アウトサイダー・アート入門 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983755

作品紹介・あらすじ

アウトサイダー・アートとは、障害者や犯罪者、幻視者など正規の美術教育を受けない作り手が、自己流に表現した作品群。40年間、小さなアパートで空想の戦争物語を挿し絵とともに描き続けたヘンリー・ダーガー。手押しの一輪車を心の支えに33年間、石を運び、自分の庭に理想宮を作り上げたフェルディナン・シュヴァル。12歳で入った養護施設で貼り絵と出会った山下清。彼らに通底するのは社会からの断絶によって培われた非常識な表現手法。逸脱者だからこそ真の意味で芸術家たりえた者たちの根源に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 美術評論家 椹木野衣によるアウトサイダーアートの解説書。ヘンリー・ダーガーを知ったことからアウトサイダーアートに興味を持ち、他にもどんな作家がいるのか気になり手にしました。本書ではフェルディナン・シュヴァル、サイモン・ロディア、ヘンリー・ダーガー、渡辺金蔵、三松 正夫、出口なお、王仁三郎、ルイーズ・ブルジョワ、ジャン=ピエール・レイノー、田中一村、山下清など、西洋だけでなく、日本にも光を当てており、詳細な解説があるため非常に参考になりました。新書という形態のため作品の写真などがあまりなかったのが残念です。

  • この本の中身でユニークなポイントは、「アウトサイダー」=「外道」という再定義だ。「美術教育を受けず精神が病んで反社会的な人が描いた絵」ではなく、美術の権威=インサイダーに対立し、自らのオブセッションを追求する芸術家だとする。そこには、”有名作家”のルイーズ・ブルジョワやジャン・ピエール・レイノーもいれば、西洋のメインストリームから外れた日本人モダンアート作家全般も、サブカルもポップミュージックもジャズも含まれる。そして、アウトサイダーこそ芸術の本質をとらえており、将来、時代を象徴する芸術として評価されるものだと賛美する。
    そこまではわかった。アウトサイダー=ヘンリー・ダーガーでなくてもいい、草間彌生はアウトサイダーだ。現在賛美されている芸術と100年後に評価されている芸術が違うのは歴史が証明している。印象派だって「外道」として誕生したし、モディリアーニもゴッホも生前絵は売れなかった。
    しかしその定義では、そもそも権威VSアウトサイダーという対立軸が成り立たないのでは?我々は草間彌生もレイノーもダーガーも美術館で鑑賞し、村上隆をヴィトンのバッグに飾っている。結論で「山下清をMOMAに認めさせるべし」となるのは、いったい何が言いたかったのか?美術評論家として「アート」(とその権威なるもの)を否定したい気持ちが先走っている。
    採りあげられた芸術家の変人ぶりは面白く読んだ。レイノーは変な人だったのだなあ。

  • そもそもアウトサイダー・アートとは何か。
    様々な物を目にした時、はっとさせられたりとても奇妙に感じたり、作者がどんなことを考えて生み出したのか気になることがある。

    六本木ヒルズの蜘蛛の彫刻「ママン」(ルイーズ・ブルジョワ)を見た時、思わず後退りしてしまったが、この本を読んで今度行った時はもう少しじっくり下からお腹の部分を見てみよう!と思った。
    また田中一村について、この本を通じて知ったのでもう少し深めてみたい。

    以外抜粋
    アウトサイダー・アートが人間の苦しみ(病苦、孤独、離別、被災、困窮、追放、受刑、隔離)からやってくる。アウトサイダー・アートとは、ひとの生から絶対なくすことができない負の宿命と、たったひとりで拮抗するためにこそ存在する。芸術のもっとも根源的な姿なのではあるまいか。

    哲学者のハイデガーがいうように、人間とは芸術の棲み家である。ひとが芸術を作るのではない。芸術の棲み家にされた者が、身を依り代に芸術を作り出させられるのだ。


  • 仕事で、キュレーターの小出由紀子氏に会えそうな機会があったのだけれど、叶わず、本書で憂さ晴らし。
    アール・ブリュットと、アウトサイダーアートの呼び分けなど、イマイチよく分かってなかった事も書いてありスッキリ。

  • 読了するまでおそろしく時間をかけてしまったがために、全体的な感想を述べるのが難しくなってしまった、、。
    他のアール・ブリュット/アウトサイダー・アート入門書では取り上げられないようなアーティストを取り上げることで筆者独自の「アウトサイダー」が定義されながら論が展開されている、という印象であった。

    終章が特によかったと思う。
    298頁を読みながら、(のちに椹木さんご自身も述べられていたが)観る側がインサイダー面をしていちゃあ話にならないんだな、と反省をした。

    「作品」との向き合い方に行き詰まったら何度でも読み返したくなるであろう一冊。

  • ヘンリー・ダーガーに興味を持って、読み始めました。
    アートの世界というのが、必ずしも自由なものではなく、アーティストと名乗るための、いわゆる「王道」があることを知りました。
    それと同時に、「王道」から外れたアートがあるということも知り、アートの世界の奥深さを感じることが出来ました。

  • ひとの生から決してなくせない負の宿命からこそ生まれ、たった一人でそこに拮抗するために存在する、どこまでも個でしかない芸術の根源的な姿。
    "自然"の存在がアウトサイダーたちの感性の底をなすことも興味深い。
    コレクティブやコミュニティ意識の広がる現代だからこそ再発見があった。

  • ヒリヒリと「生」ににじり寄ろうとする切迫感というか

    「そうせざるを得なかった」切なすぎる事情も込みで、

    彼らのアートは胸が締め付けられる。

  • どの辺が入門なのかよくわからないが
    他の分野の作品も取り上げてほしかった

  • 列伝の体裁を取りながら、アウトサイダー・アートを紐解く。

    栃木県出身の田中一村に関する章あり。

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著者プロフィール

椹木 野衣(さわらぎ・のい):1962年生まれ。美術評論家、多摩美術大学美術学部教授。芸術人類学研究所所員。美術評論家連盟会員(常任委員長)。

「2024年 『洲之内徹ベスト・エッセイ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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