お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)
- 幻冬舎 (2017年11月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344032156
作品紹介・あらすじ
「資本主義」を革命的に書き換える「お金2.0」とは何か。2.0のサービスは、概念そのものを作り出そうとするものが多いので、既存の金融知識が豊富な人ほど理解に苦しみます。その典型がビットコインです。あまりにも既存社会の常識とは違うので「今の経済」のメインストリームにいる人たちにとっては懐疑や不安の対象になりやすいといった特徴もあります。そして、それこそが全く新しいパラダイムであることの証でもあります。本書ではまずお金や経済の仕組みから、テクノロジーの進化によって生まれた「新しい経済」のカタチ、最後に私たちの生活がいかに変わるか、の順番に解体していきます。
感想・レビュー・書評
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資本主義の延長線上にあるものの一つ『価値主義』を説く本。
否定的な考えを挟まずに読むことをおススメする。つまり、楽しい読書したいなら著者の想像する世界に没頭すれば良い。できなければ辛い読書となる(笑)。
後半にかけて話が飛躍してゆく。非凡な想像力に脱帽した。
本当にそういう時代になるのでは?なってきているのでは?と納得してしまう内容である。著者の想像には、著者なりの裏付けがあり、自らの事業を通じて、それを実現させることも自分たちの仕事ではないか、と書いている。ベーシックインカムが可能になる時代が来るのだろうか。既存の考え方では到底受け入れられないし理解ができないが、新たな時代とは、こういった思想を持ち、行動を起こす人たちが切り拓いて来たんだろう。
お金とはツールの一つに過ぎない。これからは無数の経済圏が作られ、国家や企業という枠組みの影響は無くなってゆくことになる。今現在では、それが仮想通貨であり、SNSなどで見られる『いいね』である。そこには国境も無く、誰かへの忖度も無く、ただ個人の嗜好によって選択された価値がある。
そういった新たな価値は、既存の貨幣以上の力を持つ可能性があり、今の資本主義世界をひっくり返す未来が待っているのかもしれない。
2021年時点。
著者の経営する㈱メタップスについて財務諸表を見たが、決して順調ではない。
ただし、本書でも書かれている通り、現在のIT企業の財務諸表には、見えない価値が反映されていない為、容易には判断できない。そういう時代なのだ。
とても若く、おもしろい思想を持っている方だ。まずは今の資本主義を生き延びてもらいたい。チャンスはあると思う。
楽しい読書だった。読了。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
先週(2017.12)の一週間で、ビットコインが150-250万円の間で乱高下しました、先ほど確認したら170万円程度でした(レビュー書き終わった12.17では217万円)が、そのレベルでも数か月前の数倍以上です。私も少し持っていたので、上がる度に喜んでいたのですが、ふと、これは通貨の信用が失われ始めているのでは、と思いました。
この愁いは外れてくれることを祈るばかりですが、そのような私にとって「今まさに、経済、のあり方が変わろうとしている」という、この本の1ページ目に書かれていた部分が最も強烈なメッセージでした。
2017年という年は、私が初めてビットコインを持ち、さらにそれを送金手段として使った、記念すべき年となりました。私の頭の中で何かが変わった、若しくは、追加された気分です。このような味わいは、1999年に初めてアマゾンで本を購入して、宅急便で本当に送られて来たとき、これがコンピュータを使ってモノを買うことなのだ、と実感して以来です。
まだビットコインを持っている人は少ないですが、相手が了解すれば、法定通貨ではなくても、お金のやりとり・価値のやりとり、ができる手段として、仮想通貨という手段がある、という認識ができたのは、私にとって大きな一歩だったと思います。そのような私にとって、この本は衝撃的でした。
以下は気になったポイントです。
・現実は3つの異なるベクトルが併存し相互に影響を及ぼしている、それらが未来の方向性を決めている、それは、お金・感情・テクノロジー、引っ張る力は、お金が一番強く、感情、テクノロジーの順。ただ必ず3つのベクトルが揃っていないと現実ではうまく機能しない(p22、26)
・Fintech 2.0は、近代に作られた金融の枠組み自体を無視して、全くのゼロベースから再構築するタイプ。典型がビットコイン(p29)
・以前は各銀行が、それぞれの預かり証書である銀行券を発行して、それをバラバラに流通させていた、今の仮想通貨における、アルトコインのような状況(p35)
・現代の欲求は、本能的欲求・金銭欲求・承認欲求(社会で存在を認められたい)の3つに分けられる(p45)
・手軽にネットでサービスを作って世界中の人に使ってもらえるようになった時代である今の経済は、読み解く対象から、創り上げていく対象に変化しつつある(p49)
・よくできた企業やサービスは個人に依存していない、仕組みで動く。フェイスブックの成功は、人が人を呼ぶ仕組みがうまくつくられているから。上手くいく経済システムとは、1)インセンティブ(儲けたい、モテたい、認められたい)、2)リアルタイム、3)不確実性(運と実力の要素がバランス)、4)ヒエラルキー、5)コミュニケーション(p51)
・更に2つ追加するとすれば、1)寿命があることを考慮しておく、2)共同幻想(参加者が共同の幻想=会社でいう、ビジョン・経営理念)が寿命を長くする(p58、69)
・ドイツ経済学者のシルビオ・ゲゼルは、自然界の中のあらゆるものが時間の経過と共に価値が減っていくのに、通貨のみは減らないどころか金利によって増えていくことを指摘、それは欠陥だと主張した。それを解決するアイデアとして、価値が時間と共に減る自由貨幣(スタンプ貨幣)を考え出した、ピケティが資産所有に対して税金をかけるべきといった資産税に近い概念(p62)
・ビットコインの特徴として、この経済システムに参加する人々が、どういった利益が得られるか、という報酬が明確に設計されている点(p63)
・いいね、はユーザー間でやりとりされる「通貨」のような役割を担っている、拡散によって増えていくフォローワーは、貯金のように貯まっていく「資産」に近い(p72)
・フェイスブックが大きくユーザーを増やしたキラーアプリは、写真であった。タイムラインに写真を投稿したときのユーザーの反応はテキストの場合とは全く異なっていた(p73)
・快感は他人との比較によって高まる、ヒトの脳は周囲と自分を比較する物差しがあったほうが、より刺激や快楽を感じやすい性質を持っている(p86)
・脳は疲れない器官とされているが、脳の司令によって動く身体や、その環境にさらされ続ける精神は間違いなく消耗する。脳は快楽物質の分泌によって喜んで次の行動を指示するが、身体や心は休息が必要(p91)
・自然が経済に似ている、のではなく、経済が自然に似ていたからこそ、資本主義がここまで広く普及した、ということ歴史から考えてもそうである。経済のベクトルは、自然にもともと内在していた力が形を変えて表に出てきたもので、自然は経済の大先輩である(p93)
・絶えずエネルギーが流れるような環境にあり、相互作用を持つ動的なネットワークは、代謝をしながら自動的に秩序を形成して、情報を内部に記憶することでその秩序をより強固なものにする(p96)
・分散化の流れの一部として現れた新しい経済システムとは、共有経済(UBER、Airbnb)、トークンエコノミー(仮想通貨やブロックチェーン)、評価経済(Yutuber、インフルエンサー、ファンが作る)、これら3つは分散化が引き起こした大きな流れの一部である(p115)
・日本ではメルカリが急成長して、日本初のユニコーンとなった、個人が余ったリソースを直接的に共有し合うことでコストを削減するサービス(p117)
・シェアリングエコノミーとは、ネットワーク化した個人を束ねて1つの経済システムを作り、人間には煩雑な支払い、中立性を求められるレビューのような最低限の機能を代理人として提供する、近代の「代理人型社会」と、これからの「ネットワーク型社会」の良い処を混ぜたハイブリッド型モデルといえる(p118)
・中国には、ユーザーは面白いと思ったら、有料のアイテムを購入してその人に送ることができる「投げ銭」機能がある(p122)
・トークンエコノミーの例としては、メッセンジャーアプリ「Kik」が発行する「Kin」が期待される。Kikはアプリ内で活用できる独自の仮想通貨を発行して、コミュニケーションを起点に独自の経済圏を作ることを計画している、ユーザーの活性化に貢献するようなコンテンツをアップしてくれたクリエーターには、Kinを報酬として払う、広告が表示されるとKinが貰える(p125)
・中国のマイナーが自分たちの都合の良いように改変しようとしたが、それに反対する人たちが別の仕組みを提唱して、ビットコインキャッシュに分裂した(p133)
・ディープランニングとは、膨大なデータを機械に学習させることで、特徴量の抽出を自動で行うことが可能になる。猫を認識させるのに、猫の概念を人間が教える必要がなくなる(p135)
・Numeraiは、データサイエンティストが機械学習などを用いて投資モデルを作って、Numeraiにアップして実際に収益を挙げた場合には、発行するトークンが貰える(p138)
・知識は完全にコモディティ化して「物知り」であることに価値はなくなった、これらの変化は全て、グーテンベルクが活版印刷技術を発明して「知識の民主化」をしたことで引き起こされた、これと同様に「お金」もコモディティ化して、今ほど貴重なものとは考えられなくなると予想される(p144)
・今は、消費経済に対する資産経済の割合はどんどん大きくなって、経済はより不安定、縮小すらし始めている(p152)
・資金調達が容易であるので、相対的にお金の価値が下がり続けている、逆に増やすことが難しい、信頼・時間・個性のようなお金では買えないものの価値が相対的に上がってきている、今起きているのは、お金が価値を媒介する唯一の手段であったという「独占」が終わりつつある。(p153、155)
・ネットの普及で、自分の価値をどんな方法で保存しておくか選べるようになってきた、1億円の貯金と、100万人のフォロワーがいるのとどちらが良いかは人によって異なる(p156)
・ものを扱わないネット企業で、財務諸表上の価値として認識されないもののとして、人材および「データ」がある(p159)
・グーグルは、情報(検索エンジン、Yutubeで得られる情報)を、広告システムで好きな時に売り上げ利益といった資本に転換する手段を持っている。これは資産として計上できない(p161)
・これから資本主義から「価値主義」となる、価値を最大化しておくことが重要である、価値とは、経済的には人間の欲望を満たす実世界での実用性(使用価値、利用価値)を指す場合や、倫理的・精神的な観点から、真・善・美・愛など人間社会の存続にプラスになるような概念を指すこともある(p164)
・お金は価値を資本主義経済の中で使える形に変換したものに過ぎない、価値を媒介する1つの選択肢に過ぎない(p164)
・価値の3分類とは、1)有用性、2)内面的、3)社会的価値がある、資本主義は「有用性」のみを価値をして認識して、他の2つの価値を無視してきた点にある、価値主義とは、資本主義が認識できなかった領域もテクノロジーの力を使ってカバーする、資本主義の発展系と考えた方がよい(p169)
・いくつかの会社で導入されている仕組みに、社内通貨がある、社員が毎月一定の社内通貨を保有していて、それを同僚に感謝の印として付与できる仕組み(p171)
・数十年後には、営利と非営利の区別はなくなっていて、活動は全て「価値」という観点から捉えられるようになっているだろう(p182)
・ベーシックインカムを導入する国が増えるだろう、これは、生活するための必要最低限の生活コストを国民全員に支給する仕組み、もしくは巨大企業が公共サービスに近いものをほぼ無償で提供して生活コストを下げるということも考えられる(p185)
・ベーシックインカムは、お金のコモディティ化を急速に推し進める一手になると思われる(p188)
・沖縄が琉球コインを発行して地域経済を盛り上げていくというニュースがあった、このような流れは、地方公共団体にとどまらず、銀行・民間企業・非営利組織・商店街・学校・ファンクラブ・個人にまで及ぶ。誰でも容易に通貨を発行して独自の経済システムを作れるようなるだろう(p190)
・分散化が進むと、自分の資産をビットコイン、日本円、楽天ポイントに分けて保有して、シェアリングエコノミーのサービス上で自分で働いて得た報酬をトークンとして受け取り、個人間のネットワーク上で誰かから服を買ってそのトークンで払っているかもしれない(p191)
・お金と時間の2つの特徴を混ぜた「時間経済」を作ってみることにした、実験しているのは、1)経済を選べる時代を作る、2)個人が主役・時間を通貨とする経済ができるかどうか(p195)
・金融資本は時間が経つほど価値が増大していくという性質がある、時間は経過するほど保有量は自然と減っていくので、自分が優位なうちに(若いうち)に行動しようという、インセンティブが強くなる、保存できないし使わなければ自然消滅するので、これを使ってなにかしようと考える人が増えるはず(p199、200)
・トークンネイティブとは、生まれた瞬間からビットコイン・ブロックチェーンがあるので、今の私達とは全く違った視点で、お金や経済のことをとらえていて、私達が思いつきもしないサービスが生まれるはず、デジタルネイティブ世代は、トークンネイティブ世代が作るサービスが理解できなくなり、規制が必要だと思うかもしれない(p206)
・人間は、自分が生まれた時にすでに存在したテクノロジーを、自然な世界の一部と感じる。15-35歳に発明されたテクノロジーを新しくエキサイティングなものと感じ、35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる、日本の常識は、日本の人口分布でボリュームゾーンである45歳前後の概念(p206、210)
・価値主義の世界では、好きなことに熱中している人ほどうまくいきやすい、世の中に変わっている、それを探す方法として、あなたが1日中やっていても苦痛ではないことを探すのがいい(p218、226)
・価値の具体例として、1)スキル経験のゆな実用性としての価値、2)共感・好意のような内面的な価値、3)信頼・人脈のような繋がりとしての社会的な価値(p229)
・エストニアが独自の仮想通貨「エストコイン」を発行して、仮想通貨ベースの資金調達法ICOを実施する可能性を示唆した(p240)
・BMI(ブレインマシン・インターフェース)は、脳とコンピュータを直接繋ぎ、脳そのものを制御したり、脳を使ってコンピュータを動かしたりすることを可能にする技術(p247)
・視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚などは、脳が作り出している感覚なので、ここを直接制御できれば、まるで本物が存在しているかのように五感で感じられるようになる。(p247)
・VR、AR、BMIが発達してくると、人間は「現実」そのものを選ぶことができる、自分が最も居心地の良い世界を自分にとっての「現実」と選択するようになる、今の私達からしたら到底受けれがたい環境であるが、それは私達がそれが無かった世界を知っているから、生まれた瞬間からその技術が存在している場合は、便利なツールとして受け入れることができる(p248)
・一番居心地が良い仮想空間で1日のうち最も長い時間を費やすことになるだろう、そこを「現実」と考えるようになるだろう(p250)
・テクノロジーには興味深い性質がある、1)人間の能力を拡張させる、蒸気機関やエンジンは人間の身体能力の拡張、コンピュータ・AI・VRは、人間の精神の拡張、2)普及すると人間そのものを教育し始める、お金に縛られたり、コンピュータに判断をゆだねる、3)身体の近い処から、空間的に遠い処に拡張していく(p252)
・お金や経済を扱うためには、お金と感情を切り離して1つの「道具」として見つめなおすことが近道(p257)
2017年12月17日作成 -
本書の発行年度は2017年であるが、今でも十分進歩的であると思える部分が大量にあり、改めて佐藤氏の先見性に頭が下がる。お金に対する考え方が今後も変化してゆき、相対的価値が薄れてゆくと言っている部分は興味深い。貨幣経済一辺倒から評価経済という考え方が加わり、貨幣のあり方もビットコインをはじめとするトークンがその価値を認められる時代がやってきた。将来肉体労働はロボットに任せ、知的労働もAIに取って代わられるだろう。失業者にはベーシックインカムが支給され最低限の生活は保障される。働かなくてもお金が手に入るようになると、金銭獲得に対する意欲が薄れ、お金の相対的価値が薄れてゆくと言うロジックだ。資本主義を標榜する我々の国で、夢のようなベーシックインカムが実現する日が本当に来るのだろうか?と言う疑問は残るが。
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タイトルは「お金」が大々的にアピールされているので、設けるための方法などが満載かと思いましたが、実際は良い意味で全然違いました。
これからの経済における「価値」についての話がとてもためになりました。
これからの経済はこれまでと全く別のものになる。その未来予想図が記されています。
未来の経済の話であるため、難易度は高く感じました。
実際、わたしも全ては理解できませんでしたが、一部しか理解できてなくても買う価値のある1冊だと思いました。 -
この本は、「新しい経済」「新しいお金の価値」について書かれています。
これからは、現在のように「お金がすべて」ではなく、「情報や信頼」の価値がより重要になってくるようです。
参考になる本でした。
ぜひぜひ読んでみてください -
本書を読んでいると、「サピエンス全史」の復習をしているような感覚になった。既存のお金の価値観から一歩引いて、新しい視点で見つめる力が問われる。頭が固いほど、受け入れるのが難しい。何事にも柔軟性が重要である。
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これからの経済の変化を著者の考察で描いた本。お金の本質を捉え、人の感情と、社会の変化と技術革新により、これからどんな経済社会が展開されていくのかを描いている。私達が求める価値の変化に伴い、経済活動も技術の進歩とともに変化していく。これからどんな世界が広がっていくのかを説得感ある言葉で語るので、一気に読んでしまった。佐藤航陽さんの他の書籍も読んでみよう。
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お金の話かと思ったら、いい意味で裏切られた。
この著者の本は他にも読んだことがあるのですが、
言っていることが深いのでうまく消化するのに時間がかかる。。
ソフトカバーの気楽な本だと油断していたら、全然太刀打ちできない。
本の内容が完全に理解できたかどうかは怪しいけれど、
著者の「市場経済から価値経済へ移行していくのでは?」という仮説はとても興味深く読ませて頂きました。
自分も資本主義に少し疑問を感じていた時期があって、
「次の考え方(主義)って何だろう?」と悩んでいたので、
一つの解決策として十分あり得る主義だなと思いながら読んでいました。
お金というより、
「経済や世の中がテクノロジーを通じて、どう変わっていくのか?(変わっていく可能性があるのか?)」
について興味のある人が読むとドンピシャかと思います。
著者は物事の抽象化と(一見無関係に見える事象同士を)繋げる力が飛び抜けていて、
一つ一つの事象やファクトはどこにでもある情報かもしれませんが、
それらを消化して料理するのがとてもお上手。
この本を元にして、元ネタの概念について深く学びたいという気にさせてくれます。 -
【感想】
単純に、この「佐藤航陽」という人は凄まじく頭がいいんだなーと思った。
陳腐な感想だけれども。笑
人が「当たり前」だと思っているこの世の中に、鋭くメスを入れている。
今の凝り固まった価値観は、あくまでも一過性のものに過ぎず、時代の到来によって簡単に塗り替えられるものなのかもしれない。
これから台頭するであろう「ミレニアル世代」達にとって、大きく変わるのかもと読んでいて思った。
ただ、果たしてそうなんだろうか?
確かに近年のSNSでは「共感」などの価値観が高まってきているが、果たしてそれでメシが食えるのだろうか?
凝り固まった個人的な意見だが、「価値の対象」が変わるだけで、それによって得られる利益はやはりお金なんだろう。
それが現金なのか仮想通貨なのかは分からないにしても。
変わり行くかどうかも分からない不確実で曖昧なこの世界を生きる為には、アインシュタインの言葉がとても響く。
「好奇心」と「想像力」を絶やさない
このようにして、これからも生きて行こうと思う今日この頃。
【内容まとめ】
1.経済の在り方が変わる。資本主義の欠点を補った考え方として、価値を軸として回る社会「価値主義」
2.お金の役割が、「保存、尺度、交換を効率的にやり取りする」から「それ自体を増やす」という目的に変わっていった。
→外国通貨や仮想通貨などの台頭によって、価値を保存・交換・測定する手段は私たちがいつも使っているお金である必要はなくなってくる。
3.これからの世代である「ミレニアル世代」は欠けているものがないので、何をモチベーションに頑張ったら良いかが分からない。
→GoogleやFacebookのような企業が多くの優秀な人を惹きつけられるのは、最高レベルの給与や福利厚生やブランドだけでなく、そこで働く人たちに人生の意義や目的を提供している
4.本来、真剣に考えなければならない「議論」とは何か?
→問題の構造を分析して解決することが大切!
【引用】
今まさに「経済」のあり方が変わろうとしています。
仮想通貨市場の時価総額はいつのまにか20兆円を超え、日本の大企業もどんどん副業を解禁しています。
SNS上で強い影響力を持つインフルエンサーの登場と、そこからの評価経済の議論など、変化は加速しています。
どのように変わっていくのか?
どのような方向に向かっていくのか?
この21世紀に登場した「新しい経済」とはどんな経済なのか??
「新しい経済の歩き方」を本書では紹介しています。
資本主義の欠点を補った考え方として、価値を軸として回る社会「価値主義」という枠組み。
p11
この本の目的は、
「お金や経済とは何なのか?」
その正体を多くの方に理解してほしい、そして理解した上で使いこなし、目の前のお金の問題を解決してほしい。
【第1章】お金の正体
p22
3つの異なるベクトル「お金」「感情」「テクノロジー」が相互に影響を及ぼし、未来の方向性も決めている。
p27
竹中平蔵「世の中は連立方程式のようなものだ。」
1つの数字をいじると全体が影響を受け、複数の式が連動して1つの答えが導かれる。
p27
Fintech(フィンテック)
ITなどの新たなテクノロジーの進化によって金融の世界が破壊的に変化するトレンドを指しています。
financeとtechnologyを組み合わせた造語。
p30
・お金とは何か?
お金ができた理由は、価値という漠然としたものをうまくやり取りするためであり、お金には価値の保存、尺度、交換の役割がある。
証券化などのスキームによって、価値を効率的にやり取りするための手段として生まれたお金は、やがてそれ自体を増やす事が目的に変わっていった。
p83
・脳は飽きやすい 変化と不確実性
脳は一言で言えば非常に「退屈しやすい」「飽きやすい」性格を持っている。
反対に、脳は予測が難しいリスクのある不確実な環境で得た報酬により多くの快楽を感じやすい。
自分の選択や行動によって結果が変わってくる場合には刺激や快感は更に高まる。
なぜ、脳は変化の激しくリスクの高い状況でより多くの刺激と快楽を感じるようにできているのか?
おそらく、生物が自然の中で生き残る上で重要な機能。
【第2章】テクノロジーが変えるお金のカタチ
・テクノロジーの変化を見る時は、「点」ではやく「線」で捉える事が大事
テクノロジーの変化を線で捉えるとは、現在の社会システムがどんな課題を解決するために作られたモノなのかの「原理」を正しく理解し、最新のテクノロジーはそこにどのような変化を起こすのかを1つの現象として理解する事。
【第3章】価値主義とは何か
p155
お金が価値を媒介する唯一の手段であったという「独占」が終わりつつあるということ。
外国通貨や仮想通貨などの台頭によって、価値を保存・交換・測定する手段は私たちがいつも使っているお金である必要はなくなってくる。
【第4章】お金から解放される生き方
p216
ミレニアル世代以前は足りないものがあって、それを埋めるために必死に頑張るという明確な方向性を持っていました。
しかし、その基盤を受け継いだ世代は満たされてしまっているので、何に向かって頑張れば良いのかが分からなくなっている。
そしてその不完全燃焼のような感覚が多くの方を不幸にしているという事実。
ミレニアル世代は欠けているものがないので何をモチベーションに頑張ったら良いかが分からない。
欠けているものはないけれど、人の手によって人工的に「意義」や「目的」を創り出し、それを「価値」にすること。
GoogleやFacebookのような企業が多くの優秀な人を惹きつけられるのは、最高レベルの給与や福利厚生やブランドだけでなく、そこで働く人たちに人生の意義や目的を提供していることが大きな要因だと私は思っています。
p220~
・資本ではなく、価値に着目する
人間の内面的な価値に関しては、現在の資本主義の枠組みでは上の世代が認識しにくく、大きなチャンスが存在している。
内面的な価値
→共感、熱狂、信頼、好意、感謝
内面的な価値が経済を動かすようになると、そこでの成功ルールはこれまでとは全く違うものになる。
金銭的なリターンを第一に考えても儲からなくなり、何かに熱中している人ほど結果的に利益を得られるようになる。
【第5章】加速する人類の進化
p254
誰か世の中に悪い人間がいて、その悪者のせいで多くの人が永遠に厳しい生活を強いられているという風に、感情を軸に答えを探そうとしてしまいます。
そして、わかりやすい「スケープゴート(生贄)」を見つけては、袋叩きにして憂さを晴らします。
感情的な不満を解消して溜飲を下げることには成功しますが、これによって「格差」という問題が解決するなんてことは永遠にありません。
本来、真剣に考えなければならない「議論」とは何か?
問題の構造を分析して解決することが大切!
目の前の感情的な不満を解消することを繰り返しているうちは、本当の解決策は永遠に見つかりません!
【おわりに】
p259
思い出してみると、この12年間、私はずっと同じことを繰り返してきました。
何かの疑問が浮かんだら、それに関する情報をかき集めて読み漁り、自分なりの仮説を立てて試してみる。
そうすると次の疑問が浮かんできて、同じようなことを毎週繰り返していく。
休日に情報を整理し仮説を組み立てて、平日は実務を回しながら検証を行い、また休日には平日に得た結果を元に次の疑問と次の仮説に繋げていく。
根気よく続けていくと、たまに非常に重要な法則性が見つかったり、全く関係ないようひ見えてきた様々なものに普遍性があったり、自分の偏見や常識が覆る場面に遭遇します。
自分が世界の真実に直に触れたような感覚になり、そこで得た気づきをすぐに試してみたくなったり、そこから派生する別の疑問が湧いてきたり…
その体験を通して得られる刺激が大きすぎて、それに比べると日常生活で感じる快楽は非常に色褪せた退屈なもののように映ってしまっていました。
p261
アインシュタインの言葉
「空想は知識より重要である。
知識には限界がある。
想像力は世界を包み込む。
大切なのは、疑問を持ち続けることだ。
神聖な好奇心を失ってはならない。」
私たちの周囲を覆っているあらゆる常識や概念は全て人間の「想像力」の産物に過ぎず、それは次の時代の人々によって上書きされ続けていく「発展途上」のものにすぎません。
人間はどんな空想も現実に変えることができ、どんな存在を目指すこともできます。
必要なのは、「好奇心」と「想像力」を絶やさないことなのです。