長寿大国日本と「下流老人」

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344994744

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  • 確かに書き出しから論じられている少子高齢化による高齢者の人口比率上昇それに伴う医療費の増額保険制度のシステムからくる相対的な高齢者の負担軽減という現状その行き詰まりによる今後の高齢者医療の自費負担分の増加ここまでは問題ないでも以降、実例を出して、高齢者の家計に医療費がどれだけ負担になっているか、その負担を軽減するために無駄な医療を受けるのは止めようということにはあまりにも無理がある。それまでの公的データの読み取りは間違っていないけれど、例に挙げられたA~Eそれぞれの家族を見てみるとA: この人の間違いは、自宅の売却予測の失敗が根原。だからマンションの購入に貯金をはたくハメになった。売却予測なんて、業者に依頼をちらつかせりゃあ、しっかり見積もりはよこす。それが当該マンションの予算の何割に当たるかを見ればいいだけ。それをしなかったわけだよね?加えて自分の年金と貯金残高をきちんとシミュレーションせずに有料老人ホームを選んでしまったのが第2のミス。ひょっとしたら子ども達からの援助を期待したのかもしれないけれど、それは従来の「親の恩」をちらつかせる保守的オヤジの方法論で、そんなんが通用しないのはもう常識。つまり、この人の家計破綻は「自分の読みと姿勢」が原因なのであって、妻の認知症に関する医療費なんかでは全然ない。B: この人の場合は息子がウツ~ひきこもりだったから。それにきちんと対応しなかったから、息子がネット負債を抱えるようになって、それを立替えざるを得なくなった。むしろ最初から息子の治療のために「医療費を支払って」さえいれば、障害者年金もらえたかもしれないし、トラブルも避けられた。自分の糖尿への出費が第一原因などでは全然ない。でしょ?C: この人だけが敢えていえば、本人の医療依存と過払いが生活の危機を招いていると言えるかも。でも各種の症状と治療に関しては、あくまでも文中は本人からの伝聞事項に過ぎないとも言える。単純に「不要」と言い切れるものなのかどうか。なのでp.124『多くの高齢者にとって~思わぬトラブルで出費を強いられるケースもよくあります。こうしたなか、医療費の負担が大きくなれば、生活が行き詰まり、下流老人へと転落する可能性は十分にあるのです』という文言がいかに歪んだ解釈かがわかると思う。地価の見積もり、家計のシミュレーション、子どもの長期化したうつ、このいずれも「思わぬトラブル」ではなく、もっと早く打つ手があったはずのことがらであり、仮にそれができなかったとしても、本人の医療費をそのために犠牲にすべき出費ではない(と、わたいは思う)。さて続くD: もともとが預金ゼロの下流老人なのだから、敢えてこの人を「医療費を払ったゆえの」転落組とするのは完全に変。彼女の「好きなことやって短命でもいい」という姿勢はもちろん一つの評価軸ではあるけれど、それはこの本の文脈「不要な医療費節減」及び、この節の後半で著者が心配しているような、社会保障を恥だと思って破綻する、という人々とは確実に次元を異にしている。彼女は最初から家計なんか二の次の生活をしているのだから、全く例として相応しくない。E: この人も預金ゼロ。最初から下流。なので対象外と言っていい。それに彼の場合は60代だから胃ろうは治療として必要なことだったのだろうと思うけれど、やはり同じ節で「年金目当てに生かされる」人とあたかも同列に語るかのような論の持って行き方は、はっきり言って「卑怯」だと思うぞ。そういうわけで、この本は勧めたいとは思わんのです、以上。

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著者プロフィール

2008年和歌山大学大学院システム工学研究科博士課程修了。
長野県短期大学生活科学科生活環境専攻助教。工学博士。

「2015年 『デザイン人間工学の基本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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