敗軍の名将 インパール・沖縄・特攻 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344986350

作品紹介・あらすじ

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感想・レビュー・書評

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  • インパール現地旅行記は面白かった。
    名将というには小粒すぎる、、、。

  • 失敗の本質などで語られることは耳に新しくはないですが、その中で現場判断で成果を上げた人物に注目したものと認識しました。日本は現場判断で頑張るという伝統は昔からあるんだなと。
    インパールへの旅行記は最後まで読むと少し浮いてますが面白く読めました。これだけで単独の本を書いてもらいたいくらいでした。
    中心の話題とは外れますが、軍隊について詳しい人の語り口は似るものだなと最近は。それについては全く悪い意味ではなく、学問や知識は乗り移るんだなとしみじみ感じます。

  • 太平洋戦争は圧倒的な国力を誇るアメリカ相手に無謀とも言える闘いを挑み、3年以上に亘って繰り広げられ、最終的には2発の原子爆弾投下後に無条件降伏という形で終わった。戦後数々の戦記物や評論が書籍となり、中には戦争自体を正当化するものや、こうすれば勝てたという様な奇想天外なものまで内容は様々だ。大方、山本五十六の言う最初の半年ぐらいは何とかなるだろうが、後のことは解らない、という情勢判断が(それも奇襲前提)当たっているし、それでも尚埋まるはずの無い圧倒的な工業生産力・技術力を考えれば、やはり無謀としか見えない。
    緒戦のマレー・ハワイの二方面の快進撃だけは日本が勝っていたのも事実で、その後は徐々にアメリカに押されていく。中でも、海軍が空母四隻を失うミッドウェー、陸軍が戦力を逐次投入して失陥したガダルカナルの戦いは戦争全体を見渡して、日米の戦局転換点になったと言われる重要な戦いだ。元々圧倒的な戦力差で開始された戦争であるから、順当になったと言えなくはないが。
    以降は散発的に反撃が行われるものの、兵力と最新兵器にモノを言わせる米軍に殆どなす術なく押し込まれていくといった流れだ。その様な連戦連敗の負け戦が続く中で、幾つかの戦いに於いては「転んでもタダでは起きない」様な戦いがあり、それを成し遂げた名指揮官達の活躍ぶりにフォーカスするのが本書の内容だ。名将として4名を挙げる。インパールの佐藤幸徳中将と宮崎繁少将、沖縄戦の高級参謀八原博通大佐、航空特攻の無謀さを訴え最後まで部隊を率いて戦い続けた美濃部 正少佐。単に歴史書物を追うだけでなく、実際の日本兵が直面した現場に赴いて肌で実感してくるというアクティヴな筆者のスタイルが面白い。
    最初のインパールは補給の無い前線から命令違反になる事を恐れず撤退し、高木俊朗の「抗命」にもその英断が描かれる佐藤中将。再三の約束にも関わらず補給を送ってこない牟田口に対して、前線の兵士の危機的な状況と全滅を回避すべく撤退を決断した司令官は、当時命令違反=死刑を恐れず決断した勇将として戦後描かれる。実際は初めから補給線を完全に無視した作戦ながらもインパールまであと少しのコヒマを占領するなど、指揮官としての評価は高く描かれる。さらにその撤退戦においても戦国軍師真っ青の巧みな謀計で追いすがる敵を撹乱しながら殿の務めを見事に果たす宮崎少将。私も以前に宮崎少将を題材にした書籍を読んだが、孔明さながらの敵を欺く戦法にはワクワクしたのを覚えている。
    沖縄戦の八原博通大佐もその頭脳明晰ぶりと戦局を冷静に見極める眼について、本人を題材とした書籍で知っていたものの、大本営との作戦構想の違いから何度も作戦変更を余儀なくされる。その様な中でも残存兵力を用いて米国に多大な出血と本土決戦までの時間を作るという大極的な戦略目標を達成していく。八原については沖縄の犠牲者を徒に増やしたとの評価もあるが、あくまで軍人としてみれば名将と呼ぶに十分な働きをする。
    最後は美濃部少佐であるが、有名な言葉「あなた方(軍首脳部)が数千機の練習機で闘いを挑んできても、美濃部が一機の零戦で撃ち落とす」で、最後まで自身の部隊から特攻を出さなかった事で有名だ。当時扱いに困り余っていた彗星戦闘機とその管理方法から偽装工作まであり物を全て駆使して戦い続けた名将は、戦後航空自衛隊の空将まで上り詰めた。
    いずれの指揮官・参謀達にも共通するのは、負け戦という相手方に攻撃主導権のある状況、限られた武器と傷ついた兵士たちを守りながら闘うという制限された状況、限りある物資の中での戦闘を指揮しながら成果を挙げたという事だ。現代社会に於いても会社の状況や新型コロナなどあらゆる制約を受けながら前進する我々現代人にも参考になる闘い方だ。予算がないから出来ないというビジネスパーソン、コロナでお客さんが来ないと店を閉めて諦めてしまう飲食店、国家戦略にしても全て好条件のもとで物事を進められるなんて稀だ。むしろ限られた資源でいかに工夫するか、いかに最大限の成果を出せるかで人の評価は決まる。生と死を分ける食べ物も武器も何もない最も過酷で厳しい条件で、かつ生きて帰れるとは思わない死地に赴いた1人の人間として、彼らがどの様に創意工夫し生き延び、戦後を生き抜いたか、是非本書を手に取り生き方に活かしてほしい。

  • 敗軍の戦とは何か。

  • 確かに毎年8月の終戦記念日には、先の大東亜戦争の特設番組が組まれて、戦争の悲惨さ、平和の尊さが説かれるが、なんで戦争になってしまったのか、なんで破れることになってしまったのか、は言及がない。結果日本は破れたけど、それぞれの持ち場で最善を尽くした名将たちに触れられる1冊でよかった!

  • 日本人として少し読むことが辛くなる部分が多いが、これが現実なんだろう。今の日本と繋がる部分も多くなり、これこそが歴史を学ぶ意味でもある。

    ただ歴史を現代と強引に結びつけている部分もありその点は異和感がある(インパール作戦と東京オリンピックなど)

  • 戦争を知らない世代の書いた戦史として屈指の出来栄え。実際に戦地を訪れるという信念も素晴らしい。

    何より筆者の年齢に驚かされた。耳学問で良くぞここまでとの感。一方的な日本軍の害悪論でなく、真摯に戦った指揮官を描いている。

    インパール作戦の佐藤幸徳、宮崎繁三郎。沖縄決戦の八原博通、特攻拒否の美濃部正。

    筆者で何より評価したいのは実際に戦地を訪れる姿勢。『失敗の本質』を座右の書に挙げる政治家は多いが実際にインパールを訪問する人はいないだろう。政治家に限らずガダルカナル硫黄島のような激戦地を訪れる作家はいても、インパールを訪れた作家は寡聞にして筆者でしかしらない。現代の交通機関の発達を持ってしても僻地であるという。本書は第一部インパールだけでも屈指のものであるといえる。

    また本書はコラムが充実しており戦争を知らない世代でも歴史的背景を知ることができる。

    ただし最近の戦史全般に言えることだが、何かと現代に結びつける姿勢は個人的にはいただけない。それはあくまで読者が判断するものであると思う。
    その部分を割り引いても良くできた作品です。

  • 東2法経図・6F開架:B1/11/633/K

  • p134 すでにフィリピンは1935年の段階でアメリカ議会が10年後の独立を約束していた

    p155 一度決定したことは、たとえどんな情勢の変化があっても徹頭徹尾貫き、無謀であっても必ず実行する 日本社会におけるこの組織の悪弊が、東京五輪2020大会においては至るところに見られた

    p213 限られた条件の中、手持ちの資源だけで、かつ圧倒的に自分が劣勢の場合、精神論に基づく積極的な攻撃こそが、最もやっていけない愚策であることを、沖縄戦が物語っている。攻撃は最大の防御なりなどという掛け声は、自分が有利なときにのみ効果がある手法であって、自らが不利なときは、じっと長期に腰をすえて合理的で無駄のない消極姿勢を探ることが戦法の常道である。これはまた現在の日本の国力が漸減状態であることを考える時、攻めの農業とか世界に打って出るクールジャパンなどという積極姿勢が官から提出され乱舞しているが、それらがことごとく失敗に終わっていることに鑑み、積極的という美辞麗句がいかに愚策であるかを知るよい教訓になろう

    p219 沖縄に軍政を敷いた米軍は、日本円の代わりにB円と呼ばれる軍票を流通させた。1ドル120円 B円は日本円に対して3倍の購買力を持つことを意味する 円高による輸入の恩恵
    1958年 B円は廃止

    p233 特攻を拒否した芙蓉部隊 美濃部正少佐

    p247 凡の指揮官は、こういった今ある手持ちの資源を最大限に生かして創意工夫するという当たり前のことを怠った

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著者プロフィール

古谷経衡
1982年札幌市生まれ。作家・評論家。立命館大学文学部史学科(日本史)卒業。(社)令和政治社会問題研究所所長。(社)日本ペンクラブ正会員。NPO法人江東映像文化振興事業団理事長。インターネットとネット保守、若者論、社会、政治、サブカルチャーなど幅広いテーマで執筆評論活動を行う一方、TOKYO FMやRKBラジオで番組コメンテイターも担当。『左翼も右翼もウソばかり』『日本を蝕む「極論」の正体』(ともに新潮新書)、『毒親と絶縁する』(集英社新書)、 『敗軍の名将』(幻冬舎新書)など著書多数。

「2023年 『シニア右翼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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