- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344985087
作品紹介・あらすじ
サーカスのピエロを、たまらなく恐ろしく感じる症状を「クラウンフォビア」という。また本来なら愛玩される対象であるはずの市松人形やフランス人形は、怪談やホラー映画のモチーフとして数多く登場する。なぜ人間は、“人間の形をした人間ではないモノ"を恐れるのか。また、日本人が「幽霊」を恐れ、アメリカ人が「悪魔」を恐れるのはなぜか。稀代のホラー作家が、「エクソシスト」や「サイコ」など、ホラーの名作を例に取りながら、人間が恐怖や不安を抱き、それに引き込まれていく心理メカニズムについて徹底考察。精神科医の春日武彦氏との対談も特別収録!
感想・レビュー・書評
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●何気なくブックオフ新年20%オフセールで買った一冊。当たりだった。
●大半の恐怖の解剖はサクッと読めてよし。
●なんか途中で作家養成講座みたいになっていたけど、まあ気にしない笑
●この本の凄さは最後の精神科医との対談。とんでもないくらい面白い。こんな面白い対談、読んだことない。
●統合失調症の解説とか、日常をなんとなく一定のスピードで走り抜けるとか、もうね。テンポも言葉のセンスも素晴らしすぎた。
●元旦から幸せな瞬間だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ホラー小説に対して抱いていた疑問や違和感のようなものの正体が、はっきりと理解できました。思い返してみると、怖くないなと思った作品は確かにその通りでしたし、逆に怖かった作品もそうでした。
思えば、初めて平山さんの作品に触れたときの、なんだこれは、という衝撃は忘れられません。以来、毒に侵されたようにして読み耽っていますが、そのエッセンスが本書には凝縮されています。所々に散りばめられている平山節に一気読みしてしまいました。
これから読むホラー小説は、きっと今までとは違った視点で読んでしまうかもしれません。表面上だけではなく、その裏側まで。それが善いか悪いかは分かりませんが、今まで以上に恐怖を楽しみたいと思います。 -
面白かった!
なぜ恐いものをみたくなるのか、どの部分に面白さを感じてるのかなどがこちらに話しかけてるみたいな文章で書いてあったので学術書みたいな硬い感じじゃなくて読みやすかった。
私は日頃そんな些細なこと不安に思わなくてもいいのにというようなことまで不安に思って思いつめて体調ガタガタになる程度には不安と常に隣り合わせで生きているので、恐怖より不安のほうがやっかいでコワイ、というような説はすごい頷けた。
明確な恐怖はそれはもちろん嫌だし怖いんだけど、明確になった時点でどう対処しようとかどう立ち向かおうとかもしくはあぁもう無理だ諦めちゃおうなんて案外腹くくれる気がする。気持ちの上ではさっぱりするというか。もちろんめちゃめちゃ怖いんだけど。
不安はジワジワ真綿で首を絞めるような感じだし明確な対処法が思いつけないし、思いつけたとしても不安が恐怖に変わるまでは実行できなかったりして生殺し状態。しかも自分で不安をどうにか克服しないうちは永遠にまとわりつく。
本書に書いてあることと似たようなことを書いてしまったけれど、この点について書かれていたことがそれだけ嬉しかったというか気持ちがスッとしたというか…。
ホラー小説の書き方も解説してあってなるほどなぁと。
ただ怖いシーンだけバンバンだせばいいってもんでもないんだなぁ。
このへんの話は、これから小説を書いていきたいと思ってる人にはそれがホラーじゃなくても役に立つようなことが多そう。
ホラー映画、小説についてもいろいろと例に出して書かれていたのでみてみたくなった。
ホラー映画わりと苦手なのにそう思えるっていうのはやっぱり紹介や説明の仕方がうまいんだろうなぁと。 -
こわい。この本に直接的にホラーのことは書いてないのにこわかった。
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恐怖について、アカデミック?に考察してみたのが本書。
著者の小説が大好きで大体の作品を読んでいる。作品を生み出す中で使った手法についても語られているし、映画、本など恐怖を題材にした作品の解説もありとても興味深く拝見させて頂いた。
平山さんの最近の作品『ダイナー』でも、あたかも読者である自分が、登場人物が遭遇してしまう暴力の嵐を受けているかの如く感じてしまう。そのへんのテクニックについても触れられている。
自分自身、怖いことは嫌いだし、お化け屋敷も絶対に入らない。それでも、恐怖を感じる小説を読み始める自分がいる。そのへんの心理については、後半の精神科医の春日武彦さんとの対談で、意見交換されている。 -
独創的なホラー小説を書き続けてきた作家・平山夢明(ちなみに、「夢明」といういかにもペンネームっぽい名前は、本名だそうだ)が、「人間にとって恐怖とは何か?」――恐怖や不安の心理メカニズムとはどのようなものかを、突きつめて考えた本。
平山の小説以外の著作には、時々ひどい手抜きのものがある。が、本書はとてもよくできた面白い本だった。
なにしろ、作家として「怖い小説を書くための作法」を考えつづけてきた「恐怖書きのプロ」だから、恐怖についての考察は自家薬籠中の物なのだ。
第一章「恐怖の本質」は、哲学者ベルクソンが「笑い」の本質を探求した名著『笑い』に匹敵する……と言ったらさすがにホメすぎになるが、少なくとも部分的には『笑い』を彷彿とさせる鋭い考察がある。
たとえば平山は、恐怖と笑いは地続きだ、という。
〝バナナの皮で滑って転ぶという笑いは、転倒した人が頭から血を流した瞬間から恐怖に変わるように、恐怖と笑いは薄皮一枚の差なんですね。
これらふたつの関連性は、学術的にも研究されています。オランダの動物行動学者であるヤン・ファンホーフは、霊長類が恐怖を感じたときに見せる「グリマス」と呼ばれる表情が、人間の微笑みの起源ではないかとの仮説を提唱しています。〟
平山はつづけて、「エロスと恐怖というのは表裏一体」だという。
男性しか出演しないホラー映画が皆無に等しいのはそのためで、命を産み育む性である女性を死から守ることが、ホラー映画の基本線となるのだ、と……。なるほどなるほど。
〝だから、ホラー映画ではカップルがいちゃついたり、ヒロインと一夜の契りを交わす場面がよく出てくるんです。あれは、これから起きる「生か死か」をいっそう際立たせるための、生命についての意味を強調させるための装置なんですね。〟
このように、「小説でブッ飛んだバカなことばかり書いている平山だが、意外に深いこと考えてるんだな」(失礼!)と思わせる一節が随所にある。
また、第3章「なぜ恐怖はエンタメになりうるのか」は、ホラー映画に限らない「映画の中の恐怖」を論じた秀逸な映画論になっている。
さらに、第4章「ホラー小説を解読する」は、第一線のホラー作家である平山が、ホラー小説の書き方の極意を明かした章としても読める。
巻末には、これまでも対談本を出している精神科医・春日武彦との、「恐怖の構造」をめぐる対談を収録。この対談もノリノリで面白い。 -
他人を驚かせることが好きだ。もちろん賞賛をもらうためのものではなく、怖さを与える意味で、だけど。
じゃあ、怖さってなんだろうか?って考えたときに、すぐに思い浮かぶのが、幽霊などの非現実の怖さと、人間の心の闇みたいな、現実的怖さ。
後者の方が苦手で、だから前者の方で他人を怖がらせる。
この本によると、ホラー小説を書くときに作者が表現するのは、自分にとっての怖いもの。読んだ後どう感じるか、作者からしてみれば、”どう感じさせるか”。
それがホラー小説の醍醐味だそうだ。
なんだかシステムのバックドアを見たような、恐怖小説の核心に触れた気がした。 -
面白くって一気読み!
恐怖とは何か、不安とは何か、何と怖いと思うのか、なぜ恐怖はエンタメになりうるのか…そうそうそうだよね、と思いながら読む。映画やスティーヴン・キングについての項や、春日武彦との対談も面白かった。 -
恐怖を求める心理の説明書。+制作側へのアドバイス本。
色んな作品が代表作として出てくるが、「エクソシスト」「羊たちの沈黙」狂人による恐怖の格上げ!やっぱスゴイ。
筆者の「川崎大師事件」…周りに迷惑…本人無事だし。笑って話せる筆者に恐怖。