- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344983090
作品紹介・あらすじ
使いっ走り、カツアゲ、万引きの強要、度重なる暴力、そしてクラスメイトによる集団レイプまで、いじめはさまざまだが、ほとんどの被害生徒は、いじめを必死に隠し周囲に相談しない。仮に子供が告白し、親が学校に相談しても、多くの学校は調査すらしない。そればかりか「証拠を持ってこい」と言う。そこで調査、尾行、録音・録画に秀でた探偵の出番となる。いじめ調査の第一人者が、実際に体験した具体的な事例を挙げて、証拠の集め方、学校や加害生徒の親との交渉法や解決法を伝授。いじめという社会の病巣に斬り込む。
感想・レビュー・書評
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以前、テレビで著者である阿部さんを取材した、いじめに探偵がなぜ関わっているのか?というような特集番組を、途中からだったが偶然観たことがあり、本も書かれていると知り図書館で予約。蔵書が少ないため半年待ち。
正直、読んでいて途中でやめたくなるような凄惨な話もあった。特に性やお金がらみのいじめは、読むに耐えない。それは既にいじめではなく、犯罪だ。
阿部さんは、今の学校は機能不全だというが、確かにその側面は否めない。特に教育レベルの高い地域では、過酷ないじめは想定外で、そんな事案に対応出来る先生は少ないのではないだろうか。
家庭の問題も無視できない。どの家庭でも親は忙しく(実際に忙しい人も多いだろうが、親もスマホなどで自分の空間を閉じてしまっている例もあるだろう)、子どもは迷惑をかけられないと思ってしまう。
いじめはなくならい、今の大人社会が変わらなければ…という意見は全くごもっともだと思う。
大人が大人力を失っている現代、せめて、見守る目を持つ大人でありたいし、生徒にもそう伝えたい。
以下に印象に残った部分をあげる。
*私がみたかぎりですが、子どもたちのいじめは、大人たちの模倣です。バラエティ番組で、芸の無い芸人が内輪話をして、世間的に劣っている様子の1人を面白おかしく馬鹿にする。嫌がる後輩芸人を斜面に突き落としたり、叩いたりしてみんなで笑う。一部の大人が、この世はお金がすべてと言う。そして、ある場面では、強い者が弱い者を踏みつけて平気な顔をしている。そんな大人たちの振る舞いを真似た結果、子供たちのいじめは凶悪化しているのです。
218ページ あとがきより
*日本語は便利なもので、「窃盗」と言う犯罪を「万引き」という言葉で言い換えて、罪悪感を薄れさせるように、「いじめ」という言葉は「恐喝」「強要」「暴行」「傷害」「売春」「損壊」「強盗」の言い換えにすぎません。
219ページ あとがきより
2019.11.16
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先日、文科省の、いじめ認知件数の統計に関する新聞記事を見ました。
児童虐待の通報件数と同様、アングラだったものが認知されている可能性があることを考えると、単純に認知件数が増えていることが、「実際のいじめ件数が増えている」ことを表しているとは決めつけられないけれど、間違いないのは、いじめが決して無くなるものではない、そして、今も、多くの子どもたちが理不尽ないじめを受けて苦しみ、助けを求めているであろうこと。
この本は、探偵業を営む著者が、いじめ事案について探偵調査の依頼を受け対応してきた経験をもとに、いじめの実態、有効だった対処の方法などについて紹介しているものです。
でも、決していじめ対策のノウハウ本ではなく、むしろ、子どもたちに正面から向き合っていない大人たち、特に親や学校現場の姿勢に対して強いメッセージを送るとともに、現代社会に警鐘を鳴らそうとしているように思えます。
「いじめ」と一言で片付けているけれど、その中身は立派な犯罪(窃盗、暴行、傷害、強要、脅迫…)だ。低年齢化、悪質化している。そして、いじめる子どももいじめられるこどもも、ごく普通の子。勉強が苦手な子も、進学校に通う勉強ができる子も、誰でも当事者になるのが現代のいじめ。
いじめは、大人の世界の模倣に過ぎない。大人が自らの行動を見つめ直さなければ、いじめの行為はなくならない。
凶悪ないじめ案件でない限り、(探偵に頼らずとも)親や学校が、子どもたちをしっかりと見つめ、変化に気づき、子どもたちの声に耳を傾け、そして解決するために真剣に向き合うことで改善できることは多い。いじめられている子どもたちは、実はきちんとサインを出している。
心に留めておきたいことを示唆してくれる本でした。 -
いじめと向き合う
いじめと探偵。
この二つがどう結びつくのか、不思議に思う人もいるかもしれない。
しかし、残念ながらこれが結びついてしまうのが今の社会なのである。
著者は私立探偵として、いじめ問題と関わることとなった。
教育の専門家ではないし、「不良」な職業と罵られることもあったようだが、ごく当たり前の、探偵という以前に社会人であり、大人であり、人間としていじめと向き合っている。
著者は何度も言う。
探偵に相談する前に、親や学校、教師、周囲の大人が子供にきちんと向き合ってください。
私たちは証拠を掴むことはできても、根本的な解決はできないのだ、と。
学校ばかりに責任を押し付けている論調ではない。
多くの仕事に忙殺され、子供と向き合えない教師の立場も理解しようとしている。
しかし、現場では真っ当な教師や大人が排除され、事なかれ主義が蔓延していることに疑問を投げかけている。
相談にくる内容には信じられないようなものもある。
カツアゲ、暴力のようなものや猥褻行為までも。
信じられないが、「子供だから」手ぬるいということはない。
より、残酷な方法を思いつくこともあるのだ。
こういったことがある、ということを知らないと問題の本質は見えてこない。
あえて本書の欠点をあげるなら、報道でもあるように、SNSなどを使ったものが語られていないこと。
直接の相談を受けることがないのかもしれないし、インターネット上のいじめは証拠をとることが難しいということもあるかもしれないが、触れておいてもよかったのではないだろうか。
いじめ相談を受ける探偵社が増加しているそうだ。
それは子供ときちんと向き合わない大人の怠慢ともとれるが、もし利用するなら、という前提で良識的な探偵者を見極める方法を伝授している。
結局自社の広告か?いや、そうとも限らない。
できれば探偵なんか利用するな、と著者は述べているのだから。
子供の問題はそのまま大人の問題である。
神聖な教育の場、とか、子供同士のことだから、とかそういうことでは解決にならない。
何が、課題で、どうすれば解決に結びつくのか、第三者の視点は的を射ている。 -
SDGs|目標16 平和と公正をすべての人に|
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685422 -
20200527
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いじめの現状とそれを取り巻く環境について、現場で子や親、学校と接している探偵の目から簡潔でわかりやすく描かれていると感じた
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残酷ないじめの現実が、これでもかというほどリアルな描写で書かれている。著者が、探偵ということで書き方にも一切の容赦がない。事例を知っておくという意味において、一読する価値がある。
ただ、描写は凄絶ながらもどうやってこの問題を解決するかという論にはまるで力が無い。探偵の仕事は大変で、教員の質は下がっている。それ自体は事実だが、そこからどうやっていくのかは、とても曖昧に書かれていた。事例と同じくらい切れ味鋭く、解決策にも持論を展開したらいい。 -
地べたを這い尽くし、いじめと向き合ってきた生の奇跡がある。言葉に真実味、すごみがある。私が陥り、また、関わってきたいじめも全く同じだ。昔はこうだった、という著者の語りのみ少し違和感があるが、それ以外は全面的に同意できる。
・いじめが理由の転校は簡単。
・父親の存在感の薄さといじめ事案は強い相関がある。
・子どもの価値観と大人の価値観は違う。
・外部の業者にいきなり丸投げでは、親子関係が心配。
・一つの新しいルール(法)を作るよりも、先生の世界、大人の世界をまともな人間関係があると言える世界にしていくのが先決。
・子どものいじめの材料は大人世界に揃っている。 -
最近のいじめには探偵も絡むらしい…というニュースを見て、読んでみたくなった本です。
たけしが、「いじめって言葉を使うから勘違いするけど、ふつうに暴行とか恐喝とかだから。ちゃんと言葉にしないと」的なことを言って(書いて)たけど、ほんと、その通りだな、と。
自分が中学や高校の時、大人はどうして「子ども」とカテゴライズした人間に甘いのか。
分別も、我慢も未成熟な分、「大人」よりも子どもは残酷なのに、と思っていた。
自分たちのイメージする「子ども」でいてほしいのが大人で、そのイメージの色眼鏡で見ている間は、結局、変わらないんだろう。
私には子どもはいないけれど、子どもを学校に行かせるのが怖くなる。