同性婚 私たち弁護士夫夫(ふうふ)です(祥伝社新書) (祥伝社新書 422)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396114220

感想・レビュー・書評

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  • いろいろと惜しい本。

    冒頭と末尾は、イロモノばかりをイロモノっぽく推すメディア越しの肖像とはひと味違う、「『平凡』に生きてる『普通』の同性愛者」を紹介するパート。これがかなり秀逸なだけでなく、かなり読ませる。「戸籍上は他人だけど事実上は夫婦」って、考えてみたら男女で事実婚してる人たちも状況は同じなんだよね。なのに、男女だと「籍は入ってないけど、『でも夫婦』」というイメージになるのに、同性だと「伴侶同然『でも、籍が入っていない以上は他人』」みたいになってしまうのはなぜなのか。「自分たちは夫夫(ふうふ)、ただ同性婚が法制化されていないので目下のところは事実婚」という著者の言葉には、ハッと目を啓かれた。
    そして中間部分は、相続やもしもの時の成年後見など、同性カップルをめぐる法律の現状分析。かなり実用的で、当事者にはこの上ない助けとなるのではなかろうか。

    ただ問題は——なぜこの2つを1冊の中に混ぜたのか、だ。
    2つのパートは明らかに対象者が異なる。というか、真逆(非当事者と当事者)だ。非当事者は途中から急に、堅く複雑な法律の話題になることに違和感を覚えるだろうし、法的問題に悩む当事者なら、「私たち弁護士夫夫です」などとライトなエッセイ風のタイトルの本は手に取らないだろう。内容はいいのに、設計が誰得なのだ。

    初めて本を書いたという著者の手綱を取るべきは、やはり編集者であっただろう。担当仕事しろ、と言いたい。なまじ著者の原稿は出来が悪くないだけに、つくづく惜しい本だった。

    2015/8/1読了

  • 性的少数者のために新たな権利や法律を作るのではなく、元々同じ人間として既に権利や法律の下にいることを社会が認識するのが必要だろう。
    何故同性愛者だからと枠外に出されなくてはならないのか。そもそも結婚制度とは何か、などを考えさせられた。

  • ゲイの弁護士カップルの一方の人が書いた本。同性婚が法律的に認められることを求めて、日本の法律とか法律を取り巻く社会のあり方に一石を投じている感じかな。
    自分としては、同性カップルも異性カップルを同じような権利を行使できるようになればいいとは思うけど、それが結婚というものに集約されていくのは何だかなと思っている。利便性とか考えると、現状では結婚ということになってしまうのはわからんでもないけど、それが残念。同性カップルにせよ、異性カップルにせよ結婚しなくてもお互いを信頼して一緒に生きていけるようであればいいと思うんだけど、甘ちゃんかしらん。だから、結婚なんて制度がなくなってしまえばいいと思うし、戸籍とかも現日本の結婚制度への縛りになるものとしてなくなってしまえばいいと思っている。
    この本も最終ゴール、勝ち取るべき権利が結婚・婚姻に向かっているようなんだけど、この本の最後の最後のところで、著者とパートナーとパートナーの未成年被後見人と著者の母親の4人で著者の兄とその妻と息子のところへ行き、みんなで遊んだ一日のことが書かれていて、それがすごくいいなと思った。血とか法律とかの結びつきなんてどうだっていいじゃないか。気の合う者、そのときなじむ者どうしが自由につながれるほうが理想だな。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685927

  • この手の本は必要だと思いつつ、どうしてもモヤモヤしてしまうことが。
    それは、マイノリティ同士のカップルだと、パワーカップルばかりがメディアに出てきてしまうこと。構造上仕方がないとわかっていても、モヤモヤしてしまう。
    なんとなく、弁護士とか美容師とか大学教授とか医師とか、手に職系(かつ、一般的に比較的「高給」と考えられている職業)でないとマイノリティとしては生きていけないような感じになってしまうのであれば、やはり社会としては不健全だと思う。
    こうした「手に職」系にマイノリティが多いように思えてしまうのは、それらが職業的にチームプレイでなく個人プレーが可能であり、それがゆえに同調圧力が低いコミュニティに属しているから可能になっている側面は無視できないように思う。そうした、同調圧力の低い、個人プレーが可能な手に職系に付かないと、自分のアイデンティティが脅かされてしまうのであれば、マイノリティの人々の職業選択の自由が侵害されているのであって、由々しき問題であるように思う。
    どんな性別でも就きたい仕事に就けて、子どもが欲しければもうけることができて、日本もそんな社会になればいいなぁ。
    憲法の問題は重要だけど、この本での議論も含めて、まず憲法を活用してみることが日本社会のあらゆる場面では必要な気がする。この本の話とは関係ないけど、日本にも憲法裁判所があったらいいのにね。

  • P14「同性婚を考えると言う事は、男女とは何か、結婚とは何か、家族とは何かを考えることである。」

    P 44「私はせめて、小学校中学校、高校での教育の中で、世の中には同姓愛者が存在すると言うことをきちんと知ることができればよかったのにと思う。自分は教科書には載っていない存在だと思い、湧き上がる自然な気持ちを否定するしかなく、自分で自分を認めるまでにずいぶん回り道をしてしまった事は残念だ。」

    P110「一方で、法令データ提供システムの法令用語検索で同性愛あるいは同性と検索してみても、該当するデータはありませんと表示される。」

    P115「2人の愛情は結婚のきっかけとして必要かもしれない。しかし、結婚には、カップルを中心とした家族として周囲から承認され、保護されると言う社会的な効果もある。」

    p127 「民法772条は「子供が生まれる枠組みこそが結婚である」と言う家族モデルを提示する。しかし、この民法772条が提示する家族モデルから外れた家族は、家族として法律上保護されず、個人としての存在すら認められないと言う困難を抱えている。」

    P1 137「同性カップルの家族、あるいは同性カップルと子供の家族が法律上保護されるとき、つまり同性婚が法律で認められる時こそが、家制度の最後の名残である民法772条の役割が終わる時なのではないかと考えている。」

    150「少なくとも(同性カップルが子育てをする)と言う事実が、子供を不幸にするのではない。「子供は不幸に違いない」と言う人々が、子供を不幸にするのだ。子育てをしている同性カップルの家族の巡り合わせを肯定する社会、多様な家族のあり方をうけいれられる社会こそが、子供を幸せにするのだ。」

    162ページ「クリントンが演説の冒頭で「all human beings are born free and equal in dignity and rights」つまり「全ての人は、生まれながらにして自由かつ平等に尊厳と権利を受けている」と述べた事は、同性愛者の人権は特別なものではないと言う考えを端的に示すものである。」

    163ページ「LG BTの課題の解決は、「少数者も権利を認める」ことではなく、「もともと同じ権利がある」ことを前提に、人権保障を阻む障害を除去する視点でなければならない。この視点はLG BTの当事者が抱える困難を社会的課題として解決する場面にとどまらず、同性カップルの家族としての権利を法律上の同性婚の制度として認めるかどうかにおいても忘れてはならない視点だ。」

    167ページ「憲法24条1項が、封建的な家制度のもとで女性の自由や人権が奪われていたと言う実情を背景に、婚姻における女性の自由な意思決定と家庭内における男女の平等を希求して制定されたからに過ぎない。」

    169ページ「憲法24条1項が「両性」と言う言葉を用いていることだけを持って、同性婚を積極的に禁止する趣旨だと声高に唱える事は、そもそも憲法が個人の人権を保障する存在であることに反する。」

    182ページ冒頭「この条例(渋谷区のパートナーシップ制度」)は、行政と言う公権力が、同性愛者を含めLG BTすなわち性的少数者が社会で生活していると言う事実と、当事者が偏見や差別に脅かされていると言う実情を認め、偏見や差別を打破するのは当事者の努力や行動ではなく、むしろ当事者を取り巻く人々や社会の意識が変わることによるべきと宣言するものである。」

    187ページ「しかし形や異性愛者であることを当たり前に生活してきた異性愛者にとっては、異性愛者しか存在しないことを前提に形成された社会は、生きやすくそして自身の性自認について立ち止まって考える必要もない社会である。」

    188ページ冒頭「葛藤を抱いていない人(異性愛者)の無理解は、罪ではない。」

  •  同性パートナーと弁護士事務所を営む著者が、自らのゲイとしての半生を振り返るとともに、同性婚をはじめとするLGBTをめぐる問題を概観した書。
     「自分語り」の部分と、社会の動きを概説した部分のバランスが絶妙で、同性婚について考えるための優れた入門書になっている。

     著者が弁護士であるだけに、同性婚をめぐる法律の諸問題(「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」という憲法24条の記述をどう考えるべきか、など)の解説には深みがあり、読ませる。
     また、諸外国における同性婚をめぐる状況や、そこに至るまでの歴史についても、手際よくまとめられている。

     そして、現在のパートナーと弁護士事務所を立ち上げるまでのいきさつはドラマティックで感動的であり、このままテレビドラマや映画にできそうだ。

     渋谷区が同性カップルに「パートナーシップ証明書」を発行する条例を可決させるなど、今年は日本でも同性婚をめぐる状況が大きな潮目を迎えた。その潮目の年にふさわしい、時宜を得た好著。

  • 帯文:”自分らしく生きたいすべての人へ。同性愛者が幸せに生きる社会は、「あなたらしさ」が大切にされる社会です―木村草太(憲法学者)” ”私は、ブームをブームで終わらせず、社会の当り前のこととする試みとして、「同性婚」について語ろうと思う。”

    目次:はじめに、第一章 私たち弁護士夫夫です、第二章 同性愛者からの法律相談、第三章 結婚・家族とは何か、第四章 同性婚と憲法24条

  • 自身の体験から結婚とは何かということまで、深く考え抜いた著者の視点が参考になった。

  • LGBTを理解して
    認めなければ間違った方向に
    向かい社会から排除され
    人権が失われていく…
    これからの家族の新しい在り方
    の幸せなモデルの先駆者となった
    勇気ある南、吉田弁護士に拍手です。
    少子高齢化が進み、日本はかつて
    味わったことのない社会になりつつ
    あります。
    確かにLGBTはなるものではなく
    時間をかけて気付くものですし…
    性的嗜好と性自認は治療法がありません。
    それにしても読み始めると止まらず
    小説のような面白さがありました。
    かく言う僕も本当のところはわかり
    ませんが…女っぽい男ですし…
    気持ちの上ではわかっていたつもり
    で…本当はゲイなのかもしれません。
    (惚れるのはいつも男性です。)
    それでももがき続けてきたことから
    ようやく救われたような…
    安心感がありました。
    どうしてかなぁ、多分、何もかも
    弱者の立場に立ってくれているから
    だと気付きました。
    唯、これだけは言わせてもらいます。
    同性愛の性行を想像、歓喜、
    表現するからヤラシーのであって
    この弁護士夫夫は心で何時も
    繋がっているという硬い絆が
    あると言うことを…
    忘れないでおいてほしい。

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著者プロフィール

1976年生まれ。京都大学農学部・同大学院から民間企業での勤務を経て大阪市立大学法科大学院。2008年に司法試験に合格し、2011年に同性パートナーの弁護士吉田昌史と結婚式を挙げ、2013年「なんもり法律事務所」を開設。一橋大学アウティング事件などLGBTの人権に関する裁判のほか戸籍や家族に関する案件も多数手がける。講演やテレビ出演の活動もしており、著書に『同性婚 私たち弁護士夫夫です』『僕たちのカラフルな毎日』がある。

「2018年 『子どもの人権をまもるために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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