原発―1973年~1995年

著者 :
  • 三一書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784380962523

感想・レビュー・書評

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  • 日本における原発の労働者被曝についての問題を長い間取材してきた筆者による写真集です。ここに『安全でクリーンなエネルギー』と長い間喧伝されてきた原子力発電の本当の姿が記されていると僕は確信しています。

    僕は樋口健二さんのことをYoutubeの中で加藤登紀子の『原発ジプシー』という歌を聞いているときに関連動画として、彼の映像が右側にあって、それをクリックしたのがきっかけでした。あの歌に描かれていることは、本当のことだったんだなと、彼の話を聞いて知り、非常にショックを受けたことを覚えています。

    それで今回、この写真集を手に入れて読む機会があって、紹介することのできる運びとなりました。ここに写っているのは致死量の放射線が漂う原子炉の炉心部の中で、『特攻隊』や『人海戦術』として投入され、水蒸気の出す熱であえぎながら過酷な労働をし、被曝した原発労働者たちです。僕も正直な話、原発はすべてコンピューターによって制御されているものだとばかり思っていて、それがまさか現場の最先端では汚れた炉心部をウェスで文字どおり地をはいつくばって『除染』に当たっている作業員や、原発の『定期点検』で『半マスク』をしている貴重な写真がここに収録されております。

    都心で潤沢に電気を使うことができるのは、現場でこうして被曝しながら過酷な労働に従事している労働者がいる、という現実に言葉がありませんでした。そして、日本の原子力産業がまさにピラミッド型の『差別』によって構成されていることも、被写体になっている被曝した労働者の証言から明らかになっています。衝撃的な写真が多いので、あまりみんなに見てくれ、とは僕の口からは言うことはできませんが、この本は現在、絶版のようですので、ご興味のある方は図書館なり古本屋をめぐって入手されることをお勧めします。

    最近、著者の元には3.11以降週刊女性、女性セブンなどの女性誌からの取材がひっきりなしに来るらしく、そのことに驚いているのだそうです。以下にあの事件のショックが大きいということでしょうね…。

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著者プロフィール

1937年長野県富士見町松目生まれ。報道写真家。日本写真芸術専門学校副校長。日本写真家協会会員。世界核写真家ギルド会員。日本広告写真家協会学術会員。『増補新版 樋口健二報道写真集成 日本列島1966 ―2012』(こぶし書房、2012年)他、著書・写真集多数。2011年、第17回平和・協同ジャーナリスト基金大賞受賞。日本の最暗部を追いつづけるフォト・ジャーナリスト。

「2021年 『慟哭の日本戦後史――ある報道写真家の六十年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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