ブレインテックの衝撃 ――脳×テクノロジーの最前線 (祥伝社新書)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396116385

作品紹介・あらすじ

人類の進化か終焉か?

念じるだけで意思を伝えることができる――。そんなSFのような技術が現実になりつつある。
脳科学とITを融合させた「ブレインテック」への投資が、世界各地で指数関数的に高まっているのだ。
2021年4月には、米ニューラリンクが、脳波でゲームを操るサルの実験動画を公開し世界に衝撃を与えた。
スタンフォード大学は手足が麻痺した男性の脳にデバイスを埋め込み、1分間で90文字の入力に成功している。
AIと競合していく時代に入った現在、この技術は人類の救いの手となるのか?
国内外で加速する研究の最前線から、医療やマーケティングへの応用事例、法的・倫理的な問題点までを解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 脳を科学的に測定し、感情や思考を読み取る。そんな技術が今、現実のものになりつつある。IT企業などが開発を加速させる「ブレインテック(脳の技術)」の最前線に迫る書籍。

    コンピュータなどの機械を脳と接続し、双方の間で直接情報をやり取りする技術を「BMI(ブレイン・マシン・インタフェース)」と呼ぶ。BMIは医療への応用を想定して基礎研究が進められてきたが、近年、半導体技術の発達を受け、IT産業が新たなビジネスチャンスとして取り組みを始めている。

    テスラのCEOイーロン・マスクは、ニューラリンク社を創立しBMI分野に参入した。同社は、人間の脳に電極などを埋め込み、コンピュータなどを自在に操作する技術の実現を目指している。BMI技術の中でも、こうした「人体(脳)に外科手術を施す」ものを「侵襲型の技術」と呼ぶ。

    侵襲型技術への生理的な抵抗感から、手術を要しない「非侵襲型」のBMI開発に乗り出す企業も少なくない。例えばフェイスブックは、「脳の思念でコンピュータなどを操作できる特殊な眼鏡やヘルメット」などの実現可能性を探っている。

    IT企業のBMI分野への参入に対しては、個人データやプライバシー保護の観点から懸念の声も聞かれる。また、BMIには次のような問題が生じる恐れがある。
    ・企業が従業員にウエアラブル端末の装着を推奨し、これを介して忠誠心や意欲の有無などを測ろうとする。
    ・ハッカーや犯罪集団などが、脳に埋め込まれた半導体チップを介して人々の心身を自由に操る。

    アメリカでは、四肢の一部を失った人が自在に操作できる「革新的な義肢」の開発が進む。最先端の義手は、モノを掴つかんだ時の感触などの情報を脳にフィードバックするという。

  • 人体を司る脳を司る技術の最前線。難病やハンデを突破する医療への応用はポジティブであるものの、その人物(または生物)を乗っ取りかねない利用法は、人権や倫理の問題に直結する。そのテクノロジーを適用するしないの選択が出来れば良い方で、ナノテクで知らぬ間に身体のデータを取られたり、健康や行動に侵食する事が可能になってきている点などは、もはやSF作品の世界。驚くべき事例を分かりやすく纏める著者の手腕は、いつもながらNHKスペシャルの鑑賞に似た充実感があった。

  • BMI(ブレインマシンインターフェース)の技術革新はとても興味深いですね。

  • ●ブレインテックとは?脳の信号を読み取るデバイスを装着して、念じるだけでコンピューターやスマホを操作する。あるいは逆に脳へ情報を直接送り込む技術。
    ●イーロンマスクらが数年前米国に設立したニューラリンク社は、脳に半導体チップなどからなる小型装置を埋め込むことで外部マシンとの接続を可能にするなど、かなり過激な方式のBMIを開発している。
    ●脳に埋め込まれた半導体チップなどから発せられる熱で、脳細胞が損傷する危険性が指摘されている。
    ● Facebookは手術に頼らない非侵襲型を目指す。
    ●脳の動きから人の心を解読し、私たちの隠された欲望や消費対象を洗い出して、ターゲティング広告やマーケティングなどのビジネスチャンスにつなげることではないのか。そればかりか私たちの脳に新たな消費意欲をかきたてることも可能かもしれない。
    ●傷の痛みも、失恋の痛みも、脳の中では同じ。

  • 侵襲型BMI開発には継続的に投資する予定

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著者プロフィール

1963年群馬県生まれ。KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。専門はITやライフ・サイエンスなど先端技術の動向調査。東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭をとった後、現職。著書に『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』『仕事の未来 「ジョブ・オートメーション」の罠と「ギグ・エコノミー」の現実』(以上、講談社現代新書)、『ブレインテックの衝撃 脳×テクノロジーの最前線』(祥伝社新書)、『「スパコン富岳」後の日本 科学技術立国は復活できるか』(中公新書ラクレ)など多数。

「2022年 『ゼロからわかる量子コンピュータ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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