半島を出よ 上 (幻冬舎文庫 む 1-25)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344410008

感想・レビュー・書評

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  • まるで原発事故の際の政府対応記録を読んでいるようであった。
    他国がどんな戦略で臨んできているか読まない政府、自らの立てた前提・仮説を超えて状況を理解できない官僚、国家総体として難事の際に毅然とした決断を取れない大臣・・・。
    物語は社会のアウトサイダーによる反撃で終焉を迎えるのであるが、著者のイマジネーションにおいて、平時の官僚・政府を観察する限り、政府の自立的な対応あるいは危機対応行動が生まれ得なかった、ということだろう。

    この1年の政府の動きは、この点を実証しているとしか判断できない。

    一度こわれてみる他ないのであろうか。

  • 間違いなく名作!
    非常に精緻に書き上げられており、現実世界と混同してしまうほど。余程取材をしたものと推測される。
    この混沌をどう纏めるのか、下巻が楽しみだ。

  • 経済が破綻した日本の九州福岡を、北朝鮮の武装ゲリラが占領する。プロローグは退屈でしたが、後は引き込まれて一気読み。読み終った後、もう一度読みたくなる。おもしろい!

    いやーすごいです。龍さんのチカラを見せられた気がする。これを執筆するために、どれだけの時間をかけて情報収集したのだろう?

    登場人物も多いですが、ストーリーに引き込まれ、先を急いで読むため、ほとんど気になりません。下巻に続く・・・
    http://booklog.jp/users/kickarm/archives/4344410017

  • 村上龍あんまし、という人に堂々と貸せる本。一気に読めます。これ読んだ後に昭和歌謡大全集を読むと、また半島を出よを読みたくなるループ。

  • 作者の知識の豊富さに驚愕した。
    冒頭の近未来の経済状況が悪化した日本の描写を読んだとき、この人ものすごく勉強してるなあと思ってしまった。
    そのあと北朝鮮の軍隊について詳細な記述がなされていて、読むのがやめられなくなった。取材に相当な時間をかけたことが伺えるし、得た知識を物語の流れからそれないように伝えていることがすごいと思った。
    とにかく、この本を読めば友人より北朝鮮に詳しくなれること間違いなし!

  • 社会批判を全面に盛り込んでくる「コインロッカーベイビーズ」とか「5分後の世界」とかと同じ部類になるであろう攻撃的な作品。
    あまりの批判っぷりに正直なんどもしらけてやめそうになった…が頑張って最後まで読破!!

    もともと村上龍の作品ってどれも読むのにすごい労力がいる。正面から向き合わないと伝わってこないから。ただ1文1文噛んで飲み込みながら読むと頭の中にうわぁー!!って世界が広がってきて抜け出せなくなる。
    「半島を出よ」も例外ではない。特に過激なシーン、見たことないはずの銃撃シーンなんかが鮮明に浮かぶ。鳥肌が立ちもう止めて!!って叫びそうになるけど、目は文字を追うことをやめれず体が場面に引きずりこまれてしまう…

    村上龍おそるべし。

    2010/10

  • 大恐慌で地獄絵図となりつつある日本に某国が攻め込んできたらというお話。
    緻密に練り上げられた電撃作戦により、完全に陥落した博多。

    某国の占領体制が完成したかに思えたそのとき、それを阻止したのは、社会からはじき出された不適格者集団だった・・・・。

    村上龍の小説って、どんどんディテールの緻密さが増してて感心する。このお話もリアルすぎて、現実との区別つかなくなってくるほど。

    この辺、リアルすぎて気持ち悪くなるから、村上龍の小説って万人受けする人気が出ないのかなぁと思うこともある。

    とくに、村上龍のこの辺の小説は、社会的弱者を執拗なまでに描写するから、それが一部の人を不快にさせるところがある。

    これは、アマゾンの書評みてるとすごく実感できるところ。
    「おまえはなに上目線で書いてんだよ!!」
    と、ついプリプリして、生理的に全否定してしまうのだろう。

    余談だけど、「ヨサコイ踊り」への冷酷なまでの批判(画一的で創造性ゼロなど)は、どの小説にも、ちょこちょこ出てきてる。「あっ、また出てる」とか思って笑ってしまう。

    日本って、社会的強者と弱者の差異をあいまいにして成立してきたところがあるとおもうけど、その辺をずいぶん前からえぐってきた人だからねぇ。

    最近の経済状況でこの人の小説を嫌でも思い出してしまうのは、そうしたきれいごとで、曖昧にされてきた資本主義の本質が、現実にあぶりだされてきたからなのかもしれない。

    高城剛(エリカの旦那ね)も昔、村上龍の小説に出てくる、既存秩序がぶっ壊れて無法地帯になっている状態にカタルシスを覚えると書いてたけど。ほんとにそうだなと思う。

    だけど、ほんとにぶっ壊れてみると、なかなかスリリングだがね。

  • 夏枯れの本屋さんに出掛け、さて何を読もうかと思っていたところに、この本が文庫本になっていて、上下で1100頁ながら、ここはそう夏休みということで腰を据えて読めるぞと。
    北朝鮮から送り込まれた特殊戦部隊の兵士が福岡ドームを占拠し付近の地域を制圧する。精緻に積み重ねられるストーリー展開と鏤められた福岡の風景。
    私は福岡の育ちなので、西区のほうはあまり行ったことがないとはいえ、ドームやシーホークホテルはもとより姪浜、地行、大名、博多駅、大濠公園などの地名により臨場感を感じながら、朝日や読売の記者より西日本新聞の記者が有能に描かれていることだけでも嬉しく、ここまで見通せる村上龍にして博多駅に井筒屋が残っているところが可笑しく。
    しかし何よりこの本の厚みは、物語を通じて喝破される平和ボケしてしまった政府や国民の無能、世間からつまはじきにされた少年たちの異様。
    放っておけばいずれそうなると言われたまま放っておかれそうなってしまった三等国としての日本の姿は決して絵空事ではなく、今の外交や経済政策や教育のあり方に対する鋭い批判が底意にはある。

  • 中田英寿も読んでる!で有名になるも読めなかった本作を2024年に読む。2005年に書かれた本作は2011年の経済崩壊した日本を描いている。すでに未来にいる私としては、この2011年春の北朝鮮反乱軍の上陸と東日本大地震と重ねて読んでしまう。しかしそれは勝手な話。

    北朝鮮で鍛え上げられた特殊部隊と、日本政府や日本人の性質、社会とは相容れない殺人や異常性をもった子供達。三つの体制から、事件を描いている。
    非常に多い登場人物の成り立ちを丁寧に書いているが、おかげで全体の進みが遅く感じる。なぜ反乱軍がきたのか?日本政府で情勢に詳しい人は早く動き出さないのか?危険な子供たちがどう関わっていくのか?
    上巻の後半でようやく大阪府警SATが動くも...(続き)

  • 中盤から後半にかけてどんどんしんどくなってきた
    今でも全然あり得て、現実味ありすぎて苦しい
    日本人の平和ボケみたいなところを表現されてる
    最後、ずっとしんどかったけど、希望が見えて早く下巻が読みたい

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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