熔ける 再び そして会社も失った

著者 :
  • 幻冬舎
3.25
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本棚登録 : 395
感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344039780

作品紹介・あらすじ

カジノで106億8000万円を失い、会長辞任、獄中へ。そして懲役4年の刑期満了後に、再びカジノへ。リベンジの舞台は韓国ソウルの「WALKERHILL」3000万円が9億円にまで増えるマジックモーメント(奇跡の時間)を迎える。果たして、負けを取り戻す夢物語か、破滅への一里塚か。ギャンブラー井川意高によるバカラ放蕩記。しかしその裏ではギャンブルよりも血がたぎる、現会長佐光一派による井川家排除のクーデターが実行されていた。「大王製紙から井川家を排除し、自らの地位を盤石とするために、佐光は300億円も無駄金を上乗せして会社に損害を与えた。「他人のカネ300億円で買った社長の座」は、さぞかし温く心地良いことであろう。これこそ特別責任ではないか。しかも、私の金額の3倍である。有罪とすれば懲役12年だ。」(本文より)大王製紙を舞台にした血みどろ裏切りノンフィクション!

感想・レビュー・書評

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  • 井川意高氏の達観したとも諦念したとも言える人柄は嫌いではないのだが、しかし、ギャンブルに取り憑かれて会社を騒動に巻き込み、そこにつけ込まれてクーデターを起こされ、その相手を出版本で論う程には、やはり下劣である。しかし、何故かファン精神を擽るのは、一つには、私自身が全く被害者ではないからだ。更に言えば、同氏の居直りに哲学を感じる事、漫画のように娯楽性のあるドラマを見せてくれる事、もしかしたら依存症は病気だから仕方ないかもと、ちょっとだけ同情してしまうからかも知れない。

    シンガポールのマリーナベイサンズ、マカオのウィンマカオ。韓国のウォーカーヒル。最もチープなウォーカーヒルで出所後もギャンブルに溺れる。しかも、バカラではない賭博、他人の賭け方を否定する始末。自らの美意識の中で、デカダンスを気取る。特権階級の蕩尽。

    ー 生まれ生まれ生まれ生まれて生のはじめに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥し

    刑務所では、忙しない社会生活から隔絶される事で学び直しができ、それはそれで有意義な時間だったという。同じ事は佐藤優も堀江貴文も言っていた。すべき事がないという事は、それだけ集中力を高める事になるのだろう。その間に得たか、それ以前のものか、引用される言葉が響く。

  • 6月にこの本が出版されたので、
    その前にずっと読みたかった
    『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』も読みました。
    そこにはこう書かれています。

    〈同じ紙オムツを作っているのに、なぜユニ・チャームやP&Gや花王は利益を出せるのか。他方で、なぜ大王製紙は涙が出るくらいの赤字に苦しまなければならないのか。社内の人間と話し合うと、敗北主義にとらわれた担当者はこんな言い訳をつぶやいた。
    「向こうはたくさん作ってたくさん売っているわけでしょう。大量生産できるおかげで、資材メーカーが原材料をウチより安く売ってくれるんですよ」
    そんな単純な話のはずがない。自分の敗北の責任を他人にかぶせる言い訳が、私にはどうしても許せなかった〉

    〈「お前が一生懸命やっているのは知っている。だが、この数字はどういうことなのか」
    担当の営業部長を問い始めると、彼はその場で涙を流し始めてしまった。
    「うちの営業マンは、ゴールデンウィークも休みを取らずに現場を回っています。夜まで販売店回りをして会社に戻り、それから日報を書いて、翌日の朝には再び販売店に向かっています。新製品発売前の一か月間、そして販売後の一か月間、彼らは休みも取らずに必死でがんばってくれました。いったいこれ以上、彼らに何をさせろと言うんですか」
    現場の苦労を知る部長の気持ちもわかったが、私は敢えて心を鬼にした〉

    しかし当の本人は、カジノの件はもちろん、20台近くフェラーリやポルシェを並べ、駐車料金だけで年1200万円。
    六本木西麻布で飲んだくれる……。

    さて最後のほうでクーデターをおこした佐光正義のことを酷く悪く書いていたので、ネットで調べたところ、この本を書いた目的は彼への復讐とありました。
    しかし、どう解釈したって悪いのは井川氏であり、私がその場にいたら絶対佐光氏についていたでしょう。

    井川氏にアドバイスしてくれる人はいなかったのか?
    お金をもっている人の周りには、それを利用しようと、おだてる人たちが集まってくるのではないでしょうか。

    ところでこの本は幻冬舎ですが、
    『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』は双葉社でした。
    (文庫は幻冬舎)
    今回の編集者箕輪厚介氏は双葉社から幻冬舎に移ってきた方だそうです。
    箕輪氏が上手に井川氏を利用した、と見ました!

    箕輪さん、面白いから、どんどん書かせてください。
    出版業界にとっても良いことなのではないでしょうか。
    製紙会社にとっても。

    でももし、私が井川さんにアドバイスを求められたとしたら
    持っているお金をできるだけ沢山つかって、紙オムツや生理用品を購入し、困っているところに寄付してください、と言います。

  • 「溶ける」が面白かったのでこちらも拝読。
    出所後もカジノに行き、刑務所の中で購入したフェラーリをバカラの種銭として売却するエピソードのほかに、父親とのこと、大王製紙のクーデターなど、読み応えがありました。「溶ける」にあった政治家とのエピソードは誰だったかも判明。

  • バカラで会社のお金を使い込んで、逮捕収監までされた元大王製紙社長の井川さんが、所内での様子や、出所後の状況、会社を追われた社内でのクーデター、大王製紙中興の祖である父のことを綴ったものである。

    出所後も韓国やシンガポールでバカラを打ち続けたことを思うと賭博依存の重さにも驚くが、麻雀好きの自分としてはその気持ちは何となくわかる。何の生産性もないとわかっていながらも、心がギャンブルを求めてしまうのだ。そこまで突っ込めないのは、手元資金の差だけなのかもしれない。
    それにしても井川さんがバカラでの勝ち負けを運の流れと本気で信じているところが賭博好きであることを示している。バカラは統計的にカジノしか勝たないことはわかっているはずで、そのことをせこいギャンブラーをくさす個所でも明確に記載している。コロナで海外に行けない時期が長く続いたのは井川さんにとってはよかったのではないか。

    最近は、同じく東大から上場会社の社長になって刑務所に入った堀江貴文さんとYouTubeに出ている。YouTubeでのやりとりや、この本を読んで受ける印象からも、賭博にハマる性格は難があるのかもしれないけれども、あらためて仕事はできる人なのだろうなということを感じている。そして、さらに輪を掛けて父親の経営者としての胆力はすごかったのだろうなと思う。

    刑務所の中で、ニーチェとフーコーを読んだというエピソードも印象的。特に、ニーチェの「超人」には特に感銘を受けたとのこと。

    『熔ける』が出版されたのが2013年なので、あれからもう9年も経っているのだと思った。歳を取るはずだ。

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    『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4575306029

  • 前作が入獄するまでの執筆であったのに対し、本書は刑期を終えた後なので、獄中の様子、出獄後の生活、そして父のことや会社のことが書かれている。特に晩年の父との関係は、人間ドラマとしても心に響く。
    本書でのもう1つの特徴は、大王製紙における井川家追放の舞台裏を生々しく描いていることで、これは、亡き父高雄の新社長に対する怨念を受けて、著者が実名でありったけのことを書いていて、暴露本的な面白さもある。
    それにしても、獄中からフェラーリの限定モデルを注文するとか、やることが桁外れで驚かされる。

  • 前作『熔ける』の続きーい!仮釈放で韓国行ってバカラで4,000万円溶かしてるぅー!井川さんサイコー!
    井川家パージの件も面白い。正に半沢直樹の世界ですね。付き抜けた漢の人生は面白い。それにもまして父親である大王製紙中興の祖井川高雄氏の面白いこと。こんな親父は嫌ですが…

    井川さん、これからももっともっと熔かしまくって、我々庶民を楽しませてください。
    レベルが違い過ぎて全く参考になりませんが、勉強させていただきます!

  • 井川家の系譜を辿るエッセイ。創業家の追い出しはコンプライアンス重視のこの時代会社を守るためにやむを得ないことと思う。そもそも自分が蒔いた種だし、そこを恨んでもしょうがない。本としては面白い。

  • 元大王製紙創業家社長の著者の作品。

    一作目は、事件を当事者目線で語った目新しさと、ギャンブルにのめり込む姿がリアルに描かれており非常に興味深かったが、今回は少し毛色の違う作品。

    ギャンブルへの熱はあまり変わらないものの、創業家を排除した現大王製紙経営陣への攻撃も含まれている。

    色々と言いたかったことがあるのだろうが、やや正当性に欠ける上に、作品としての一貫性がなく、少し残念な一冊となってしまった。

    相変わらず文章のうまさ、教養の高さは読み取れる。

  • 本当に著者は莫迦な人だな。ギャンブルで108億円余りもの現金を使い果たし、それでも余り反省もしていないしそれが自分の生き様だなぞとうそぶいて。大王製紙の社長を続けられるわけがない。親の心を知った時はすでに後の祭りだな。

  • 読了。カジノからの話で、この著者はおかしいのではと思った。最後まで読むといい本であった。現代の貴族の放蕩息子の転落人生に見えたが、まだまだ人生は続きがあるようで、面白かった。鬱で死ぬのは馬鹿らしいと感じた。どんなことをしても生き続けたらいいと思う。

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著者プロフィール

1964年、京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、1987年に大王製紙に入社。2007年6月、大王製紙代表取締役社長に就任、2011年6~9月に同会長を務める。社長・会長を務めていた2010年から2011年にかけて、シンガポールやマカオにおけるカジノでの使用目的で子会社から総額約106億8000万円を借り入れていた事実が発覚、2011年11月、会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部に逮捕される。懲役4年の実刑判決が確定し、2013年10月から2016年12月まで3年2カ月間服役した。著書に累計15万部のベストセラーとなった『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(双葉社、のちに幻冬舎文庫)のほか、『熔ける 再び そして会社も失った』『東大から刑務所へ』(幻冬舎)がある。

「2023年 『熔ける日本の会社』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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