ふしぎな君が代 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983854

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  • 小学校から高校まで、入学式や卒業式で歌って来た「君が代」。
    実は1999年の「国旗国歌法」制定まで、正式には国歌でなかった
    ことを知ったのは成人してからだった。

    ただ、この「国旗国歌法」に関しては例の日本会議が動いている
    ので若干、複雑な思いはあるんだが。

    式典では必ず「国歌斉唱」と言われるのだから、そりゃ無条件で
    国歌だと思うわ。

    「君が代」に賛否両論があることは中学生頃に気がついた。しかし、
    私自身は別に反発することもなく歌っていた。だって、誰も国歌と
    決まっているのではないと教えてくれなかったのだもの。

    「君が代」はいつ生まれ、歌詞にはどんな意味があり、歴史的には
    どのように扱われて来たのか。国歌であるのに私たちはあまりにも
    知らな過ぎるのではないか。

    本書はタイトルこそ微妙だが、「君が代」誕生のきっかけから曲の
    変遷、「君が代」に替わる新たな国歌を生み出す試み等、多くの
    研究書にあたり、丁寧な考察をした良書だ。

    明治2年の英国王子の来日に伴い、英国側から「日本国家はいか
    なるものでよろしいか」と問われた。慌てたのは明治政府。

    「え?国歌?国の歌?そんなのないよ。どうしよう」となったところで、
    誰かが古歌である「君が代」の歌詞を持ち出し、英国の軍楽隊長が
    作曲して即席の国歌「君が代」が出来上がった。

    しかし、曲の方は後に改変されおり今、私たちが知っている「君が代」
    は試行錯誤の末に出来上がった曲である。

    こういうのさ、学校で教えてよ。自分たちの国歌として法整備された
    のであれば尚更だよ。海外では自国の国歌の意味などを学校で
    教えているところもあるらしいのだから。

    国旗「日の丸」以上に物議を醸すことの多い「君が代」について、何も
    知らずに「日本人なら歌いなさい」と強制されても反発を招くだけだと
    著者は言う。

    あったよね、大阪だっけ?卒業式だか、入学式だかで教職員がきちん
    と歌っているか口元チェックをチェックしていたなんてくだらないわ。

    ならばどうしたら問題を解決出来るのか。「歌う国家」ではなく「聴く国歌」
    として位置させればいいのではないか。そうすれば、イデオロギーの対立
    の火種としても小さくなるのではないか。

    これ、いいかもしれないね。本書でも書かれているけれど、テレビ画面を
    通じてスポーツ選手が歌っていたかどうかがネットで騒がれるようなこと
    もなくなるんじゃないか。

    右にも左にも寄らない著者のバランス感覚が素晴らしい。尚、入学式など
    で国歌斉唱するのは日本のほか、中国と韓国だけらしい。ネトウヨの皆様
    が敵視する国と一緒なんだね。

著者プロフィール

辻田真佐憲(つじた・まさのり)
1984年大阪府生まれ。文筆家、近現代史研究者。慶應義塾大学文学部卒業。同大学大学院文学研究科中退。
2011年より執筆活動を開始し、現在、政治・戦争と文化芸術の関わりを研究テーマとしている。著書に『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』、『ふしぎな君が代』『大本営発表』『天皇のお言葉 明治・大正・昭和・平成』(以上、幻冬舎新書)、『空気の検閲~大日本帝国の表現規制~』(光文社新書)『愛国とレコード 幻の大名古屋軍歌とアサヒ蓄音器商会』(えにし書房)、『たのしいプロパガンダ』(イースト新書Q)などがある。歴史資料の復刻にも取り組んでおり、監修CDに『日本の軍歌アーカイブス』(ビクターエンタテインメント)、『出征兵士を送る歌 これが軍歌だ!』(キングレコード)、『日本の軍歌・軍国歌謡全集』(ぐらもくらぶ)、『古関裕而の昭和史 国民を背負った作曲家』 (文春新書) などがある。

「2021年 『新プロパガンダ論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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