国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344986435

作品紹介・あらすじ

他の先進国が消費を拡大する中、なぜ日本だけが沈み続けるのか――原因は、緊縮財政でも消費増税でもなく「日本人の性格」だった。高度成長からバブル期は、人口増加、輸出主導で我が世の春を謳歌した。が、自己陶酔した「優しさ」「思いやり」「絆」の像とは裏腹に、じつは猜疑心が強く、他人の足を引っ張るという隠れた国民の本性が、「失われた30年」で明らかになった。後ろ向きな心持ちでの景気向上はあり得ない。本書は日本人の消費マインドが萎縮する現状を分析、数多のデータから景気浮揚できない理由を指摘し、解決策を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 「ご心配とご迷惑を」

    日本人は、自分に迷惑がかかるのを非常に嫌う傾向がある感じがする。
    その根底には強い不安感があるように思えるのだが、本書ではあまり原因については掘り下げられてはいなかった。でも実感としては正しいと思う。

    将来が不安→蓄財に励む→物が売れない→景気が冷え込む→将来が不安…
    これは企業にも云える模様で、内部留保をひたすら溜め込んでいるようだ。経営者にしてみればコロナの渦中にあって、それ見たことかというところなのかも知れないが。

    自分は安倍元総理が大変嫌いだが、アベノミクスについては良かったとは思っている。ただその最中に増税をしてしまったのは悪手だったと思う。増税を回避するために安倍さんも苦心したようではあるが。かくして現在も絶賛デフレ中である。

    官僚には「楽して金を稼いではいけない」というこれまたある意味ネガティブなマインドがある気がする。だから不景気の時に財政再建に果敢に取り組んだりするのかもしれない。

    日本人がなぜ意地悪なのかについての分析がないのと同様、ではどうすれば良いのかについてもあまり掘り下げられてはいない印象だった。不況が国民性に依るものならば一朝一夕でどうにかなるものではないだろうが、せめて自分の方から寛容で良識ある行動ができればと思った。という着地点。
    その意味で子を成せたのは幸運だったかな。

  • 著者は、日本社会に残る前近代的なムラ社会的考え方が、日本が輸出主導型経済から消費主導型経済へ移行するのを阻んできたと主張する。
    日本の社会は自由度が低くて不寛容、上下関係に厳しく、それがイノベーションや消費拡大を阻んでいる、そして、空気ではなくデータに基づく合理的な判断や、個人と企業の自由の保障が重要と結論づけている。
    生活実感としても納得できる部分は多いが、日本の消費低迷は人口減少が原因になってる部分も大きいと思われるところ、そこに一切触れていないのは残念。
    こうなると、政府がやるべきことは財政出動でも金融政策でもなく、国民の意識改革ということになるが、政府のトップは上下関係の厳しい社会の中でいい思いをしている人たちなので、一番期待できそうにない。下から変えていくしかないが、長い時間がかかりそうだ。

    小泉構造改革やアベノミクスなど、経済成長の説明は素人にもわかりやすく、勉強になった。

  • ■ Before(本の選定理由)
    読者を煽るタイトル。
    でも直感的に、その通りだよなぁと感じた。

    ■ 気づき
    元々村社会なり法以外に組織のルールを委ねていた日本人は、明治以降に制度面だけ近代化したが内面は未成熟、という論旨。現象はそうなのかもしれない。
    国際比較調査の実例を沢山上げてくれていて、いづれも他人に不寛容で自分の成功も運の要素が強く、いわゆる「無理ゲー」だと感じている人が多いのだろうと思った。

    ■ Todo
    別の本:GIVE&TAKEの受け売りだが、私はテイカー(人から受取ることを重視)ではなく、ギバー(人に与えることを重視)になりたいし、そう行動していく。

  • 思わず苦笑してしまうタイトルですが、加谷さんの本なので読んでみることに。立派なビジネス書です。内容的にはよく言われている日本人独特の精神論など、特に目新しいものはないですが、日本社会の病理について振り返るのにいい書籍だと思います。

  •  タイトルに惹かれて、というか驚いて購入。近代化を果たせず前近代的ムラ社会のままであることが、経済成長を阻害している要因であることをデータで分析されている。和を重んじる日本社会はゲマインシャフトという概念に当てはまり、情緒的・感情的に個人の意思が決定されたり、ルールや契約ではなく地縁・血縁・宗教で関係性を構築するなど、特徴を列記されると頷けるものばかり。
     前職でも人の足を引っ張ることに必死になっている人がいたり、長く勤めていることだけが重視され実際の貢献度は二の次だったりすることがあった。40代・50代?で考え方は固定されるとよく聞くのに、マインドを変えるのは大変過ぎるのでは、と考えてしまう自分も凝り固まっているんだろう。

  • 読み易くしかも、頷ける点が多かった。
    底意地の悪さ、と言う題名がそぐわない様な気がしたが、マジ共感する箇所が多くて、読んで良かった。

  • まだFaxやフロッピーデイスクを使ってるお役所仕事に代表されるように日本人の仕事に対する意識は低い!生産性が悪い訳だ!

    国民のマインドが前近代的だから消費が増えないという指摘には、大いに納得した!

  • ●個人消費と言うのは前向きなマインドがないと拡大しません。日本人の不寛容で抑圧的な風潮が個人消費を抑制している。
    ●戦後の日本がなぜ高度成長を実現できたのか。その理由は工業製品の輸出による経済成長と言う特殊要因が働いたからです。
    自国の消費以上に製品を生産することができた。非常にラッキーだった。
    ●多くの人が誤解していますが、経済学では消費を拡大する根本的な方策を明らかにされていません。
    ●金融システムが十分に発達している現代、むやみに代金の支払いサイトを引き伸ばす合理性はありません。すべての企業が素早く決済すれば、各社は資金繰りに余分な手間をかける必要がなくなり、その分本業に邁進できる。

  • これは少し耳の痛い話もあるけど、いい分析。データに基づく国際比較は腹落ちするし、この30年経済成長できなかったことも分析してる。やはり表面上でなく、「近代化」しないといけないんだろうな、日本人は。謙虚さを思い出して。いい1冊でした。

  • 消費主導型とする事が不可欠でありながら、消費を拡大させる学術が存在しないとなると、いま話題のベーシックインカムを導入した所で消費での景気拡大は見込めない。

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著者プロフィール

経済評論家。仙台市生まれ。1993年東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在、「ニューズウィーク(日本版本誌)」「現代ビジネス」など多くの媒体で連載を持つほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。著書に『新富裕層の研究』(祥伝社新書)、『戦争の値段』(祥伝社黄金文庫)、『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)など多数。

「2022年 『スタグフレーションーー生活を直撃する経済危機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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