午後二時の証言者たち

著者 :
  • 幻冬舎
3.29
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本棚登録 : 292
感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344028791

作品紹介・あらすじ

誰が少女を殺したのか。数行の三面記事に隠された証言者たちの身勝手な事情。他人事、ではもう済まされない。平凡な日常が壊れる瞬間を描いた慟哭のミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • ★3.5

    三月五日、午後二時頃所沢市旭ケ丘一丁目の横断歩道で近くに住む八歳の女児が、
    走ってきた乗用車に撥ねられ、病院に搬送されたがまもなく死亡した。
    腹部強打による出血性急性循環不全と見られる。
    乗用車を運転していた二十六歳の男性に詳しい事情聞いている…。

    始まりは11月26日、外科医の室井敬三が愛人の家から帰る途中で刺殺された。
    そして12月4日、ホテルの一室でスーパーエイコーのどら息子が死亡していた。
    二人とも死因は動脈切断による出血死。
    二人の共通点は…ある少女が死亡した交通事故だった。
    交通事故により亡くなった少女。
    その事故を取り巻く関係者たちの様々な視点で語られる。
    救急車の搬送を拒否し、愛人と出掛けた医師の室井。
    室井の愛人の真知子。
    救急隊員の必死の要請に嘘をついた看護師の郁子。
    車を運転していた永光。
    唯一の目撃者、寺島初美。

    新聞の小さな記事でしか扱われない事故の陰にも様々な人間模様があることを痛感しました。
    関係者たちの行動や心情がとっても丁寧に描かれていて、
    皆、それぞれが自身の保身やエゴや嘘…。
    身勝手過ぎる人達にとっても嫌な気持ちになった。
    最初から犯人は明らかで、犯行の動機も明らか。
    大きな盛り上がりも、驚きの真相もないので、
    二時間ドラマを観ている様で、それ程引き込まれる事なく淡々と読みました。
    ラストの母親の回想シーンでは、母親の生い立ちを思うとこうなるのか…。
    執着・異常とも感じられるた圧倒的な愛情・母性。
    事故で突然愛する娘を喪った母親の気持ちは想像できるなんて簡単には言えませんが、
    それでも…この事件は余りにも哀しい…。
    桜子ちゃんの生前の様子が切なかった…(*T^T)
    あの人とあの人が同じ人だったとは…と少しの驚きはありました。

  • 母娘の楽しそうな毎日の描写が良かった。
    溢れんばかりの愛しい気持ち。
    序章〜中盤が長く、謎めくミステリー感を盛り上げていきますが、最後が一気に流れ過ぎて少し物足りない気がしました。

  • 子供が横断歩道を渡っていて信号無視の車に轢き殺される事件が起きる。
    この小説はその事件の関係者-子供が搬送された病院の医師、車の運転手、刑事、目撃者、被害者の母親それぞれのパートに分かれて描かれている。
    ・・・ものの、一人称で書かれているという訳でなく、被害者の母親以外はその周囲の人間も含めた客観的な目線で書かれている。

    最初の医師のパートでは彼が不倫をしていて、その会話の中で搬送された子供を受け入れ拒否した、という事が分かり、その章の結末を書くと彼は誰かに腹部を刺される。
    そして、次のパートの子供を轢いた男の話では彼が信号無視をしていた事、女好きな事などが書かれていて、彼も誰かに刺される。

    ・・・という風に、事故に関係ある人間は誠意のない対応をした事が順々に分かる。
    ・・・とすると犯人は当然・・・となる。

    こういう話は犯人が明らかでも書きようによっては面白くなるタイプの話だと思う。
    でも、この小説は読んでいてすぐに嫌になってしまった。
    ひと言で言って、文章に魅力がない。
    読んでいてワクワクする事がないし、先が読みたいと思わない。
    こういう話って、どれだけ登場人物に感情移入できるかが面白い、面白くないを握る鍵になると思うけど、全くどの登場人物の心情にも入りこめなかった。
    個人的には文章、内容的に物足りなく、とても退屈で読んでいて苦痛になってきたので途中からななめ読みした。
    だから偉そうに言えないけど、読み終えて何も伝わってこなかった。

  • 日経のブックレビューに★×4で乗っていたことから、図書館で予約した。天野節子さんの小説を初めてである。読了まではいったものの私には合わなかった。
    ストーリーにも人物描写や会話にも、どうも現実とかい離した感じがあり、深くはのめりこめなかった。また、文体も私には合わない。このような一節など。
    「食堂のカレーライスは旨い。渡辺刑事がさも旨そうによく噛み、ごくりと飲み込むと言った。」
    こんな冗長かつひねりのない表現に会うたびに、なんだかなぁ、と思って冷めていってしまう。氏の別作品を手に取ることはまずないであろう。
    とはいえ、エピローグでは一人の親としてそこそこ感激はしてしまった。

  • ひとりの少女の死にまつわり、章ごとに視点が変わり展開していくお話。
    淡々とした描写が続いた後の最終章は効いた。読後はすっきりとはいきませんが。

  • 体裁はミステリーではあるが、子供を想う親の気持ちや人の正義感について深く考えさせる内容になっている。子供を失った親がその背景に存在した不正義で身勝手な行動を知ったときの気持ちは想像できないほどの怒りに満ちているだろう。そんなことを想像するだけでも自分を律し正義を保つことができるように思う。

  • 交通事故で一人娘を失った母親のお話し。子供を失うなんてこれ以上に辛いことはないだろうと想像できるし、感情移入もできるんだけど。主人公には娘が自分のすべてであったのだろうと理解するしかないのかな。犯人もすぐ想像つくしミステリいうより、一人一人の人間描写に長けていた作品です。作品自体は章ごとに視点が変わり文章も読みやす一気読みできました。最後は、う~ん、やっぱそれしか選ぶ道はなかったんだろうな・・・といった感じでした。

  • 関連性のなさそうな人達がつながっていく

  • 途中までは事実を淡々と述べている流れで登場人物が多いながらも読みやすかった。
    結論としはそこまで驚く犯人ではなかった印象。
    現実に起こることを想像すると犯人に同情してしまう。

  • いまひとつ…

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著者プロフィール

一九四六年千葉県生まれ。初めて執筆した小説『氷の華』は二〇〇六年自費出版からスタートした後、文庫化され三十五万部を超えるベストセラーとなる。ドラマ化もされ、六十歳の大型新人として注目を浴びた。その他の著書に、『目線』『烙印』『彷徨い人』『午後二時の証言者たち』がある。

「2022年 『容疑者は何も知らない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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