宗教と不条理 信仰心はなぜ暴走するのか (幻冬舎新書 717)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344987197

感想・レビュー・書評

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  • 2人の識者による対談集で、雑誌記事を読むような感覚で、ドンドン読み進めることが出来る。少し難解かもしれない話題も多く取上げられているように思ったが、それが判り易い。興味深く読了した。
    「宗教」というようなことに話題が及ぶと「無宗教だから」と敢えて断るような例が多く見受けられるように思う。が、それは所謂“宗教法人”というようなモノに関与していない、社寺や教会というような宗教施設での催事や諸活動に積極的に関与しているのでもないという程度のことなのではなかろうか?本当に「無宗教」というのは、何か少し違うのではなかろうか?明確に「〇〇の宗教」というモノとの関連性を意識せずとも、根を辿ると宗教に行き着く場合も在るような考え方が社会に或る程度は行渡っていて、多くの人達はその影響を免れることはし難いのではないだろうか?
    そういう程度に思っているので、本書の「宗教」という話題を持って来ている辺りに強く興味を抱いたのだ。そして、そうやって本書に出会って善かったと思う。
    ローマでの様々な事柄等の歴史を広く論じている本村凌二と、神学を基礎としながらソ連やロシアでの経験も重ねて国際事情にも明るい佐藤優という2人の識者が対談している。各々の得意な話題を引きながら、話題はドンドン拡がり、掘り下げられていくのが本書だ。
    結局、長い人類の歴史、思想の変遷のようなモノについて「宗教」というキーワードで俯瞰しながら考え、今日の社会や国際情勢を見詰めてみようとするような内容になっていたと思う。
    最近のロシア・ウクライナ戦争に至る迄、近現代の様々な戦いに「宗教」の要素が入り込んでいるという指摘は示唆に富んでいた。そして「宗教」という存在の文化史的変遷というようなことも示されて興味深かった。
    本文中、「宗教」に纏わる活動に在っては、もろもろの社会的な活動とは少し異なる役目を演じる場合も在るという話題が在った。その中で、佐藤優は「宗教」に纏わる活動に限らず、「言わなければならないことを言うために、病気等になっても“生かされている”のだと思う」としていた。この箇所が記憶に残った。「言わなければならないこと」として挙げていたのは、ロシア・ウクライナ戦争は早く停止すべきだということ、人の無い面を揶揄するかのような世論形成や個々人の内面に公権力が踏み込むかのような振舞いを控えるべきであるということだった。
    内心を語るようなことを強要されないのが「信教の自由」、「思想信条の自由」ということであろうと本書では説いている。そういう中で、色々な施策が積み重ねられた経過が歴史を創って来たというようなことにも、本書を通じて思い至った。
    個人的には、佐藤優の説く「生かされている」に少し心動いた。明確に「〇〇の宗教」を如何こうするという程でもなくとも、或る時に漫然と、何らかの力か意志かで「自身が生かされている?」と微かに感じるようなことが、人にとっての「宗教」というようなモノなのではないだろうか?感覚的で名状し難い感じかもしれない。それらに色々な形を与えようと、長きに亘って色々な人達が論じているのが、宗教分野の様々な論や、意識するか意識しないかを別にそれらを背景に持つような哲学等なのではなかろうか?
    非常に大きなテーマについて、2人の識者に導かれながら、時間と空間を超える旅をして、そして現代を考えるという感じで、素晴らしい読書体験が出来たと思う。御薦めしたい一冊だ。

  • 2024.5.2
    同志社大学神学部卒の佐藤優氏が古代ローマ史の専門家と宗教をテーマに対談するということなので、期待して読みましたが、内容は散漫で議論も噛み合っておらず、残念でした。

  • p57 イギリスはフセインマクマホン協定によって大戦後、パレスチナ地域にアラブ人の独立国家建設を約束する一方で、ユダヤ人にもバルフォア宣言で国家建設を認めていました。さらにはその裏でサイクス・ピコ協定によってフランス都の間で、この一帯を分割統治する秘密協定も結ぶという、同時に実現し得ない3つの約束をしていたのです。

    アラブ人の独立を信じて尽力しながらも、イギリスの三枚舌外交を知って苦悩するTロレンスを主人公にした映画アラビアのロレンスを見るように、誰もがこの戦略を支持していたのではありません。ですが、大戦中の科学兵kにしろ、三枚舌外交にしろ、悲劇が訪れることが明白なのに、人々はその選択をとってしまいました。

    p66ギリシャのデルフォイの神託は汝自身を知れという言葉で有名ですが、もう一つわたしの好きな言葉あります。ギリシャ語ではメーデンアガン、物事には中庸をわきまえろという神託です。

    p102 ロシア・ウクライナ戦争 正教とユニエイト(京都へ東方典礼カトリック教会)の争い

    p104 国家神道が日本人にとっての慣習のようなもの

    p106 世界宗教となるには正典(キャノン)の存在がポイント

    p121 世界宗教になっていくには、それぞれの地域で土着化する必要がある

    p170 悪魔 サタン、ルシファー、メフィストフェレス

    p221 日本的な霊性をいちばんつよく感じるのは奈良の吉野 廃仏毀釈、神仏分離を真面目にやらなかった

    p225  大きな声で主張する人間ほど、何かあったときに真っ先に逃げ出す。そのくせふだんはそんな素振りをみせないから、周りにいる人間はたまったものではない。極端な意見を言っているのにも関わらず、いざ何かおこったときに責任をとらずにその場を放棄してしまうんです。

  • 背景、歴史があって奥が深いなと思いました。また日本人は無宗教というわけでもないんだなということもわかりました。一部の新興宗教等によって宗教という言葉のイメージが歪められているように思います。それは信じることの力がものすごく強いからだろうな。

  • ウクライナ戦争について、一般的に民主主義対権威主義の戦いだと言われているが、実は西欧世俗キリスト教対ロシア正教という宗教戦争だという視点。
    西側の民主主義における“人権”は“神権”が変異したもの。つまり“人権”は実は西側の世俗化キリスト教の価値観。それを押し付けられたプーチンが西欧の同性愛やLGBTQをサタニズム(悪魔崇拝)だと言っているのがその表れの一つ。
    もともとはウクライナ東部にすむロシア系住民をネオナチから救うのが目的の戦争が、アメリカ、西欧が価値観戦争と位置付けたため宗教戦争になってきている。
    単に領土の取り合いなら妥協点も見出しやすいが、価値観戦争は双方が譲るのが難しい。
    この戦争の終わりが見えず、世界の行方が見えないという事が理解できた。

  • イスラム教の性とお酒の話はゾッとしますね。

  • 宗教に対する固定観念を再構築させてくれる一冊。対談形式でわかりやすく、深くはないが考えさせられる内容で、もっと宗教を学びたいと思わせてくれる。本書も佐藤氏の知の巨人ぶりが遺憾なく発揮されている。

  • 本書の本村氏と佐藤氏の共通の認識は、複雑な現代を読み解くためには近代的な知識ではなく、前近代的な知識をより活用していくべきだといわれている。それは「近代の限界」はある意味で「人知の限界」なのではないか、という観点から、人知を超えているものへのアプローチとして、宗教についての認識が、改めて必要ではないか、というような内容で展開されていく。非常に興味深く、面白かった。

  • いやー難しかったな
    ただ宗教が人間にどういう影響を与えているのか
    すこし理解ができた
    本文の最後あたり
    人間の弱さを理解していることが重要
    宗教的なものに触れていると人や社会に
    過剰な期待をしなくなるという一文が
    とても心に残った

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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