- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784393935781
感想・レビュー・書評
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日本では唯一?かもしれないブリテンの伝記。作品と生涯のおおよそを辿れるが、何か特筆すべき分析の鋭さなどはない。それが意図かもしれないが。やはりこの作曲家の場合、同性愛に目が行くが当時の厳しい目がいくイギリスに対して、恋愛に恵まれた人生とは言えるのではないか。
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原著2003年、邦訳(本書)2013年刊。
イギリス20世紀の著名な作曲家ベンジャミン・ブリテンに関する書物は邦訳ではこれ1冊のみと思われ、非常に貴重である。コンパクトな本だがよくまとまっており、ブリテンの歩みも主要な作品についてのあらまし・寸評も載っていて、ブリテン作品を聴く際にとても参考になる。
ベンジャミン・ブリテンの作風は晦渋で、親しみやすい箇所はあまりない。が、妙な味があり、私も以前一時期はまってCDを集めたものだったが、先日とうとう37枚組のCDボックスを購入。この妙な味の音楽を味わうのに、この本はよい水先案内人の役を果たしてくれるだろう。
本書を読むと、類は友を呼ぶというのか、同性愛傾向を持つ男性が次から次へと大量に登場する。ブリテン自身が、そんな好みを持つ人物と友だちになったときに自身もその傾向があるらしいと気づいたようだ。当時イギリスで同性愛は違法であったので、根がとても真面目なブリテンは大いに悩んだに違いない。
生涯のパートナーとなり、共に演奏旅行をも頻繁に行った、テナー歌手のピーター・ピアーズとの関係は有名だが、本書を読むとブリテンは結構移り気で、ピアーズをキープしつつも、新しく出会った少年たちに惹き付けられたりしている。この少年愛のテーマは、そういえばパゾリーニ監督とも一致しているが、ブリテンがとりわけ歌劇を書く際に中心的なテーマとなり、少年の純真さ・無垢さが社会の中で押しつぶされようとするというイメージが頻繁に出てくる。そうして晩年の歌劇はトーマス・マン原作の『ヴェニスに死す』なのだから、出来すぎだ。
サン=サーンスと同じように早熟の天才で、神童であったブリテンは、十代半ばの頃、シェーンベルクやベルクの音楽に惹き付けられ、ベルクの弟子になりたいと思ったが、親に反対されて断念したらしい。
同時期のヨーロッパの作曲界から見れば保守色の強いブリテンの音楽は、しかし、19世紀の純粋な調性音楽ともやはり違っていて、そこは「現代音楽」と見なされていたことだろう。一方では古くさいと無視され、一方では新しすぎると煙たがられる。こうした曖昧さが、ブリテンの評価を難しくしている。だが、私自身、そういう中途半端なような曖昧なポジションで作曲をしてきた道程を振り返ってみて、このイギリスの「天才」作曲家の妙に抑圧されたような音楽世界に、不思議と親近感を覚えつつあるのである。 -
実は巨大な作曲家だよな。オペラを日本語字幕つきで見たいのだが、配信でないだろうか。
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細かな出来事が重ねられてゆくので、読み進めるのが辛くなる本