- Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344027039
作品紹介・あらすじ
3月11日、宮城県沖を震源地とする巨大地震が発生し、東北地方は壊滅的な打撃を受けた。毎朝新聞社会部記者の大嶽圭介は志願し現地取材に向かう。阪神・淡路大震災の際の"失敗"を克服するため、どうしても被災地に行きたかったのだ。被災地に入った大嶽を待っていたのは、ベテラン記者もが言葉を失うほどの惨状と、取材中に被災し行方不明になった新人記者の松本真希子を捜索してほしいという特命だった。過酷な取材を敢行しながら松本を捜す大嶽は、津波で亡くなった地元で尊敬を集める僧侶の素性が、13年前に放火殺人で指名手配を受けている凶悪犯だと知る…。最大の挑戦にして、最高到達点。心を撃ち抜く衝撃の社会派ミステリ誕生。
感想・レビュー・書評
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初めて読む作家さん作品。どなたかのレビューで興味が湧いて読んだけど、なべて評価が低いわりに私には面白かった。駆け出し記者時代に阪神淡路大震災で痛恨の記事体験がずっとトラウマになっている 今は中堅となった大嶽が、東日本大震災に遭遇し、自ら特別取材班のキャップを志願する。自ら信じる原点に立ち取材に奔走する中、多くの人々から慕われていた僧侶も亡くなっていた。ところがくだんの僧侶の過去が大スクープに繋がるやも知れない事実を掴む。果たして大嶽は遂にトラウマを脱することが出来たのでしょうか?!
よく出来たミステリーだと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2歳児と図書館に行き、本棚から
適当に選んでもらうチャレンジ
しかし出勤途中に読むには少し疲れたな、、
震災から4年後に書かれた話。
あの震災を中心にして書かれた
フィクションかと思うと
なんだか、心がザワザワした。
次は幸せなお話を読みたい気分になった。笑 -
【感想】
新聞記者を主人公に、実際にあった東北大震災をテーマにした小説。
23歳の時にこの地震を大阪で体験した自分でさえ、この災害がもたらした絶望感は鮮烈に覚えている。
この地震は死亡者数や津波などの被害状況もさることながら、やはり原発事故が1番印象に残っている。
この物語では、如何にして原発事故が発生したのか、物理的なシステムについても簡単ではあるが触れている。
ただ、この小説のテーマは、現地の被害状況や過去の事件、そしてメディアそのもののドス黒さや日本国民全般の閉塞感にあった気がする。
主人公の記者「大嶽」も中々ダーティーなキャラクターだったが、他の登場人物のクセが強すぎて読んでてまぁまぁ憂鬱になった。
心がスカっとせず、ドロドロとしたものを拭い切れないこの読後感・・・あんまり好きではない。
また、個人的に新人記者の松本のキャラクターがウザすぎて生理的に受け付けなかった。
偉そうな事ばっかり口にする割に、空回りしてばかりで、スペックが伴っていない。
最終的に成長するのかと思ったが、そういった伏線の回収やリカバリーが一切ないどころか、最後の最後まで足を引っ張って物語は終結した。
このキャラクターは何だったのか。
ただ、自分も上司や先輩からすると、こうゆう一面があるんだろうなーとやや苦笑してしまった。笑
他人のフリみて我がフリ直そう。
【あらすじ】
3月11日、宮城県沖を震源地とする巨大地震が発生し、東北地方は壊滅的な打撃を受けた。
毎朝新聞社会部記者の大嶽圭介は志願し現地取材に向かう。
阪神・淡路大震災の際の〝失敗〟を克服するため、どうしても被災地に行きたかったのだ。
被災地に入った大嶽を待っていたのは、ベテラン記者もが言葉を失うほどの惨状と、取材中に被災し行方不明になった新人記者の松本真理子を捜索してほしいという特命だった。
過酷な取材を敢行しながら松本を捜す大嶽は、津波で亡くなった地元で尊敬を集める僧侶の素性が、13年前に放火殺人で指名手配を受けている凶悪犯だと知る……。
【内容まとめ】
1.地震発生直後に、原子炉は自動停止したと発表された東京電力福島第一原発は、午後三時四二分、交流電源すべてがダウンする「全交流電源喪失(SBO)」に陥った。
そのため、原子炉内の安全を確保する「緊急炉心冷却システム(ECCS)」が作動しなくなった。
SBOというのは、原発ではあってはならない異常事態で、過去にも例を見ない。
2.SBOが長く続けば、最終的には原子炉圧力容器内の核燃料が溶融して冷却水の中に落下し、水蒸気爆発を起こす。
鋼鉄製の圧力容器や格納容器を吹き飛ばすほどの凄まじい破壊力で、同時に放射性物質を半径200キロに撒き散らす。
3.島国であるがゆえに民族的にも文化的にも、均一性を尊んできたために、その不文律を乱す者を排除しようとするシステムが厳然と存在する。
結果、人権は無視され、弱者を法的社会的に保護するという意識が根付かない。
【引用】
p42
地震発生直後に、原子炉は自動停止したと発表された東京電力福島第一原発は、午後三時四二分、2号機の交流電源すべてがダウンする「全交流電源喪失(SBO)」に陥った。
そのため、原子炉内の安全を確保する「緊急炉心冷却システム(ECCS)」が作動しなくなった。
SBOというのは、原発ではあってはならない異常事態で、過去にも例を見ない。
ただ外部から電源を確保すればその事態は収束するし、ともかく何らかの方法で冷却水を格納容器に入れて原子炉を冷やす事さえできれば、少なくとも大惨事は回避されるらしい。
SBOが長く続けば、最終的には原子炉圧力容器内の核燃料が溶融して冷却水の中に落下し、水蒸気爆発を起こす。
鋼鉄製の圧力容器や格納容器を吹き飛ばすほどの凄まじい破壊力で、同時に放射性物質を半径200キロに撒き散らす。
p230
自身の価値観や感性に矜持を持つのは悪いことではないが、記者に最も要求される資質は柔軟性だ。
敵愾心剥き出しの相手にでも話を聞かなければならない時は、相手の懐に飛び込む柔軟力が突破口になる。
松本にはその力が全くないようだ。
目上に対する礼儀もなっていない。
年上から学ぶべき点は多い。意に染まなくてもそれを呑み込んで、とにかく相手を取り込む努力ができない者は、何をやっても続かない。
我々は評論家でも哲学者でも運動家でもない。自分の目で現場を見、当事者から話を聞いて読者に伝えるために存在する。
p330
布施
「日本は歪な国です。島国であるがゆえに民族的にも文化的にも、均一性を尊んできたために、その不文律を乱す者を排除しようとするシステムが厳然と存在します。
その結果、人権は無視され、弱者を法的社会的に保護するという意識が根付かないんです。」
p351
「お前の愛する社主のお祖父様が社長に命じて、輪転機を止め、記事を差し替えさせた。
お前の命の恩人の名誉を守るためにボツにしたんだよ。
ふざけるな!新聞をなんだと思ってる!」
「社会部長がご注進したんだ。社主に媚びて偉くなるためだ。
まっ、綺麗事を並べても、所詮新聞社も爛れた企業なんだよ。」 -
震災小説があるとすれば、それを意識して
真山仁は、その極限的な被害の中での
人間の行動を 明らかにしようとする。
「悲しみ」「失敗」などを抱えながら、立ち向かう。
それは、前に進むためなのだ。
大嶽という記者が、阪神大震災の経験。
スクープの後の悲劇をトラウマのように背負う。
そして、東日本大震災の取材キャップとして
宮城県三陸南に行く。その風景に 呆然とする。
現実を見る。事実を言葉にする。
言葉を失っても、言葉を紡ぎ出す。
囲みある記事が、シンプルで、手際よさを感じる。
新聞社の社主の孫が、あまりにも、自由奔放で。
この女は、性格が悪く嫌味な女になるだろうと想像できた。
それに対照のように、描かれている 「和」が、爽やかだった。
元警察の殺人犯が、自殺を思いとどまらせる和尚になっていた。
それを、暴こうとする大嶽。
社主の介入で、ボツにされたことが、よかったね。
偶然と必然の中で、時間を争うことでのミステーク。
真山仁の震災小説は、もっと紡がれるかもしれない。
楽しみである。 -
久々に唸った.
冒頭からいきなり映像化されたように「世界」に引き込まれるのはいつものこと.でも,結局「ハゲタカ」を超える,全編緊迫感と躍動感に満ち溢れた作品には出逢えていなかった.
それが…全く別の緊張感と臨場感だったけど,これはグッときた.
阪神から東日本大震災,そして,かつての殺人事件…扱う題材が多過ぎてどうなっちゃうんだろう⁈と思いながらも,きちんと収束して行き,そして何より,最後の最後まで,登場人物を誰も「使い捨てにしない」丁寧な描き方に納得.これぞ!と思えた.
それにしても…最後の口惜しさのなんとニクいことか!この先が読みたくなってしまう. -
記者とは、伝えることの意義とは、などテーマとしては考えさせられることがあった。
でも、最後のミステリーの展開が中途半端。意外性もないし、それぞれの想いの描写が少なくてあっさりと終わった感じ。
新人記者も、徐々に成長していく描写があるのかと思ったら最後まで変わらず。
投げかけた色々なテーマが回収されずに中途半端で終わっている気がして、読了感があまりありませんでした。 -
途中まで止まらずに読んだのに、最後が…。
終わり方、全然しっくり来ず、残念。
こんな事真山仁作品で初めてです。