- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784393376034
作品紹介・あらすじ
気鋭の文化人類学者による「学問」のすすめ。高等教育ができることは? 誰もが自分の学びを追求するには? 大学の教育環境が大きく変貌しつつある今だからこそ、知の喜びとは何か根本から考えてみたい。学生のみならず、新しい視点で世界を見つめようとするすべての読者へ。「ほぼ日の学校」の学校長・河野通和氏との対談収録。
感想・レビュー・書評
-
人類学が専門の著者が、大学にまつわる経験を通じて、若者に丁寧に諭すように語られた大学論。対談のパートを除き、各章で論じられていることは、おそらくこれまでの大学論とほとんど重複している。しかしより大切なのは、著者自身のことばで丁寧に言い換えられているとうことである。それは終章に向けての必要な作業だということがわかる。昨今の大学改革の渦中で、教育と研究の営みを検討した内容は、静かだが明確に指摘がなされている。
私自身がなんとなく思い抱いていたことを、著者は次のように終章で説いている。「トップダウンで一貫性があって、クリアな目標を掲げ、みんながそれに向かって一致団結して進む大学より、個々の教員がそれぞれ試行錯誤を重ね、互いに衝突し、矛盾しながらも、学問への熱い思いが共鳴する深い森のような大学のほうがいい。きっと社会にとっても創造性の源になりうるし、学生たちも、その森をさまようなかで悩み、対話し、学びの楽しさに我を忘れるうちに、予想もしなかった未知の可能性に開かれていくのだと思います。」(p.230)事務的には前者の方が助かる場面が多いのだろうが、後者の方がその後の効果や構成員の意識が確かなものとなるような気がしている。また「大学の現場とは乖離した空中戦のような議論や、浮ついたコンセプトばかりが乱れ飛ぶ時代だからこそ、きちんと目の前で起きたこと、起きつつあることをしっかりととらえて、教壇に立つ人間が自分なりの言葉にしていく作業が必要」という指摘は重要である。大学職員クラスターが、その空中戦に加担したり、当該コンセプトを学内外で啓蒙していないか、一度振り返ることも必要と感じた。現代社会において、大学を仕事場にするということは、組織的あるいは個人的な「大学改革」している感の演技の義務は、ゼロにできないにせよ、なるべく少なくしていきたいものだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
好きな人類学者の方が大学をテーマとした本を書いていたのを見つけて手に取った。
特に参考になったのは「知識」「知恵」とを述べた部分であった。
受験で必要だったのは「知識」であり、大学で筆者が身につけて欲しいと考えているのが「知恵」である。
「知恵」は自分の置かれた状況を生きるためのもので、柔軟なイメージをもった。
対して、「知識」は限定的なものであり、持っていても活かすことのできないもののイメージだと思う。
知恵を身につけるためには、自分の人生について考えることを避けられない。
誰かが言ったからではなく、どう生きたいか、世界にどう変わって欲しいかという欲求が、知恵の取得に関わっているのではないのかと思う。 -
弟が読んでいたものを借りた。松村さんの「うしろめたさの人類学」を以前読んで面白かった記憶があった。
丁寧に書かれていて読みやすかったが、内容は、学ぶときは自分の頭で考えるべきというくらいの"そうだよね〜”というものだと感じた。独自のフィールドワークをして「うしろめたさの~」のように面白いことを考えられる方が、大学での教職を経験して、ここまで噛み砕かないと伝わらないと思われていることがショックだった。ジャッジされることを当然と受け取って審判者にとって正しくあろうと努力する学生、とくくることは、揺らぎを無視してるけど、でも"就活"のジャッジのために学生側がそういったオリジナルを自ら封じ込めようとするのはやだなー、みたいな -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/738051 -
大学には対話できる自由でフラットな場が必要なのに、それが効率化で失われるつつあるというところにとても共感しました。仲間と話し合えるような大学づくりに関わりたいと思いました。
-
賢ぶらない知性、いいです。