春は鉄までが匂った (現代教養文庫 1453 ベスト・ノンフィクション)

著者 :
  • 社会思想社
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784390114615

作品紹介・あらすじ

コンピュータ機能を持った工作機械の登場は工場現場の『M・E革命』といわれ、そのころ出現した産業用ロボットとの組み合わせによって、工場の無人化が急速に進むだろうと予想された。経験にもとづいた技術技能、熟練をよりどころにした労働集約型の生産形態である町工場は無くなるだろうとも予測された。十五年後のいま、バブル経済の破綻によってもたらされた変化はあるが、町工場は無くなりはしなかった。なぜ無くならなかったのか…。

感想・レビュー・書評

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  • 三浦しをんさんの書評「本屋さんでまちあわせ」の中で町工場で働く旋盤工を描くドキュメントと紹介されています。女性が読んで心をひかれるドキュメントとは?私自身もプレス加工に従事していることもあり興味をひかれ読んでみました。昭和50年代初頭が舞台でありNC旋盤も2世代前のものであるが「ものづくり」の根っこの部分は変わらず色褪せておらずひきこまれます。古関智弘さんの他の作品を読んでみたくなりました。

  • 1979年に刊行された、旋盤工である著者による町工場・職人エッセイ。
    NC旋盤への移行や、昔ながらの職人の生き様だとか、大企業の締め付けの話だとか、生き残る町工場の話だとか。
    その当時の話題なのだけど、実はキーワードを入れ替えれば現代でも同じようなことが繰り返されているように思う。
    そういう普遍性を感じさせるのは、文学志向の著者の力量なのかなとも思う。

  • この本を通して仕事に向き合う職人の生活やその矜持を垣間見ることができるような気がして、ページをめくって読み進めるのが楽しかったです。
    もともと1979年に書かれた文章ということですが、自分の手で機械を操る“職人”というイメージだけでなく、コンピュータとの共存が必要になってきている時期なのかと少し驚きました。
    今のNC工作機に紙テープなんてものはありませんが、今と変わらないところもあり勉強にも、仕事へのモチベーションUPにもなりました。

    汎用旋盤の経験を、自分の手で黒テープに打ち込み、机上でプログラムされたテープに勝ったと思った。紙テープの孔ぼこに、自分の声を吹き込んだ思いだった。(P34)

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著者プロフィール

1933年、東京生まれ。
都立大学附属工業高校卒業後、旋盤工として町工場に勤務する。
そのかたわら、執筆活動をつづけ、作品を発表する。
◎おもな著書
『大森界隈職人往来』(朝日新聞社、81年)--第8回日本ノンフィクション賞
『粋な旋盤工』(風媒社)、『春は鉄までが匂った』(晩聲社)、『羽田浦地図』(文芸春秋)ほか

「1985年 『鉄を削る 町工場の技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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