夫の骨 (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
3.61
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本棚登録 : 878
感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396345105

感想・レビュー・書評

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  • 最高の瞬間を味わえた一冊。

    九編からなる短編集。
    静かな文章を綴る作家さんだな、あぁ、好きだなぁと思いながら吸い込まれるようにページをめくる。

    次第になんだか心が不規則なテンポでざわつき始める。

    家族という誰もが属する小さな小さなコミュニティ。
    わかるからこそ感じとってしまう不穏な空気、微妙な間合い。
    これがたまらない。

    そして激しくドクンと一回、大きく音を刻む心臓。同時に口からは「え…」の言葉がこぼれた。

    あぁ、これって最高の瞬間ってやつじゃないかしら…それを九回も味わえたなんて幸せ。

  • 読友さん推薦本。9つの話しが最終頁、最終行まで読み切らないと話しが完結せず。全てどんでん返しものだった。グロでもホラーではなく、ミステリーのような感じ。夫婦、姉妹、家族の想いのすれ違いによって、断層のように「軋む」関係性。この軋みの描写は共感できた。「ダムの底」という話しが印象的。夫婦不和により、妻が不倫、娘は登校拒否。夫は家事を懸命に行い、娘が立ち直る。妻との離婚、娘が犯罪に利用される。そこで夫が娘とダムい向かう。娘を想う男性の心情が共感できた。一方、もう少しゾワゾワ感+グロ部分もあって良かったかな。

    • ポプラ並木さん
      ゆうママさん、雷神いいね、しましたよ!足りない?感想を読んでコメントするがいつも楽しみで、ナイスするのを忘れてしまいました。。。
      夫の骨の...
      ゆうママさん、雷神いいね、しましたよ!足りない?感想を読んでコメントするがいつも楽しみで、ナイスするのを忘れてしまいました。。。
      夫の骨の感想コメントありがとう。この本はイヤミスを期待したんだけど、そこまでだった。ミステリー作品としては面白かったです。いまアガサクリスティーのNかMかというのを読んでいます。最近、仕事で自分の研究記事が新聞に載ったり(内緒ですけど)ちょっと忙しかったです。いまミステリーを楽しんでいます。今度ゆうママさんの感想を楽しみにしています。ゆうママさんには以前も言いましたが、読書メータの方が読み友さんとのコメントが気軽にできますよ。でもこっちのゆったり感も好きですが!ではまたね~3連休ゆっくりしてくださいね。
      2021/09/18
    • アールグレイさん
      ポプラさん
      ありがとうございます!
      図々しくてごめんなさい~(^^;;
      ポプラさん
      ありがとうございます!
      図々しくてごめんなさい~(^^;;
      2021/09/18
    • ポプラ並木さん
      こちらこそ、すんませんでした。ゆうままさんの感想にはいつもナイスしています!また熱い感想を楽しみにしていますよ!!
      こちらこそ、すんませんでした。ゆうままさんの感想にはいつもナイスしています!また熱い感想を楽しみにしていますよ!!
      2021/09/18
  • 矢樹純『夫の骨』祥伝社文庫。

    9編から成る短編集。いずれの短編も家族とその中に影を落とす夫婦の関係をテーマにしたミステリー作品に仕立てられている。後味の悪さを考えれば、一種のイヤミスと言っても良いだろう。沼田まほかるや真梨幸子とは一味違う作風が新鮮。

    『夫の骨』。夫の死後に妻が物置の中に見付けた木箱に入った小さな骨は一体誰のものなのか……複雑な思いと言い知れぬ恐怖とが交錯する結末は見事。

    『朽ちない花』。幼い頃から姉にいいように支配される妹。復讐ではないのだろうが、妹に拍手を贈りたい気持ちと幸福とは思えない未来に哀しい気持ちと……

    『柔らかな背』。数年前から社会問題になっている振り込め詐欺を題材に描かれる恐ろしく歪んだ現実。虚構と事実の境目はどこに……

    『ひずんだ鏡』。何となく二人の姉妹はそうなんだろうと思っていたら、やはりその通りだった。しかし、二重三重の仕掛けに何が事実なのかともどかしい気持ちになる。

    『絵馬の赦し』。一見普通の家庭が抱える大きな秘密。タイトルの意味は……

    『虚ろの檻』。動物には罪が無いだけに人間のエゴだけが際立つ。

    『鼠の家』。家族を巡るサスペンスフルな展開は予想外の結末へと……

    『ダムの底』。ガツンと後頭部を殴られたかのようなショックが終盤に待ち構えている。予想を大きく超えたストーリー。

    『かけがえのないあなた』。この短編も遥かに予想を超える結末が待っていた。僅かに道を踏み外したことから果しなく広がる奈落の世界……

    本体価格670円
    ★★★★★

  • 個人的にはこういうイヤミス系、ブラック系はあまり好きではないのだが、この作品は先が気になってあっという間に読めてしまった。

    表題作「夫の骨」。登山中に事故死した夫の遺品を片付けている時に出てきた乳児と思われる骨。生前の夫と血縁のない義母との奇妙な違和感を思い出しある疑惑を持った主人公は…。
    「夫の骨」とはそういうことだったのか。意外性が面白かった。

    姉妹、母娘、夫婦、血の繋がりのない親子に姉妹…様々な家族とそこに潜む秘密を描く。
    ヒリヒリとするような焦燥感、座りの悪い落ち着かない違和感、ムカムカするような嫌悪感、そんな気味の悪い空気が蔓延する中でついに迎える結末。
    清々しさとは違うものの、溜飲を下げられるものもあり、逆に新たな迷路への始まりを感じるものもあり。
    唯一「虚ろの檻」のみが毛色の違う作品。動物が悲しい結末になるのは辛いものなので良かった。

    著者紹介を読むと、漫画原作を中心に書かれている作家さんのようで、この作品は作家さんの新境地というところか。個人的にはもう少し爽快な作品も書いてほしい。

  • 家族をテーマにしたちょっとダークな9つの短編集。
    どの短編もこちらの意表をつく結末に、思わず苦笑いしたりほっと和んだり。
    矢樹純さんは初読みの作家さん。
    挑戦を挑むかのように、各々のミステリーのオチを予想してもことごとく外れてしまう。
    気持ちのいい位の敗北感を味わい、いっそ清々しい。
    夫婦、姉妹、親子…どれも家族の絆の深さをしみじみ思い知らされるものだった。
    不思議な余韻がいつまでも残るミステリー。
    『絵馬の赦し』『虚ろの檻』『鼠の家』『かけがえのないあなた』が特に良かった。
    またいつか、矢樹純さんに挑戦を挑みたい!

  • 「9つすべてがどんでん返し」という帯の惹句に違わず、どんな仕掛けがあるのやらと構えて読んでいても最後には「そうきたか!」 と思わず叫んでしまう粒ぞろいの短編集。
    ちょっとこのテイスト長岡弘樹さんを彷彿とさせます。自分だけかもしれませんが。でも長岡さんの作風が好きな人ならきっと本作は面白いと感じると思います。
    知らない作家さんでしたが是非他の作品も読んでみたいですね。気になる作家さんが一人増えました。

  • 一番近い存在なのに
    家族って 本当に遠いんだな
    思っても思うがゆえに伝わらない
    そして その寂しさが胸を打つ
    しみじみと やっぱり人は一人なのね・・・
    ミスリードすることによって
    より深い 人間の情念があぶりだされていく巧い

  • 家族にまつわる9つの短編集。
    個人的には「夫の骨」「柔らかな背」「ひずんだ鏡」が良かった。
    粘り気のある狂気を感じた後に哀しさが残り、複雑な想いになるものの、読後感は悪くない。
    全てが予想の斜め上をいくといった構想で、全編通して楽しめた。

  • 不穏なムードが漂いつつ物語が進み、さらに予想と違う不穏な着地…という展開の九編をおさめた短編集。


    矢樹純さん、初読。
    くるたんさんのレビューを読んで手に取った一冊。

    文章はきちんとしていて読みやすく、予想外の展開へもっていく手法はよく出来ているけれど、どうも読後感がすっきりしない作品ばかりだったので、少々疲れた。

    「夫の骨」は、さすがに表題作という感じだったけれど、読後は複雑。
    全てが明らかになって、夫が自殺ではなかったという安堵はあったが…義母の、亡くなる間際に罪と煩悶を実の息子にわざわざ残す気持がわからない。

    「絵馬の赦し」「虚ろの檻」が、わずかながら前向きな空気が感じられて良かった。

  • ミステリだが、名探偵ものや警察もののように、“犯人が見つかりました”とすっきりしてから動機がストーリーとして明かされる、というパターンの作品ではない。

    彼女は、または彼は、そうするしかなかった、あえてその道を選んだ、という選択が描かれる。
    その後、捕まるか裁かれるか…彼女や彼たちにとっては、それはどうでも良い事のように思われるので省略される。
    鬼ごっこの鬼も帰ってしまって、夕暮れにぽつんと一人…みたいな黄昏時のものさびしい薄暗さが漂う本だ。

    ちょっと叙述ミステリというのか…こちらの勝手な勘違いで騙されること多数。
    信じていた大地がぐるっとひっくり返るような感覚を味わうこと多数。
    弱いものと支配するものは簡単に入れ替わる。
    夫が何を考えているのか分からない、認知症の老人が見ている世界は他人には見えない、そして当然だが、死人に口なし。
    不思議な切り口の本でもある。

    『夫の骨』
    乳児の骨の正体は?
    私が結婚した人は誰?

    『朽ちない花』
    くちうるさい姉の言いなりになってきた妹の反撃か。

    『柔らかな背』
    先輩に強請られている高校生の孫も、一緒に住んでいる娘の幸恵も…
    高齢者の免許返納が急激に増えているらしいです。

    『ひずんだ鏡』
    姉と妹の関係。
    どちらが勝ち組みなのか。

    『絵馬の赦し』
    ドロドロだけど、これは小さな救いをやっと見出した話。

    『虚ろの檻』
    気が付くと獰猛な土佐犬と同じ檻にいた。
    珍しく(!)溜飲が下がる話。

    『鼠の家』
    嫌な家族だな、から一転。
    血の繋がらない姉妹の話。

    『ダムの底』
    その選択は…
    本人にとってはただ一つの道。

    『かけがえのないあなた』
    いつも正解を導いてきた賢い夫の失敗。
    一番大切なのは息子。
    DNAの半分が自分であることだけが拠り所となる真実。

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著者プロフィール

1976年、青森県生まれ。実妹とコンビを組み、2002年、「ビッグコミックスピリッツ増刊号」にて漫画原作者デビュー。『あいの結婚相談所』『バカレイドッグス』などの原作を担う。2012年、「このミステリーがすごい!」大賞に応募した『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』で小説家としてデビュー。2019年に上梓した短編集『夫の骨』が注目を集め、2020年に表題作で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。

「2022年 『残星を抱く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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