- Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396317164
感想・レビュー・書評
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「源氏物語」二周目。昨年、読書会の源氏物語を10か月かけて読むイベントに参加した。
誰の訳で読んでもいいということで、その時は橋本治氏の「窯変 源氏物語」で読んだ。
今年はもう一回10か月かけて読むということになり、その二周目に参加してみることにした。訳は林望氏訳。
橋本治版が原作から大きく変えていたのは、話を光源氏の一人称としていたところ。光源氏の内面に切り込むためと思うが、当然光源氏のモノローグが多くなる。
それに対して林望氏訳は原作に「忠実」なので、普通の三人称。面白いかどうかは別として、読みやすい。
第一巻は導入ともいえる巻だが、物語の後々まで絡んでくる空蝉、夕顔といった女性も出てくる重要なパート。
個人的には光源氏のパシリをやらされている惟光がいい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
リンボウ先生の「謹訳」はとても自然な感じが読みやすくていい。紫式部の原文がどういうものなのか、というのはわからないのだが、まずは全文を通読したい、という人にはいいと思う。
最初のほうは物語の展開がゆるやかで、これが平安時代の時間間隔なのだろうかと思っていたが、夕顔という女性が何者かに呪い殺されるあたりから展開が面白くなる。
1巻は、源氏の誕生(桐壺)から18歳(若紫)まで。
絶世の美男子として描かれる源氏は、女と見れば手を出さずにいられない、現代であればセックス依存症のようなキャラクターなのだが、周りの人間も似たり寄ったりのようで、同じ日本でも、1,000年前だと感覚がだいぶ違うようだ。
源氏の女性遍歴が延々と描写される中で、いろいろな人物が登場し、当時の宮廷生活とはこんなものだったのだろうかと断片的に想像できる。具体的にどういう仕事をしているのか、といったところは描かれない。ただ、知性や教養といったものだけでなく、ファッションに関してもTPOが求められる。さらに、「源氏の君」という名前もそうだが、本名ではない。ハイソサエティは他人に心を許すことはないのかもしれない。
いわゆる農民とか町人のような庶民はほとんど出てこない。キャラクターとしても登場しないし、背景にも出てこない。邸の下働きみたいのがちょっと出てくる程度。源氏たちとは生きる世界が違っていて視界にも入らないということなのだと思う。今は皇族の方々がみずから庶民のところに訪れて声をかけてくださったりするのだから、時代は変化するものだなと思う。
紫式部は夫藤原宣孝と死別してから、その現実を忘れるために本作を書き始めたという。紫式部が夫にとって、本作における藤壺のようなマザコン的な愛され方をしていたのか、たくさんいる女性の中のひとりだったのかはわからない。いずれにせよ、紫式部は現実の苦しみを忘れるために、このようなありえないキャラクターを想像する必要があったのだろう。
今のところ、この作品がどんな問いを持っており、なにを伝えようとしているのかはわからない。1,000年以上生きながらえる小説とは、なにを抱えているのかといったところを意識しながら読み進めていきたい。 -
とても面白い
光源氏のクズなことよ -
f.2023/5/13
p.2017/9/22 -
歴史の教科書に出てくるし、出身地に縁のある源氏物語。いつかは読みたいと思っていたけれど、なかなか手がつけられない本の代表であった。
今思うと、長編でかつ古典文学という固定観念があったから無意識に避けてしまっていたようだ。
しかしながら、それは心配無用であった。手にとってみると、スラスラと一気に1巻を読み終えることができた。
携帯電話やラインといった通信技術が発展した昨今において、歌でのやりとりは何とも言い難い美しさを感じたし、恋愛以外にも様々な娯楽があって、ある意味人間らしさが失われつつある現代人にとっては、本能的な恋心に対する反応を生々しく見ることができる小説だと思った。
主人公光源氏の周りが見えなくなるくらいの人間の本能的なプレイボーイぶりに今後の展開が気になるばかり。
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三省堂の本店で谷崎潤一郎や瀬戸内寂聴の訳と徹底的に読み比べたうえで、これに決めた。
非常にわかりやすいうえに、訳者の文学的素養も伝わってくる。多分わたしにとって谷崎訳は、高尚過ぎて難し過ぎる。
2巻以降が楽しみ。