霧に溶ける (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396346782

作品紹介・あらすじ

「4人が死傷し1人が残る。」 
絡みあう5人の美女と謎。
多くの「異常者」が起こした事件を書き続けた笹沢左保が
女性の異常な思いを描いた震えるようなミステリー。
笹沢本格ミステリーの傑作!

ミス・コンテストの最終選考に残った5人の美女。最終審査を目前に、4人が次々と死傷する。犯行現場では、候補者本人たちと思しき不審な行動が目撃されていた。
そんな中、唯一無疵の女への疑いが浮上する。だが、密室の謎や巧妙なアリバイが立ちはだかる。やがて、彼女も脅迫されていたことが発覚し――。
完全犯罪の企みと女の狂気が引き起こす予測不能の本格ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • ミス・コンテストの最終選考に残った五人の美女。最終審査を目前に、四人が次々と死傷する!その中でただ一人の無傷な女性に容疑はかかるが、密室など不可解な現場の謎が立ちはだかって──!

    ミスコンという華やかな舞台に隠された女性の狂気がテーマ。前半で候補者の背景にスポットライトを当て、それから堰を切ったように巻き起こる事件に翻弄される!候補者同士や恋人との確執、霧にも似たつかみどころがない人間関係に光を当てるほど、乱反射して見えなくなる謎の描き方が上手い。

    人情やドラマ重視の作品かと思いきや、読み進むほどに密室、トリック、アリバイなど本格ミステリが牙をむく。倉田警部補が独自の視点で切り込むも、そこに意外な探偵役が登場するひねりが最高。霧に溶けた二人の絆が、絶対に解くという熱を持って謎という霧を晴らす構成が絶品。ミステリとドラマが一つに溶けていくのがいいよね。

    犯人の目安や計画はぼんやりとは気づけたものの、解決へ向かうほどに狂気の計画が目の前におぞましく構築されていくのがすさまじかった。ラストも哀愁と感傷がほろ苦く残る終わり方でいいなと。人は自分の醜さを霧の中で隠し合いながら生きていくものなのかもしれないね。

    「薄情こそ、情の迷いから自分を救うものだ」という信念を持つ穂積里子のインパクトがいろいろすごかった。誰もがエゴはあれども、冷たい人間になるのは怖いものだなあとしみじみ感じた。

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著者プロフィール

1930年生まれ。1960年、初長篇『招かれざる客』が第5回江戸川乱歩賞候補次席となり、本格的な小説家デビュー。 1961年『人喰い』で第14回日本探偵作家クラブ賞を受賞。 テレビドラマ化されて大ヒットした『木枯し紋次郎』シリーズの原作者として知られ、推理小説、サスペンス小説、恋愛論などのエッセイ他、歴史書等も著し、380冊近くもの著書がある。2002年、逝去。

「2023年 『有栖川有栖選 必読! Selection11 シェイクスピアの誘拐』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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