謹訳 源氏物語 八 改訂新修 (祥伝社文庫)

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  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396317447

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  • 源氏物語二周目。
    物語もいよいよ終盤。光源氏は既に亡く、数年が経っている。
    最初は光源氏と明石の御方の間に生まれた明石中宮と今上帝の間の御子である匂兵部卿を中心とした匂宮三帖(匂宮、紅梅、竹河)から始まり、匂宮からはライバル視?もされている源氏と女三の宮の間の子とされている薫中将(実は柏木衛門督と女三の宮の不倫の子)と二人で、宇治に住む没落した貴族宇治の八の宮の娘姉妹大君、中君に恋慕する宇治十帖の冒頭(橋姫、椎本、総角)。
    匂宮が源氏の血を引く孫なので女性好きの男として描かれ、同じく系図上は源氏の息子でありながら、性格は真の父である柏木のなんとも融通が効かないというか、頑固というか、思い込みが強い「生真面目」(傍迷惑なともいう)男性の薫という対照が面白い。
    光源氏は美男で、身体から自然と良い香りがすると描かれていたが、実際にはその血をひかない薫中将がまさに名前の通り身体から良い香りを発し、その香りでそばにいることがわかる程であるのに対し、孫筋の匂宮は薫の対抗して衣服に香を強く焚き染めているというあたりの設定も、皮肉なのだろうか。
    匂宮は妹の中君と結ばれつつも、その移り気な性格を疑われ、信頼を得られず、薫はいくら好意を示しても、大君からは拒否され、それでもアタックするものの、拒否を続けられるうちに、大君は失意の中で亡くなってしまう。
    これからの展開が、明るくなるとは全く想像できない(実際もっととんでもなくなっていくのだが)宇治十帖の始まりでした。

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著者プロフィール

1949年東京生。作家・国文学者。

慶應義塾大学文学部卒、同大学院博士課程満期退学(国文学専攻)。東横学園短大助教授、ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。『イギリスはおいしい』(平凡社・文春文庫)で91年日本エッセイスト・クラブ賞。『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(Pコーニツキと共著、ケンブリッジ大学出版)で、国際交流奨励賞。学術論文、エッセイ、小説の他、歌曲の詩作、能作・能評論等著書多数。『謹訳源氏物語』全十巻(祥伝社)で2013年毎日出版文化賞特別賞受賞。2019年『(改訂新修)謹訳源氏物語』(祥伝社文庫)全十巻。ほかに、『往生の物語』(集英社新書)『恋の歌、恋の物語』(岩波ジュニア新書)等古典の評解書を多く執筆。『旬菜膳語』(岩波書店・文春文庫)『リンボウ先生のうふふ枕草子』(祥伝社)、『謹訳平家物語』全四巻(祥伝社)『謹訳世阿弥能楽集』(檜書店)『謹訳徒然草』(祥伝社)等著書多数。

「2021年 『古典の効能』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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