- Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344401990
作品紹介・あらすじ
ラジオのパーソナリティ千歳は、リスナーからのハガキにショックを受け、声を出せないという放送事故を起こす。唯一安心して話せるのは一人の障害者だけ。彼との関わりが深まるにつれ、彼女は、本当に必要なものとは何かを考え始める…。"大人"へと変わる時に失うもの、そしてひきかえに手に入れるものとは何かを描く書き下ろし小説。
感想・レビュー・書評
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ラジオ・パーソナリティの仕事をしている20歳の柿元千歳(かきもと・ちとせ)は、身体の関係はあるけれども恋人未満の展也(のぶや)、近くに住む障がい者の中学生「チュウニ」、そして仕事の仲間たちとの人間関係に、どこか折り合いのつかないものを感じています。
ある日、彼女はラジオのリスナーからの手紙を読んだことをきっかけに、ラジオに出演している彼女自身にも齟齬を感じるようになります。彼女の仕事と人間関係の歯車はしだいにかみ合わなくなっていきますが、スタッフはそんな彼女に新しいキャラクターづけをおこなおうとし、彼女の違和感はますます大きくなっていきます。
テレビでよく著者の姿を見かけるのですが、こういう小説を書くとはちょっと意外でした。「チュウニ」は名前の通り中二病の中学生ですが、他の登場人物たちも多かれ少なかれ中二病のような自意識の空回りを演じています。
「あとがき」で著者は、子どもの頃には辛いことに対して「忘れたつもり」になっていたのに対して、大人になった今では辛いことを我慢したり酒を飲んで憂さを晴らしたりわざと泣いてすっきりすることができるようになったと言い、「けれど、子供の頃より、欲しいものに対して純粋な気持ちでいられることが少なくなったのも事実だ」と述べています。子どもの頃の純粋さというのは、辛いことを忘れたような振りをする、どこか痛々しさを伴うものだったのかもしれない、と思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
全編に漂う空気感は前作の『愛の種』に似ています。
何かにしがみついている様で、どこか投げやりで...物語は淡々と続く。
これと言って何かを強く主張しているのではないのですが、見えない奥行きを感じます。
ところで『蜜蜂のささやき』とは何だったんだろう。