おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344985681

感想・レビュー・書評

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  • ユニクロがなぜ受けるのかを語りながら、戦後ファッションの流れ、服飾業界の流れが簡単明解に理解できる。

    この本を読んで、なるほど、ユニクロの狙いは、世の中の流れと絶妙にあっているんだなとしみじみ感じました。

    なぜ、今ユニクロが全盛なのか。
    少し前は、ユニバレを気にしていた時代もあったが、いまやどのファッション雑誌も「ユニクロでいいんじゃない」となっている。

    本書にもあるように、ファッションに対して求めるものが変わっているから
    「服が差異化の道具ではなく、共感の道具へと変わったことを示している。服を着ることで差異化するのではなく、お互いに共感したい。共感されたい。つながりたい。」

    SNS時代になり、他人と差をつけるというよりは、共感される、つながるということが重点がおかれている。

    その流で自分だけ特別な服を着て街に繰り出すという80年代DCブランド的な考え方ではなく、あえて差異を出さないシンプルな服装(ノームコアのような)がおしゃれという時代になっている。

    シンプルな邪魔しない服。
    それなりにデザインされていてシンプルで価格もお手頃。
    ファストファッションは高いお金を払わなくても、それなりに小奇麗な恰好ができるように底上げした。

    そして、ライフスタイルや暮らし方などの方にお金をかけることにシフトしてきている。

    ファッション、流行はかつて、中央(パリコレなどのファッションの源)から発信され、末端の色々な地域が少し遅れて追いつくというメカニズムを持っていた。その仕組みによりつくられた流行は毎年変わり、服が売れ、ファッション業界が成り立っていた。

    SNS時代はボトムアップの時代。
    上記のような風上~風下のようなウォーターフォール的な流行がない時代に突入してきている。

    その流れは社会の流れとも康応していいるし、なるべくしてなっているのだな。

  • 今や『日本の国民服』とまで形容されるまでに成長・台頭したユニクロ。ジルサンダーをはじめ世界的有名なデザイナーとのコラボ。揺るぎのない意思証明と向かうべき方向を指し示した『Life Wear』というコンセプトの樹立。松浦弥太郎氏を起用したブランディング。社長の柳井氏は母校早大に12億円を寄付し村上春樹ライブラリーを造るなど…まだまだ我が社は発展途上にある…と言わんばかりにあの手この手の搦手をもって、鋭意進化中のユニクロ。

    本書はファッションへの関心が暮らしへと向かい、かつてオシャレとは競い合うものが差異化のないシンプルなオシャレへと大きくシフトする中、これまでユニクロが商品を通じて発信してきた様々なメッセージに紐付けをしながら、ファッショントレンドの変遷と現在地を考察した一冊。

    確かに明らかに服への関心が低下している。90年代半ばぐらいまではファッション誌はオシャレグランプリ特集をするなど、『ファッションは競うもの』として扱った。

    ところが、今やそんなに頑張らなくていいのよ…的存在になり、『毎日決まって同じ服を着るのがオシャレ』とまで言われるようになった。TPOを考え、毎日着て行く服を選んだり、コーディネートするのを酔狂な目で見られるのも近いと見る。

    それをスティーブジョブズの影響?って思うのは偏った見方だけど、女性のファッションがパンツスタイルにスニーカーといったメンズライクな服装が普通になり、〈ワンピース・スカート・ハイヒール〉という女性のファッションアイコンだった時代は遥か彼方に去り、男女関係なく黒・紺・茶・グレーといったシックな色が定着し、服選びの基準が『機能的で快適』が最優先される時代。

    ファッションは世相を反映する。デフレ経済下の低成長の沼に入りこんだ日本は共働き夫婦の急増、非正規雇用者が増大し、生活から『ゆとり』が失われ日々暮らしていくのが精一杯となると、たまの贅沢は食や旅に投下され、必然的に衣食住の『衣』が削られる。

    そこに追い討ちをかけるコロナ禍。青山がパジャマスーツを売り出すのも頷ける。そんな逼塞状態の中で『衣』のセーフティネットとしてユニクロが幅を利かす。

    ベーシックなデザイン。低価格ながらカラーバリエーションは豊富。機能性も高く、安かろう悪かろうの価値基準を覆し、耐用年数はMUJIやGAPをはるかに凌ぐ。

    かつて『ユニばれ』『ユニ被り』と揶揄されたのが『ユニクロでいいんじゃない、ユニクロいいよね』と評価軸はアゲアゲ。例えば〈UNIQLO・GUのバズりアイテムで作る大人コーデ〉といった特集が多くの雑誌で組まれるほどに。

    … と書きつつも、ユニクロのカラー展開は好きじゃない。くすんだ色が多い。その顕著な例がネルシャツ。1枚で着るにはかなりファッション上級者じゃない限り野暮ったくなり、たちまちにしてtheおじさんファッションが出来上がる。防止策はセーターの襟元からちょびっとのぞかせ、全部をあきらかにしないチラリズムにすると、街角でバッタリの『ユニクロ被り』を防げる。

    私見はさておき、時代もユニクロを後押し。モノに執着しないミニマリズムや断捨離はしっかり根付き〈なるべくシンプルに、無駄を省いて生活を愉しむ〉というベクトルを作った。

    かつてハイブランドの服やバッグを身につけ、エステに足繁く通っていた方が、『オーガニック』のフレーズの前に門前市を成し、〈みずてん〉でシャンプーや野菜を買い、服はフェアトレードの服、エシカルファッションを希求。個性と虚栄を脱ぎ捨て、関心はライフスタイルの充実へ。

    この価値観の激変にはデジャブを覚える。70年代、戦後の高度成長を支えたモーレツ(猛烈)主義をそろそろ反省し、人間らしく生きていこうというメッセージをCMに載せた〈モーレツからビューティフル〉。それと同様の匂い。

    〈身体の外側の飾るもの〉から〈内側を作る健康と栄養〉の前には、虚栄と消費は老兵の手柄話になりさがり、ただただ消え去るのみなのか…。

    小5の頃、姉のVANのボタンダウンシャツを見て
    世の中にこんな格好良いシャツがあるんだと衝撃を受けて以来、丸坊主の中学生なのにMENS CLUBを熟読、色気づく高校生の頃はPOPEYEでアメカジを知り、大学生になるとDCブランド求めてバーゲンの長蛇の列に並び、バブル期はローンまで組んでハイブランドのスーツを買うといった、次から次に押し寄せるファッションウェーブの煽りを受けた者のひとりとして、昨今のファッションの地盤沈下を目の当たりにし、『今は昔』のファッション隆盛の往時の思い出が湧き出し、懐メロ気分に浸れた読書タイムとなった。

  • ユニクロが最近買う服で多くなって購入。
    たしかに今服はステータスではないのかもしれない。
    しかし、全く同じ服を着るというのは好きではない。

  • 服に対する価値観が30年でどう変わったのか、ユニクロを通してわかりやすく考察してある。

  • 少し自分の求めていた内容(答え?)と異なっていたのでやや残念でした。

    若い頃はsnidel系ばかり好んでいたのが、今は世の中の流行りなのか自分の変化なのかカジュアルなものが可愛いと感じ、ウインドウショッピングをしてもあんまりときめかないな…と思ったのがこれ可愛い!と心躍ったのがユニクロだったので、なぜ…?と思いこの本を手に取ることにしました。

    ファッション雑誌の表紙のコピーの変遷を細かく挙げている箇所は凄いなと思いましたし熱心に追っているんだなと感じましたが、もう2010年代からファッション雑誌は流行の先駆けではないのではと思っています。
    SNSが台頭して、さらにSNSはその種類も増えた。
    ただいくら自分がどんなものが着たいかと思っても結局は作って(売って)もらわなければ手に取れないので結局のところはアパレルブランド側の供給によるのか…?

    エシカルに触れられていますが、ファッション業界の、もうまんまの言葉になりますがファッションエコには辟易とした気分です。
    聞こえのいい単語をキャッチーに取り組んで、あたかもエシカルの雰囲気を出していますがその実は在庫を抱えたり工場の低賃金労働などは改善されていない気がします(気がします程度で申し訳ないです)

    本の中でエコファーに触れられていますが、エコファーが生分解できないという問題を繊研で見ました。(https://senken.co.jp/posts/sustainable-textile-8)

    地球に優しくないのに、使い勝手がいい、イメージが良いなどで使用を推し進めても、プラスチックの問題のように取り返しがつかないことにならないか懸念が残ります。
    ファッションについて詳しく語る人であればそこまで踏み込んでほしいと思いました。ファッションに詳しいことがファッションではないのならば。

    ユニバレという言葉は聞いたことがなかったです。
    着飾るものの選択が他人との差別化を意図しているからそのような言葉が出たのかなと推測。
    あのブランドを持ってるから良い、がエシカルに移行したのは今までの虚栄に比べたら良いかもしれませんが見せかけのエシカルに酔って大事な問題を見落とさないようにしなくてはと思いました。

  • 暮らしを充実させる。
    確かに、感じていたことが言葉になっていたので、すごく納得しました。
    何に価値をおいて生活するか、時代とともに変化するのですね。

    • ナオさん
      暮らしを充実させる。
      確かに、感じていたことが言葉になっていたので納得しました。
      何に価値をおいて生活するか、時代とともに変化するのですね。
      暮らしを充実させる。
      確かに、感じていたことが言葉になっていたので納得しました。
      何に価値をおいて生活するか、時代とともに変化するのですね。
      2020/01/01
  •  確かにファッション誌でユニクロやGU見かけることが増えたなぁと。
     服はその人を形作るのものだけれど、服にそこまでコストかけてもなぁという気持ちがある。ファッション誌に載っている価格帯の服をそろえることは現実的ではない。おしゃれ嫌いというより、人生の選択肢が増え、おしゃれにかける費用が相対的に下がったのでは?とも思う。
     スマホによって、たばこを吸う人やお酒を飲む人が減ったように。
     ほしいもの、必要なものに多くのお金をさきたいものよ。

  • 日本のファッションと絡めた時代の流れがよく分かります。タイトルも良き

    私もおしゃれ嫌いだし、大学生活を機にユニクロ生活しようかしら‪ ·͜·

  • 私がぼんやりと思っていたレベルのことが言語化されており、非常にわかりやすかった!
    タイトルも良いです。ぜひ最後まで読んで。

  • 「ユニクロ」という衣料のブランドが誕生して20年以上になる。フリースやヒートテックなどが大ヒットし、ユニクロは「国民服」と呼ばれるほど人気を博す。だが、かつては安くて機能的だが、「おしゃれ」とは言いがたかった。それが今ではファッション誌に特集されるようにもなっている。なぜだろう?(e-honより)

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著者プロフィール

甲南女子大学教授。専門はファッション文化論、女子学。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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