フランクル回想録―20世紀を生きて

  • 春秋社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393365199

作品紹介・あらすじ

愛する者の死にうちひしがれながらも、生きる意味を求めつづけたフランクル博士の90年。『夜と霧』『それでも人生にイエスと言う』では語られなかった自らの生涯をユーモアに包んで綴った唯一の自伝。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、著者が92歳で亡くなる数年前に、幼少期からを振り返った記録。

    著者が強制収容所の体験を描いた「夜と霧」は世界的に有名な一冊で、私も昔に読んだことがあるが、内容に加えて最後の写真集があまりに恐ろしすぎて、以後読もうという気がおこらない。

    著者はロゴセラピ―理論の創始者として、精神分析の大家としても有名である。

    本書の内容は平易で読みやすい。

    その思想的遍歴を語っているが、著者は15、6歳の頃、二つの基本的考えを抱いていたという。

    「まず第一に、そもそもわれわれが人生の意味を問うべきなのではなく、われわれ自身が問われているものであり、人生がわれわれに出した問いに答えなければならない。」

    「もう一つの基本的考えは、究極的な(人生の)意味がわれわれの理解力を超えていること、いや超えていなければならないということである。一言でいえば、私が”超意味”と呼んでいるものが問題なのである。……超意味に関しては、われわれはただそれを信じることしかできず、またそれを信じざるをえないのである。そして、たとえ無意識であっても、人は誰でもそれをとっくに信じているのである。」(p68-69)

    われわれは問うのではなく、問われる存在であり、応答責任があるという考え方は、滝沢克己の本に繰り返し出てくるテーマである。

    問うのではなく、問われる存在であるというのは、通常とはまったく逆の考え方である。
    だが、そのことがなんとなく頭で分かるのと、真に理解するのとでは大違いだ。

    同じく10代の頃、著者は、こんな経験をしたという。

    「避暑でエファーディングに出かけられるようになって、蒸気船でドナウ川を遡っていたある日、真夜中にデッキに横たわって「わが上なる星の輝く空」と「わが内なる調整原理」を(カントよろしく)眺めていた時、私は「ああ、そうか」とひざを打つ「アハー体験」をした。涅槃とは、「内側から見られた」熱死なのだ、と。(p51)

    「アハー体験」とは、心理学用語で,「ああそうだったか体験」とも言い、

    「精神医学では、分析医のおこなう解釈が引き金となって、患者が「ああそうだったか」という感情的安堵と多幸感にも似た安心感を体験する場合に、この言葉を用いる。」(p51)

    著者のアハー体験は、先の二つの基本的考えと密接に結びついているはずである。

    そのような体験があってこそ、からだの向きが変わるような、真の理解に到達したといえるのだろう。

  • フランクルの人格と人生を知ることができる。「他の人たちがそれぞれの人生に意味を見いだすのを手助けすること」を人生の目的とし、実践し続けた人。

  • 夜と霧を読んでから読む本

  • ”夜と霧”以前にロゴセラピーを確立していたフランクルの家族や生い立ちなどを回想して書かれた本。
    最初の命の選別で、将校の指とは反対側に進み、ガス室送りを免れたことを告白しています。もちろんその時点でどちらが正解かわかるはずもありませんが、彼の運の強さもありますね。
    心理学者としての彼の学問に対する考え方、またよき恩師や友人、家族に対する彼の優しさが伝わりました。
    共同責任を問わない、人を恨まない、そして冷静に物事を考えようととする人格者としてのフランクルが描かれていました。

  • 強制収容所からウィーンに戻って間もない頃、フランクルは友人にこう言ったという。
    「こんなにたくさんのことがいっぺんに起こって、これほどの試練を受けるのには、何か意味があるはずだよね。僕には感じられるんだ。あたかも何かが僕を待っている。何かが僕に期待している。何かが僕から求めている。僕は何かのために運命づけられているとしか言いようがないんだ。」

    こう言えるフランクルの凄さを改めて感じました。

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