心を開かせる技術: AV女優から元赤軍派議長まで (幻冬舎新書 も 1-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344980334

感想・レビュー・書評

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  •  著者は、風俗ルポからコワモテ人士(ヤクザ・闇金のドン・右翼・過激派など)への直撃取材まで、硬軟問わず精力的にインタビューをつづけてきたベテラン・ライター。話の聞きにくい相手の心を開く達人である。
     本書は、著者が豊富なインタビュー経験から編み出した、語り手の「心を開かせる技術」を開陳したもの。

     随所にちりばめられた、インタビューの舞台裏エピソードが抜群に面白い。また、「インタビュー術」の極意を明かしたハウツー本としても有益である。

     私が「なるほど」と思った具体的なノウハウとしては、たとえば――。

    ・インタビューのときには相手の正面に座るのではなく、テーブルを挟んで「L字型に」座る。そうすることで、相手を真っすぐ見据えることがなくなり、互いの緊張感をやわらげることができる。

    ・相手の肉体に何かの傷跡があったら、そのことについてあえて聞くべき。「聞かないのは聞き手として失格」(これはフーゾク取材など特殊なケースの話で、一般的な取材にはあまりあてはまらないと思うが)。

    ・若い一般女性が相手の場合、カラオケボックスは取材場所として最適。喫茶店のように隣の席から聞き耳を立てられることもないし、相手は中学生くらいからカラオケボックスに行き慣れているのでリラックスして話をしてくれる。

    ・取材時にはノートに、「音で記録できない要素すべて」をメモしていく。相手の着ている服、つけているアクセサリーや香水、部屋の様子、書棚にある本のタイトルなど。

     その他、印象に残った一節を引く。
     
    《インタビュー相手が遅刻してくるのは、こっちとしては願ってもないパターンです。
     というのも、遅刻してくると、いくら図々しい人間でも、多少はわるいことだと感じて、その後のインタビューでも協力的になる場合が多いからです。》

    《人間は何か取り繕おうとするとき、抽象的な言葉で、その場をやり過ごすときがあります。
     抽象的な話をできる限り具体的な固有名詞で語ってもらうこと。これが話の深みを増すポイントになります。》

    《対談相手と意気投合した場合、いざ原稿にしてみると、思ったほど面白くないものです。現場での論争は、後々、味わい深いものになります。
     会話が噛み合わないこともまた、コミュニケーションのひとつです。》
     
    《男の場合、話をしていて嘘をつくとき、あるいは意識的に真相をカムフラージュしようとするとき、視線を瞬間、はずす癖があります。
     ところが女の場合、嘘をつくとき、男とはまったく逆で、相手の目をみつめて話しつづけます。ですから、嘘をつくのは女のほうが男よりも何倍も上手ということになります。》

     著者は自らを人見知りで口べただという。「他者の心を開かせるコツ、というものを私が持っているとしたら、それは私のコンプレックスから派生したものだ、と言えるでしょう」と……。そして、次のようにいうのだ。

    《一流のセールスマンというのは、誠実そうで、おとなしく、こちらの話をよく聞いてくれるタイプです。初対面でいきなりおしゃべりが始まるようなセールスマンは、客が警戒して引いてしまったりするようです。
     インタビューも同じことです。
     雄弁家というのはインタビュアー(聞き手)に向かない。むしろ口べたくらいのほうが、相手(話し手)もリラックスして何でもしゃべるようになるものです。》

     ライターを20年以上やってきたのに相も変わらず口べたな私は、この一節に深く同意する。

     一つだけ難点を挙げれば、著者自身が書いたインタビュー記事などからの引用が、総じて長すぎる。
     たとえば、「AV女優には両親が離婚した家庭に育った子が多い」と一言書けば済むところを、AV女優がその手の発言をした例を、何ページにもわたって延々と並べている。こういう要らざる引用は、ページ数稼ぎの手抜きとしか思えない。

  • ・個性とはその人の使う言葉である。
    ・初対面の人とはL字型に座るとよい。対面すると緊張感が生まれる。ちょっと斜に構えるだけでも大分違う。
    ・どんな人間でも、自分の話を聞いてもらいたがっている。
    ・コミュニケーションを円滑に図る最大のポイントは好奇心。

  • ノンフィクション作家による、人からうまく話を引き出す技術について書かれた本。著者は、今まで執筆のために様々な人々にインタビューする機会があり、その経験をまとめたものといえる。体系的にまとめられた内容とはなっておらず、体験談を紹介しているに過ぎないが、うまく聞き手になるやり方のヒントはあった。
    「私の知っているBMWのセールスマンでも、生命保険会社の営業マンでも、トップの売上げを誇る人間というのは、意外と口数が少なく、控え目な性格です。おしゃべりのセールスマンがトップに立つというのは、めったにない」p24
    「私が長年経験してきて、最も緊張せずに話が聞ける座り方は「L字型」です」p30
    「最近、1度や2度断られただけであきらめてしまうケースが多いのではないでしょうか。貪欲さが薄れてきたのか、交渉するにしても淡泊すぎる気がします。私の知り合いのセレブな奥さんが独身時代、よく言っていた言葉があります「おつきあいする男性の誠意を試すときは、2度や3度、つきあってください、と言われても、お断りするんです。4回くらいはあきらめないで申し込んでくれないと」」p37
    「人間は、自分の話を真剣に聞いてくれる相手こそ、最良のパートナーだと思う習性があります」p41

  • 本橋信宏はジャーナリストなのだろうか。切り口が面白く、出会った特殊な人からエピソードを貰い、それを文にして、実績を積み上げ、名を上げた。特に、AV業界でのインタビュー記事は、彼をもってその人あり、という領域を作った仕事だったろう。本著は、そんな遍歴と、出会った人ごとに乗り換えた壁。人間付き合いのテクニックを教えてくれる。喋りすぎはダメ、だけど女にモテる奴は、やはりしゃべるしゃべる。

    自分にとっては、いつもとは違う社会の一面に触れさせてくれるのが、本橋信宏。彼のイメージが変わる一冊だった。

  •  取材しにくそうな相手から、誰も聞いたことがないことを聞き出して、それを記事にしてしまう著者。
     特捜検事の尋問について書かれた本や、カウンセリングの本とあわせて読むと共通点があって面白いです。

    普段日の当たらない人にインタビューや取材を行う人の話しは、他で目にしにくい分、興味深いものです。
    でも、話を聞く人が物見遊山だったり、自分の巧妙のためだったりすると、その姿勢はすぐに文章に表れてきます。

    フラットで対象者に感情移入しすぎず、それでいて、話している人を一人の人間として尊重していることが必要だと思います。

     そういう聞き手は、めったにいません。
     さらに、聞いたことを文章で表現できるかどうかが、さらにハードルを高くします。

    この本は、その高いハードルを越えているめずらしい一冊だと思います。

     吃音の方へのインタビューを文字に起こすときの迷いと試行の部分を読むと、著者の悩みがダイレクトに伝わってくることでしょう。

     有名人へのインタビューや取材記事は注目度も高く、お金も動きやすいので、よくも悪くも派手です。世の中は派手な人だけで回っているわけではないはず、と思う方には、心に残る一冊になると思います。

     それにしても。「代々木忠」さんが稀有な人だったことを、この本でも知りました。実際あってみたら、どんな感じだったのだろうと思わずにいられません。

  • タイトルに「技術」とありますが、ハウツー本ではありませんでした。
    著者がこれまでしてきたインタビューのエピソード集。
    最後にちらっとだけ書いてある、すべてのひとに対して好奇心を持つこと、森羅万象に興味を持つこと、あとはあきらめない根気かな、と思った。

  • どんな人間でも,
    自分の話を聞いてもらいたがっているゆえ,
    相手への好奇心が大切。

    方法論的な記述は少ない。

  • 週間大衆の記者だった著者が、多くのAV女優や風俗嬢にインタビューした話の技術を書いたもの。
    仕事でインタビューするのと普通の会話で話を聞きだすのとの間には相当隔たりがあると思うけどなあ。。。
    実際の会話で役たちそうなところは、必ず自尊心をくすぐるようにすること、ユーモアを交えて話をすること、相手の服装、アクセサリーなどを誉めることくらいかな。

  • インタビューに臨む際の著者の姿勢に好感。
    村西とおるの口説く話法は圧倒的。
    満足度8+

  • インタビューのコツは「相手に興味を持って聞くこと」.
    色々なテクニックに目新しいものはなかったが、これまでのインタビューのエピソードは面白く、著者のインタビュー本を読んでみようと思った.

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著者プロフィール

1956年、所沢市生まれ。著述家。早稲田大学政治経済学部卒。逍遙と実践による壮大な庶民史をライフワークとしている。著書に『東京最後の異界 鶯谷』、『上野アンダーグラウンド』『迷宮の花園 渋谷円山町』『全裸監督』など多数。

「2018年 『色街旅情 紙礫EX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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