ケインズとケンブリッジに対抗して (ハイエク全集 第II期)

  • 春秋社
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393622018

作品紹介・あらすじ

ハイエクとケインズの世紀を越えた経済論争はここからはじまった。その全貌に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 私の経済学の基礎は、大学で、経済学の教科書ではなくて、ケインズの「一般理論」を1年かけて精読したこと。

    今でも、経済を考えるときの思考のフレームは、ケインズの経済学となっている。(いわゆるケインジアンの経済学とはちょっと違う)

    一方、ハイエクは、最近、私の中で急速に興味関心が高まっている経済学者。

    この二人が、激しい論争を繰り広げたいうことなら、それは読むしかない。

    と思って読み始めたのだが、その論争自体は、あまりに経済学の純理論の世界で、全く歯が立たない。

    まずは、ハイエクがケインズの「貨幣論」に対する批判をはじめ、それにケインズが反論し、さらに手紙でのやりとりがなされたところで、ハイエクは「貨幣論」への批判の続きを行う。

    ところが、ケインズは、興味が次に行ったのか、論争から立ち去り、代打で、弟子のスラッファが出てくる。ところが、これが、直接の反論ではなく、ハイエクの「価格と生産」への批判という形をとり、その批判にハイエクがまた反論する。

    議論の中身も、用語の定義の違いなのかどうなのかの確認みたいなところが多くて、経済学にそこまで詳しくなく、かつ1930年代の経済学説や経済情勢にわからない私には、なんのことやらな世界。

    印象としては、ケインズとハイエクの論争というより、ケンブリッジ学派とオーストリア学派の理論的な戦いみたいな感じかな?

    ケインズは今の現実を理解し、それになんらかの対策をするという実際的なところを重視しているように見え、ハイエクは理論的な精緻さを求めているように感じた。

    議論の対象になっているのが、ケインズの「一般理論」より前の「貨幣論」だし、ハイエクは複雑系的な自律的秩序形成の思想に到達する前なので、期待したような20世紀経済学の2大巨頭(?)の対決にはなってないような。。。

    この時点での議論は、ケインズ革命前夜のケインズと新古典派の論争みたいな感じなのだが、もし40年代にこの2人が論争していたらどうなっただろうと思う。

    この2人は、実は、人間の合理的な選択や自然科学的な経済学に対する批判とか、大きな共通点がある。

    この2人の間以上に、彼らの認識論と世間一般の経済学の認識論の間の溝は限りなく大きい。

    最後の方に、ハイエクのケインズをしのぶ追悼的な回顧エッセーがいくつかあって、ここまで激しいやりとりをしていても、実は結構いい関係だったんだな〜。二人ともお互いを尊敬していたんだろうな〜、と思わせるものがあり、ちょっとホッとした。

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