何と感想を書こうか、とても迷います。
読み始めたときは、ちょっとなかなかページが進まず、途中で止めようかと思いました。
でも、折角購入したのでと少しずつ読み進めてゆく中に、次第に作品世界に引き込まれていきました。
主人公の美少年アシェリーは、貧しい農家の次男で、幼い時にお金のために親に娼館に売られました。
そして、貧乏貴族のティエトゥールと出逢い、激しい恋に落ちます。
こういう場合の常で、ティエトゥールはアシェリーを正室にしようと躍起になります。しかし、上官の娘婿にという縁談が舞い込み、断り切れず何とかアシェリーを妻にしようと奔走している間、当の恋人が彼の将来を思って身を引きました。
裕福な商人に落籍された彼は、やがて仕組まれた出逢いによって他国の侯主の目に止まり、寵姫となります。
10年の時が流れ、アシェリーを取り返すのを目的にティエトゥールは王命を受けた将軍として侯国に攻め入ります。
彼はアシェリーを取り戻すためには権力が必要だと思い、上司の娘と結婚して伯爵となっていました。
権力と身分違いによって引き裂かれる恋の辿るある意味、王道なプロセスですが、アシェリーの透き通るような美しさ、外見を裏切らない心の美しさ、優しさによって、とても好感の持てる良いお話だと思っていました。
しかし、ラストのどんでん返しが私には、どうしても納得がゆきませんでした。
アシェリーは優しい侯主を裏切った罪、ティエトゥールへの愛を背負って、自ら命を絶つ、、、そう容易く予測できる展開で進みながら、結局、アシェリーはティエトゥールと末永く甘く暮らしました、、、
これでは、侯主があまりに気の毒というものです。
罪の意識を感じている、煉獄に自分たちは落ちたと言いながら、主人公たちの蜜月にどっぷりと浸かっている幸せそうななラストシーンは、到底、「罪を感じて」いるようには見えません。あくまでも個人の感想ではありますが、あまり共感のできない終わり方でした。