起こらなかった世界についての物語: アンビルト・ドロ-イング

著者 :
  • 彰国社
3.75
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本棚登録 : 288
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (139ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784395009114

作品紹介・あらすじ

建築家たちが描いた、ここではないどこか。ドローイングをめぐる想像の旅へ、ようこそ。

感想・レビュー・書評

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  • 『起こらなかった世界についての物語―アンビルト・ドローイング』|感想・レビュー - 読書メーター
    https://bookmeter.com/books/634122

    新刊案内 三浦丈典 著『起こらなかった世界についての物語―アンビルト・ドローイング』 | Webマガジン「AXIS」 | デザインのWebメディア(2010.08.20)
    https://www.axismag.jp/posts/2010/08/15423.html

    設計事務所スターパイロッツ
    https://www.starpilots.jp/

    建築・土木図書専門出版の彰国社
    https://www.shokokusha.co.jp/?p=1506
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    sonica00さんの本棚から

  • 名だたる建築家たちが遺した空想のスケッチ。それは社会的・金銭的事情で実現に至らぬまま世に埋もれたり、そもそも実現すら意図せずのびのびと描かれた建築たち。
    アンビルド・ドローイング。
    起こらなかった世界。
    その言葉をおもうだけでたのしい。
    どこまでも自由で奇妙な夢のようでもある、そんなドローイングをぱらぱらと眺めていると、なんだか自分も絵をかきたくなってくる。

  • タイトル&ジャケ買いして間違いなし!の一冊。男女とも、贈り物本としてぴか一だと思われます。
    世界の建築家が描いた「人の住むところ」の絵をセレクトし、その建築家の世界について建築家の著者がエッセイを寄せるという趣向。
    三浦さんの言葉選び、内容が、とてもよくて、建築のことを語っているのだけれども、敷居が高くなくて、どちらかというと、銀河鉄道999の乗客として、夢の世界を走っているような気分になることができます!

  • すごく面白かった。ひとつひとつのドローイングが美しくて、魅力的だった。建築家のドローイングがこんなに美しく、魅力的だとは思わなかった。作者のそのドローイングに対する愛ある文章も素敵だった。

  • 営繕業務に就く新参者の立場からこうした本を読むと、実施設計者のことを何も考えない適当な基本設計のありかたに強い反感を持つのだろう。本書は大学時代に図書館で知ったもの。建築思潮、建築デザインに反感なく類書を読み漁った時代だ。建築実務のことは何も知らなくてよかった時代だ。
    まさか建築実務に就く人がJWCADを使うなんて!
    実際にどうやって建物を建てるか、という問題意識に沿って作業を進めたことがない、映画や文芸批評などの含蓄を深めることを良しとする学生が、俺の職場のインターンに来たら、不誠実を咎めるような目で見ることでしょう。

  • 525.1

  • 2010-8-31

  • 8 例えばローマ旅行をする前に。その場所の建築、歴史、昔の人々の暮らしなどを少しだけ勉強したら、現地に行ってそこの空気を吸ったとたんに、ばらばらだった知識がひとつになっていきいきとよみがえり、古代ローマ人たちの日常に想像が膨らみ、知らないで行くよりも遥か遠くに旅立てるような気がします。
    9 過去の限られた情報の隙間を埋め、街や生活を想像し、気ままな空想の旅に出るという楽しみは、専門家たちだけに任せてしまうのは本当にもったいないと思うのです。たとえ稚拙な誤解の集積だったとしても、それが間違いだったとしても、自分でつくった世界というのは、どんな借り物の世界よりも強く、豊かなのだから。
    12 世界中の人が自分を空想の建築家だと思って、思い思いの想像の世界へ軽やかに飛び立てば、現実のこの世界もほんの少しよくなるような気がします。
    16 技術と根気というのは大切だなあ、としみじみ思う。豪胆さと繊細さ、おおらかさと正確さ、単純さと複雑さ、相反する、でも同時に存在しなくてはならないそれらの要素を紡ぎ合わせられるのは、技術と根気の力なのだ。
    20 旅人が見慣れぬ街に辿り着いたときに似ている。家々の奥にはきっと温かい生活があるのだけど、でも自分はそこに入ることはできず、その外と内のずれが相容れない不穏な感覚。突き放された身軽さを心地よく味わいながらも、自分が不安や疎外を身にまとった異邦人で、対象からも緩やかに拒絶され、それを打ち明ける友もいない。そしてそれが永遠に続く静止した時間の感覚。
    26 深い暗闇に原色のチョークの粉がぱっと浮かび上がる感じが、何かすごくもろくはかない感じがして、とにかくいま見ておかなくちゃ、という気持ちになっていしまう。泡末夢幻、どんなに緻密に描かれたものも、さあっと撫でるだけで消えてしまうから。(ルドルフ・シュタイナー)
    29 シュタイナーがこれだけ風変わりでありながら、芸術分野はもちろんのこと、教育学や治癒学、経済学や農学などでいまなお絶大な支持を得ているのは、おそらく彼の発する言葉のたぐいまれな美しさによるのだと思う。どんな話をするときも、シュタイナーの言葉は情感にあふれしかも単純で、そして借り物でない彼内部の宇宙からの響きであった。だからそれはいつも待つで覚えたての言語のように飾らず武骨だったが、かわりに黒板に描く図も、計画する建築の図面も、それは彼にとて同じようにまた言語であった。(ルドルフ・シュタイナー)
    47 ロッシは人や動物を見ながら同時にその奥の死骨を透視し、そしてそれとまったく同じやり方で街を見ていた。(アルド・ロッシ)
    48 飾りたい絵と好きな絵というのは似ているけれどすこし違う。好きというのはおもしろいとかめずらしいとか興味深いとかも含まれているけれど、飾るとなるともっと慎重になる。絵を飾るというのは、同時にその絵が自分を見ているような感覚もあって、そういう意味では画集を所有するのとも大きく違うのだ。見守られた絵というのは美しいばかりでなく、壮大で優しく、永遠に手の届かない資質のようなものを含んでいてほしい。べったりと親密な関係になってしまうのではなく。
    61 ヘルマン・フィンステルリンは「建築は人間的要素の自然発生学的現象であり、胎児を超えたところに建つ」という、ちょっと分かりづらい表現をしているけれど、つまりそれは工業的な幾何学を超えた形態ということだけでなく、出来合いの既製品を買うのではなくて、まるで赤ん坊が成長していくように、あるいは生物が進化していくように、建築も刻々と変態していくようなイメージがあったようだ。
    78 ヒトラーが全てのドイツ国民に快適な住居とフォルクス・ワーゲンを!と宣言し、ドイツ・オーストリア圏は建築が猛烈に工業化・分業化されていく真っ只中にあった。そんななか、ヴァッサーは絵画や彫刻は誰でも自由に作ることができるのに、建築にはこのあらゆるげに術の基本的自由がないことに怒り、「無節操な顧客の臆病な操り人形になっている」建築家を真っ向から批判した。
    無節操な顧客。それはヴァッサーの考える大人たちだ。大人はきれいで心地のいい(そして白く味気ない)自分の家をつくりさえすれば、他のことには目もくれない。金持ちほど高い塀を巡らせて街に背を向けて安全な城を築く。家の外は清潔で安全で便利だったらもうそれでいい。
    でもそれじゃあ魅力的な街はつくれない。ヴァッサーは叫ぶ。こどもの頃を思い出してごらん、街のあらゆる場所が遊び場で、秘密基地だったころを。建築はむしろ外にどんな魅力的な表情を広げているか、それが大事なんだよ。人の家だろうとなんだろうと、それはみんなの街であり、公園なのだ。(フンデルト・ヴァッサー)
    89 都市や国家、人類社会という巨大な対象と、身の回りのささやかな楽しみや生活習慣というものが地続きになっているということだ。まるでテーブルクロスを選ぶように都市を構想し、お気に入りのお皿を置くように建築を構想する。そしてそれは誰でもできる、する権利がある日常的な悦びなのだ。(ヨナ・フリードマン)
    92 ポストモダンの最大の功績は、甘える豊かさを伝えたことだと思う。いろんなお菓子を逸しの食べてみたい、おもちゃを箱から全部取り出してから遊びたい、というように。大人たちが馬鹿らしい、意味がない、効率が悪い、と顔をしかめるようなことを、茶目っ気たっぷりにやってみるという甘え。甘えというのはそれ自身よりも、それが受け入れられる前提があるということのほうが重要だ。そしてそれをつくることができるのは、甘える喜びを充分に知った大人。上品で甘やかしは芳醇で豊かだ。(ピーター・クック)
    97 レクチャーの冒頭、「みなさん、携帯電話のスイッチを全てオンにしてください。どうして?ここにいながらにして同時に他の世界とつながっていることこそが現代文明の刺激でしょ?」だって。(ピーター・クック)

  • 江國香織『日のあたる白い壁』を思い出した。

    建築家=建物の図面を描く人だと思っていたから、
    建築家の仕事の奥深さが興味深かった。

    時代もスタイルもさまざまな建築家たちの
    人生の一端を知ることができて、よかった。


    この世界をもうすこし知って、
    お世話になっている建築家たちの
    役に立ちたいと思った。

  • タイトルと表紙の引力が強い本。

    ブリューゲルがそこにいたことには驚きました。

    起こらなかっただけで起こす力はあったのだと感慨に耽りますね。

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