- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396326630
感想・レビュー・書評
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高杉晋作と妻の雅子を中心にし、二人に関わってきた人々が過去を振り返って高杉夫婦を語るという異色な作品でした。しかも、巻末には子孫の高杉勝氏のお言葉もあります。
高杉晋作、野村望東尼、うの、白石正一郎、木戸松子、伊藤博文、高杉雅子の順で語っています。最初から最後まで語り口調で書き綴られているので語り手自身の身の上を説明したりと脇道が多く、読んでいる途中でだれるかもしれません。
そして、この小説の特徴は雅子をメインにしており晋作がおうのよりも雅子の方が大切で最も愛している、というような表現をしている事だと思います。夫婦そろって暮らした時期は短く、妾と一緒に居ることが多かったので他の作品等では妻よりも妾の方が最愛の女というような書かれ方が殆どで、最近では某大河のノベライズでも晋作は妻に愛想尽かされたと書かれたりしていたのでお互いに愛しあう高杉夫婦の姿は新鮮に感じました。
とはいえ、妾のおうのの扱いが蔑ろにしている訳でもなく自分が妾である立場を理解しつつも、病に伏せる晋作を必死に看病する姿が健気に書かれており彼女にも好感が持てます。
ただ、その反動なのか木戸松子夫人は一言一言が小生意気で印象の良くない女性として書かれているので高杉夫婦よりも木戸夫婦が好き、という人は読まない方が良いかと思います。
高杉家の家族たちの様子も書かれており、藩から何かと指令があるたびに晋作が「……父上だな」と父が裏で働きかけて押さえようとしていたことを常に見抜いている息子の様子が面白おかしく感じました。
あと、伊藤博文のセクハラ男っぷりも女性視点だと生々しくてイヤンな気分でした。あの碑文を書いた理由も意外な考え方で賛否ありそうです。
この小説を読んだ後は「高杉晋作が愛した女性は妾のおうの」という意見に「いやいや、妻の雅子の方だと思うよ」と反論したくなる程に考えが変わるかもしれません。
最愛の女性は誰なのかは晋作本人に尋ねてみないと分かりませんが波乱に満ちた幕末を太くも短く生きた高杉晋作の人生をおうのも、雅子も、支えていたのだと気づかせてくれる作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高杉晋作と遺された人達の物語。
正妻のお雅にもスポットが当てられているのがおもしろい。
個人的には正妻びいきなのでそこそこおもしろかったです。