鬼才 伝説の編集人 齋藤十一

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344037281

作品紹介・あらすじ

「人間は生まれながらにして死刑囚だろ」
『週刊新潮』『芸術新潮』『フォーカス』『新潮45』を創刊。雑誌ジャーナリズムの礎を作り、作家たちに恐れられた新潮社の帝王。稀代の天才編集者は、なぜ自らを「俗物」と称したのか。



第一章 天才編集者の誕生 第二章 新潮社の終戦 第三章 快進撃 第四章 週刊誌ブームの萌芽 第五章 週刊誌ジャーナリズムの隆盛 第六章 作家と交わらない大編集者 第七章 タイトル作法 第八章 天皇の引き際 第九章 天才の素顔 終章 天皇の死

感想・レビュー・書評

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  • 「週刊新潮」編集長の遺言|鬼才 伝説の編集人 齋藤十一|森功 - 幻冬舎plus
    https://www.gentosha.jp/article/17474/

    森功のブログ
    https://mori13.blog.fc2.com/

    鬼才 伝説の編集人 齋藤十一 | 株式会社 幻冬舎
    https://www.gentosha.co.jp/book/b13493.html

  • 文芸出版社としての新潮社、そして『週刊新潮』などの新潮ジャーナリズムを論ずるには避けて通れない、伝説の編集者・齋藤十一の軌跡を辿ったノンフィクション。

    齋藤は「新潮社の天皇」と呼ばれるほど長く君臨し、『週刊新潮』『芸術新潮』『フォーカス』『新潮45』の生みの親となった大物でありながら、その実像は謎のヴェールに包まれていた。

    生前は黒子に徹し、一冊の著作も持たず、インタビューすら晩年にわずか数件受けた程度。

    齋藤を描いた書籍/ノンフィクションもごくわずかだ。本書以前にあった一冊丸ごとの本は、夫人が編者となった追悼本『編集者 齊藤十一』のみであった。

    『編集者 齊藤十一』は縁深い人たちが寄稿したメモワールなので、ジャーナリスティックな視点は乏しい。
    本書は久しく待望された、齊藤についての本格的ノンフィクションである。

    齊藤の生い立ちと、新潮社の黎明期が綴られた序盤は退屈。齋藤が文芸誌『新潮』の編集長になるあたりから、俄然面白くなる。

    森功は優れたノンフィクション・ライターだし、本書はとてもよくできた面白い本だ。

    ただ、森が『週刊新潮』出身であるせいか、どうしても齋藤十一寄り、新潮社寄りのスタンスが感じられてならない。
    とくに終盤、齋藤のことを天才、天才とあまりに持ち上げすぎで、読んでいて鼻白んでしまった。

    齋藤が実質的に内容を決めていた時期(すごく長い)の『週刊新潮』や『フォーカス』が行ってきた人権侵害的報道に対しては、当時から批判も多かった。

    だが、そうした批判について、著者は「あまりに浅薄な見方というほかない」(294ページ)の一言のみで片付けている。
    立場上、そういう言い方になるのもわかるが、私には物足りなかった。

    本書は齋藤を持ち上げすぎなので、批判的視点から彼を描いた優れた文章として、 亀井淳著『反人権雑誌の読み方』の第三章《「雲の上の人」齋藤十一の素顔》を併読するとよい。
    亀井は元『週刊新潮』編集部次長で、本書にも少し登場する。

  • 昨年12月30日に上梓された『2016年の週刊文春』。これに遅れること16日、書店の平台に両書並ぶ。こちらでも〈文春vs新潮〉のライバル対決。

    文春と新潮の社風について『2016年の週刊文春』にはこんな記載がある。出版系週刊誌で、発売日も同じ毎週木曜日、似たような誌面ゆえ、似たような編集スタイルと見られがちであるが、両社の社風はまったく異なる。文春は社員持ち株制度で社長は社員の互選で決まり、方や新潮はオーナー会社。人事異動が激しい文春に対し、新潮は入社以来ずっと週刊新潮という人もざら。文春は学園祭準備のように、遅くまでワイワイ議論しながらの紙面作り。服装も自由な文春に対し、新潮は全員ネクタイ着用のプロ集団。各々が黙々と仕事をこなし編集部は静寂そのもの。

    その雑誌編集スタイルを確立したのが、業界雀が名付けた『新潮社の天皇』こと、鬼才縦横の編集者 齊藤十一。1935年21歳の時、新潮社創業者の孫の家庭教師を経て新潮社に入社。以来60年、雑誌『新潮』『芸術新潮』『週刊新潮』『フォーカス』『新潮45』を主戦場に類いまれな天分を発揮。〈編集者は黒子であれ〉の立場を踏まえ、表舞台には姿を一切見せず、伝説の編集者として86歳の生涯を終える。

    とはいえ、編集長を務めたのは『新潮』の20有余年。にもかかわらず各編集長を差し置き、長年君臨できたのは超難関を突破し入社した極めて優秀な編集者が束になってかかっても太刀打ちできない、文学・哲学・美術・クラシック音楽…等の深い教養と博覧強記、そこにジャーナリストしての独特の嗅覚と目利き。

    毎週金曜日に行われる週刊新潮編集会議は、『御前会議』と呼ばれ、常務と編集長を前に齊藤は編集部員の書いた20案ほどの企画案を一瞥し、ひとりで決めていく。『俺が頭で、キミたちは足だ!だからキミたちは取材しまくれ!』と怒鳴りながら提示。

    それともうひとつ齊藤の功績は、今では週刊誌の記事では当たり前となった〈取材で得たコメントとコメントに繋ぎ目を埋めていく文章がファクトではなく、疑惑を抱かせるような記述筆致〉は週刊新潮が編み出す。

    また本書には錚々たる作家との交流も活写されている。山崎豊子はベストセラー作家になっても、齊藤と面会する度に緊張の面持ちで、『私は、山崎豊子と申します』と初対面のように 挨拶をし、五味康祐の新作に対しては『貴作拝見、没』とだけ記した葉書を送りつけ、井伏鱒二には『姪の結婚』という連載の途中で『黒い雨』というタイトルに変えさせる。

    そのプロデュースっぷり、目利きぶりはただただ瞠目するばかりで、 『知の巨人』というフレーズが立ち昇る。ただ大変な教養人でありながら、自身を『俗物』と称した。『小説家だ、ジャーナリストだ、編集者だ…などと気取ったところで、所詮愚か者のバカである。大衆の一人にすぎないことを自覚し、その視点でものを書かなければならないのだ』という確たる信念を抱いていた。

    極め付きは齊藤の最期のエピソード。『21世紀なんて見たくもない』と常々語っており、晩年インタビューに応じ、2000年12月23日に放映されたTBS『ブロードキャスター』を観ながら、『老醜だな、もう死ぬべきだ』と呟き、その翌朝、いつものようにお茶を飲んだ後に意識を失い、21世紀を見ることなく4日後に亡くなる。鳥肌立つエピソード。

    齊藤十一の知性は人間の業に根差す『痴性』と『恥性』を嗅ぎ分け、〈人間の正体〉をペンを持って暴いた。

    知性のドレスダウン、型があっての『型破り』…
    そんな言葉が行き交い、鬼才の半生を読み終えた。

  • 2016年の週刊文春を読んだあとで気になり、読んでみた。時系列でいろいろと知ることができ、参考になった。

  • 《齋藤は自らを「俗物」と表現した。(…)端的にいうと、それは人間社会が俗物の視点でないと理解できないと悟ったからだろう。》(p.17)

    《「二十一世紀なんて見たくもない」
    (…)
    「老醜だな、もう死ぬべきだ」
     あくる十二月二十四日朝、いつものように日本茶を飲み、そのまま脳梗塞に倒れ、四日後にこの世を去った。〇一年七月のフォーカス廃刊は黄泉で知ったことになる。》(p.295)

  • このような「怪人」ともいう人は少なくなったように思う。冷静な面もありつつ女性問題などでは動揺しているのが分かるのが人として面白い。

  • 出版業界に憧れた身として面白く読めた

  • 「2016年の週刊文春」が面白かったので、それなら新潮もと思い、「天皇」齋藤十一の評伝の本書を読んでみた。流石、森功だけあり読ませてくれるが、対象本人がシャイで寡黙故か、残している言葉が少なすぎて人物像の輪郭がぼやけたままで、伝説の編集者といわれてもどこが凄いのかが全く言葉として伝わってこない。小林秀雄や山崎豊子らとの逸話も面白いとは思ったが、だからといって齋藤十一が魅力的かと言われたら...。出版の世界での嗅覚はスゴイんだろうがあまりにも感覚的すぎて難しい。

  • ひとつひとつのエピソードが面白かった。名前の十一は、建国記念日の生まれだから。ドストエフスキーの小説はそんなに良いのか?また、新潮社の来歴も知れて興味深かった。同時代のほかの編集人との比較も知りたい。

  • 2022年4月7日読了

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著者プロフィール

森 功(もり・いさお) 
1961年、福岡県生まれ。ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業後、伊勢新聞社、「週刊新潮」編集部などを経て、2003年に独立。2008年、2009年に2年連続で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を受賞。2018年には『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『ならずもの 井上雅博伝――ヤフーを作った男』『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』など著書多数。


「2022年 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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