森は知っている (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.68
  • (41)
  • (98)
  • (78)
  • (15)
  • (3)
本棚登録 : 900
感想 : 71
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344426436

作品紹介・あらすじ

南の島で知子ばあさんと暮らす十七歳の鷹野一彦。体育祭に興じ、初恋に胸を高鳴らせるような普通の高校生活だが、その裏では某諜報機関の過酷な訓練を受けている。ある日、同じ境遇の親友・柳が一通の手紙を残して姿を消した。逃亡、裏切り、それとも-!?その行方を案じながらも、鷹野は訓練の最終テストとなる初ミッションに挑むが…。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『森は知っている』吉田修一著

    1.購読動機
    202005放送の『路』の番組がきっかけです。
    実際の歴史出来事と人間のドラマを交錯させる見せ方に関心があったためです。

    2.森は知っている から投げつけられたこと
    「死にたいならばいつ死んでもいい。
     今日死のうが、明日死のうがそんなに
     違いはないだろう。
     ならば、今日一日だけでいい。
     ただ、一日を生きてみろ。」

    強烈だった。
    がつんときた。

    3.本書
    幼きころ肉親に捨てられた。
    弟は目の前で餓死。
    自身は孤児院で生き始める。

    彼は、その後ある組織に拾われる。
    名前を戸籍を変えて、別の人生を歩みはじめる。
    そう、産業スパイだ。

    時は水道事業の民営化。
    韓国企業と日本企業の駆け引きが始まる。
    そして、それぞれの国の産業スパイ。

    組織のルール。
    18歳で正式な構成員となるか?やめるか?
    なるならば、肉体に爆弾をうめて奉仕をする。
    拒否ならば、戸籍を無くして、名もなきひととして生きるだけ。

    どちらも酷な運命である。

    4.18歳の主人公と周りからの学び
    組織への裏切りは罰せられること。
    当たり前の顛末。

    ひとは、何かに所属して、何かのさだめを与えられて、一日を生きていけること。
    孤独であることが、どれほど耐えづらいものなのか?ということ。

    #読書好きな人とつながりたい。

  • 「国宝」の書評やレビューをみて、吉田修一さんという作家を知り国宝が文庫になったら読もうとおもってたんだけど、我慢できずに手に取った一冊。

    のほほんとした島の生活にカモフラージュされた、壮絶な組織の中での任務。二つの対比の振り幅が大きいからこその魅力だと思う。
    冷たく機械的な対応としかおもえないAN通信の人々。そもそもの出自が幸せとはいえない人の集まりなのだから仕方がない、という思い込みはみごとに裏切られた。
    想像をはるかに越えるおもしろさで、吉田作品にはまりそう。

  • 吉田修一の鷹野一彦シリーズの第2作目。(2015年4月単行本、2017年8月文庫本)。
    第1作目の「太陽は動かない」の主人公、鷹野一彦がエージェントへ訓練されていく17歳高校3年生時代の物語。同時に上司の風間武が記者からAN通信のエージェントになる背景も明かされ、鷹野と風間の強い絆も描かれる。
    鷹野と同じ境遇の親友の柳と共に沖縄の離島で高校生活を送りながら訓練を受けていたが、柳が突然姿を消す。逃亡したと思われたが、姿を消した背景にどんでん返しの結末が待っていて、これは面白い。
    鷹野のエージェントとしてのテストを兼ねた初ミッションの仕事ぶりが「太陽は動かない」での31歳の円熟した優秀なエージェントとしての片鱗をうかがわせる。そして同世代あのデイビット・キムとも絡み、「太陽は動かない」での鷹野とデイビッドとの敵でありながら味方にもなる不思議な関係の背景を見た感じがする。
    4歳で保護され11歳で軽井沢の風間に引き取られた鷹野は、家政婦の北園富美子に息子のように育てられ、沖縄の高校時代はエージェントの訓練を受けながら知子婆さんに世話になる。いづれもAN通信から派遣された人材らしい。
    高校3年生の時に転校してきた菊池詩織に初恋をするが、卒業して詩織はニューヨークへ留学、鷹野はエージェントとして上海へ出張、偶然旅立ちの成田空港で出会ったところで物語は終わる。
    いつかまたこの二人に出会いがあり、新しいドラマがあることを期待したい。8/6に発売されると聞いた文庫本、シリーズ第3作目の「ウォーターゲーム」も是非読んでみたいと思う。

  • 『太陽は動かない』をまだ読んでいないので、いきなりの『森は知っている』なので何も知らないで南の島での謎の冒険?と思って読み始めました。
    違いました。
    ストーリーは面白かった。
    主人公達がそこに至るまでの経緯は正直辛かった。

  • 1冊の本としては前作『太陽は動かない』の方が好きだったけどAN通信と鷹野の過去、風間さんの人柄とか知れてうれしかった鷹野にもちゃんと少年時代があったんやなーてなった

  • 映画は、「太陽は動かない」と本作品「森は知っている」をあわせて、また違った作品を構築していた。
    どちらも、時を忘れて楽しめた。
    次巻の「ウォーターゲーム」を早速読み始める。

  • 鷹野第2弾。今回は高校生時代に始まり、産業スパイになるまで。南の島で高校生活を送りつつ訓練し、諜報員になるテストで実際の活動(自作につながる水問題)をする。青春ものでもあり、恋も友情もあり、今回は風間と鷹野の絆、そして、誰が裏切り者か、満載であっという間に読み終わった。3作の中で一番熱いかな。風間の「生きてみろ」という叫び熱い想いが伝わってきました。鷹野は壮絶な人生を送っているな、鷹野が35歳を迎えその後まで物語は続けて欲しいものです。深すぎず、軽すぎずよかったです。

  • 鷹野を主人公とするAN通信シリーズの2作で彼の生い立ちから若かりし頃を描く時系列としては一番初期の作品となる。『ウォーターゲーム』を手に取ってその前に全二作を読んでおこぅと先にこの本を手に取った。スパイアクションとしても鷹野の青春譚としても面白く読めた。それにしてもいろいろな作風の小説を書く作者さんだなあ。

  • 「太陽は動かない」と「森は知っている」
    並んでいたので本書を手に取った。
    間違えたかな?
    こちらはシリーズ二作目だった!
    しかしながら、主人公の若かりし日のお話。
    過去の出自から、人間関係まで描かれていたので、スイスイ読めました。
    AN通信社のやってることって、鷹野くん達、子供にとっていい事なのか、どうなのか。
    物語としては、理解できるけど。
    子供の虐待や育児放棄など、最近よく聞くニュースになっているが、AN通信社が有れば救われた命もあったのかも…

    残業スパイとして成長した、鷹野一彦に会いに行かなくちゃ!
    「太陽は動かない」読まないとね!

  • 鷹野一彦シリーズ第2弾。
    「太陽は動かない」の主人公、AN通信エージェント鷹野一彦がエージェントへ訓練されていく17歳高校3年生の物語。
    沖縄の南の島で暮らしている鷹野一彦、ある日、同じ境遇の親友・柳が一通の手紙を残して姿を消した。

    面白かった!!

  • 評価は5.

    内容(BOOKデーターベース)
    南の島で知子ばあさんと暮らす十七歳の鷹野一彦。体育祭に興じ、初恋に胸を高鳴らせるような普通の高校生活だが、その裏では某諜報機関の過酷な訓練を受けている。ある日、同じ境遇の親友・柳が一通の手紙を残して姿を消した。逃亡、裏切り、それとも―!?その行方を案じながらも、鷹野は訓練の最終テストとなる初ミッションに挑むが…。

    鷹野シリーズらしい・・・しかも第2弾。
    誰を信じて良いのか?まだ若くて不器用で素直な鷹野の迷いがそのまま伝わってドキドキした。成長していく鷹野を追うぞ!

  • AN通信社の鷹野の少年時代を描いた、シリーズ第2弾。
    正直、第1弾の「太陽は動かない」は2回読んでも、面白さが分からなかったけど、何も意識せず、第3弾の「ウォーターゲーム」を先に読んでいたので、前日譚に当たるこの作品にはすんなり入っていけた。
    第3弾で鷹野が育った南の島を思い出すシーンが多かったので、この作品を読んで、「なるほど、そう繋がるのか!」と思った。
    幼い頃、親に虐待されて、2歳下の弟を亡くし、孤児になった鷹野が産業スパイになるまでの人生は、なかなか壮絶だが、後にライバルとなるキムとの出会いも描かれており、悲壮感より、現在の鷹野がいかにして鷹野になったのか、よく分かり、とても面白かった。

  • 普通の高校生が実は産業スパイというなんとまあエンタテインメントなお話!と思ったらやはりそこは吉田修一。終始泥水に足がはまっているような感触。社会の不条理、残酷な現実…リアリティあります。

  • 店頭で何となく手に取った一冊。
    結論はと言うとまぁまぁというか、イマイチというか。

    南の島で暮らす高校生・鷹野は幼い頃に親に捨てられ施設で育った。
    ある時諜報機関に引き取られ、新たな戸籍でスパイになるための訓練を秘密裏に受けながら生きている。
    ある日同じ境遇の友達・柳が諜報機関から逃れる為に姿を消すが、鷹野には手紙が残されていた。
    組織からのミッションを遂行していく内に柳に結び付いていくが、果たして裏切り者は誰なのか。誰を信じる事ができるのかー。

    テンポよく話が進むものの、読了後は
    「結局何が伝えたかったのかなぁ」という印象でした。
    例えば辛い過去を持つ鷹野が少しでも変わるとか、何かしらあれば面白かったと思うのですが。

    吉田修一さんは好きなのですが、時々私の好みじゃない作品があり、これもその内の1つだったのかな。

    2017年11冊目。

  • 前作が私的にはゴリゴリのハードなシチュエーションで進んでいった印象であったから、まだ今回の方がちょっとした青春色も出てきてヒィヒィ言わずに読み終えた。

    3部作目に当たる作品は、まだ鷹野さん現役なんだよねぇ。

    鷹野さんの35歳以降の生き様が見たいなぁ。

  •  「太陽は動かない」を読んだときは,吉田修一はこんなハリウッド映画みたいな小説も書くんだと感心したんだけど,これは吉田修一らしい作品(活劇風ではあるが).ティーンエイジャーの鷹野くんがエージェントになるまでの物語で,鷹野くんの生い立ちや風間さんとの関係も明らかに.
     やっぱり,吉田修一が物語るハイティーンの子の話は面白い.

  • 続編『ウォーターゲーム』を読んでからの逆読みだったけれど、それもまた良し。痛快なアクションが炸裂する起爆剤の片鱗か随所に伺える、AN通信社?まるで秘密結社! 55

  • 『太陽は動かない』の前日譚。
    鷹野は大丈夫鷹野は大丈夫、そう自分に言い聞かせながら読んだ。


  • 面白かった。
    吉田さんの本でハラハラする感じの話は初めて読んだ。

    色んなタイプの話を書くんやなぁと思った。

  • 産業スパイ鷹野一彦シリーズの第二弾。
    とは言っても、前作の太陽は動かないよりも過去のお話。
    鷹野がどういった経緯でAN通信で産業スパイとして
    働くことになったのかが描かれている。

    どちらかと言うと、前作よりも今作の方が好みかも。
    壮絶な人生を歩む鷹野、だがそれでも人間味が溢れる部分に
    少なからず共感というものは生まれる。
    こんな突拍子もない世界の話であれば尚更。

    前作の太陽は動かないと今作の森は知っていると併せて
    映画化が発表されたが、
    はてさて、普通に描けば興ざめでしかない世界観を
    どう表現してくれるのか大いに楽しみだ。

    どうか、込められた人間の存在意義も含めて
    痛みも含めて、見事に表現してほしいと期待したい。

全71件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

吉田修一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×