犬モコ、姉のように優しかったシャア、昭和じゃないスピッツ拓郎、男好きのグレース、聡明で情緒豊かなラニ、とんま顔でたらし犬のロボ……

近所の犬にとって「私」は、飼い主でも家族でもない。ただの通りすがり。
ただの近所の人間だ。
それでも、それなのに、胸に去来するものは……?

ユウモラスな筆致を、軽やかにたのしんで読める一冊。
傑作書き下ろし犬ウォッチング小説。

感想・レビュー・書評

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  • 姫野カオルコ作品で初めて読んだ本。
    ああ、犬が飼いたい。せめて触りたい…!と終始思いながら読んだ。

    子供の頃庭で飼っていた雑種の中型犬を思い出す。
    賢くて従順で辛抱強い犬だった。
    今思えば、もっとかわいがってもっとかまってやればよかったなぁ。
    犬と一緒に思い出す、あのにおいあの毛のバシバシした感触、まだ若かった父と母。
    そういうものが一気に思い出される小説だ。

  • 昭和の犬に続き、読んでみた。
    私小説だと断りはあるけれど、エッセイじゃないのかと疑いつつ。

    この方の犬との接し方は大好き。私もこう考えるし、こうしたい。

    それとは別にこの方の意地悪感覚というか、程よい悪意みたいなものも私には理想的。
    つい、正しくいい子的に振る舞ってしまう自分を省みる。
    その感覚が自分嫌いから発していることをまっすぐに見つめ、腹に落として犬を愛する。
    私は姫野カオルコさんを忘れないし、好きな作家さんだと伝えたい。

  • いくつかの理由から犬猫が飼えない、その理由が私の思う条件と一致していたので安心して読むことができた。
    イラストが目を惹くリアルな可愛さで、そこからどんな性格の犬なのか想像するのが楽しかった。内容を読むに、よく特徴をとらえているように感じた。
    犬との話でありながら飼い主や関わりのある人や自分の話でもある。
    ラニと飼い主の話は、特に空気感が好き。やさしく大事にされてきたからこそ他者にやさしくできる、それは一理あるなぁと感じ入った。なんだか私には滋味深い話だった。

  • かつて飼っていたハスキー犬は、誇り高い犬だった。
    片目が黒く、片目が青。
    ぬいぐるみのように、ムックムクの足。
    ぴんと立った耳に、凛々しい眼差し。

    家族が大好きで、旅行から帰って来たら踊るように喜んだ。
    泣いている時には、そっと寄り添ってくれた。
    我慢強さは類を見ず、出産を静かに成し終えたと感動も冷めないのに、ガリガリになりながら、子ども達にエサを与える姿は神々しかった。

    病気になり、立てないくらい弱っているのに、決して家の中を汚さず、
    用を足すのは、必ず家の外だった。
    いよいよご飯を食べなくなった時、この子はもう受け入れているんだなと思った。
    その命が尽きる直前まで、もう立てないはずなのに、
    スッと凛々しく、力強く立ち、窓から外を見ていた姿が忘れられない。

  • 好きだなぁ、これ。

    シャアの話が切なくて、それ以前とガラリと印象が変わる。
    大人になってはじめて、失ってはいけないものだったとわかる、子どもの愛の脆さが胸に痛い。

    「身の丈なりの暮らしにもかなしみの降るとき、道歩けば彼らは必ず贈ってくれる。笑う力を。」

    寂しいような、でも幸せなような、主人公の日常が、とても美しい。

  • 昭和の犬が面白かったから、出てすぐ読んでみた。

    はじめに、でわかったのは、昭和の犬の主人公が姫野さんご自身を軸にして書いた自伝的小説ということ。
    そして、この近所の犬は姫野さんの私小説。より事実要素が多い、のだそうです。

    まず、そのことに驚いたわたしです。あの気を使う幼少期、変わったお父さんとお母さん、、、

    踏まえての犬見(姫野さんの造語・飼える環境にない為近所の犬を愛でる)の10章です。表現が大好き。面白くて面白くて。なのに、唐突に涙ぐんでしまう。そして泣き笑い。
    ラニとロボの人懐こさも良かったですが、シャア、グレースとミー、の章は特に好きです。幼少期の刻まれた記憶はいつまでも濃く蘇る。読み返し
    温かな気持ちにずーっと浸っていました。

    オール讀物、2014年3月臨時増刊号をなんとかしつた見たいです!

  • 「犬は好きだが、犬からはそんなに好かれない」人間という作者が、出会った犬たちについて書いた10編の私小説です。

    子どもの時期を除いて実際は飼っていない犬たちの話ですが、愛情があふれています。

  • 動物好きでも、住まいの環境で飼えないときは、ご近所のペットたちと仲良くなるべし!

    引っ越しの時に別れた猫の姉やとの話は、せつなかった。

    訓練中に微動なにしなかったロボ、格好よかった!

  • 我が家では犬を飼っているので、私自身犬は嫌いではないけれど、うちの子以外の犬は、実は苦手。
    姫野カオルコさんは、ホントに犬がすきなのですね。
    著者のフィルターを通して見る犬達はみんなとても可愛く、今回も、犬への愛情をひしひしと感じる本となっていました。

    要所に記される昭和的な表現や物を、検索しながら懐かしみながら読みました。
    著者の目の付け所が秀逸。
    楽しい読書でした。

  • 犬好きの、全てを代弁してくれる一冊である。

    大都市で犬猫を飼うための条件を自身で掲げ、
    その条件を満たさない作者は、「借景」ならぬ「借飼」に情熱を燃やす。
    「借飼」。つまり、ご近所のワンコを撫でさせてもらうのである。

    あ、可愛い、撫でたいと思った時に、声を掛けるべきタイミング。
    想定される、飼い主の反応。
    考えられる、犬の反応。
    なるほど!確かにわかる!
    「訴えかけるような瞳に弱い。」
    わかります!

    最近のことしか語られないが、作者の「借飼」歴は、かなり長いのでは。
    その証拠?は、時には妄想も辞さない作者が、
    その経験から考え出した、犬と戯れる際の勝負服である。
    ここまでくると、参りました、である。

    思わず、道行く犬と飼い主さんに声を掛けたくなる。
    「かわいいですね。何て言う名前ですか?」

    図書館スタッフ(学園前):れお

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著者プロフィール

作家

「2016年 『純喫茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

姫野カオルコの作品

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