この歌をあなたへ (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 202
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396347352

作品紹介・あらすじ

家族が人殺しでも、あなたは僕を愛してくれますか――?
社会派ミステリの旗手による、加害者家族の苦悩と救いを描いた感動の物語。

小学校の養護教諭、宮坂蒼衣の住む街には悲しい事件の記憶があった。十九年前、クリスマスイベントで盛り上がる公園に刃物を持った男が乱入し、八人もの尊い命が奪われたのだ。ある日、蒼衣の勤める小学校に臨時の事務職員として一人の男が配属される。異常なほど頑なに人との関わりを避ける彼には、誰にも言えない秘密が――。
加害者家族の苦悩と救いを描く感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 無差別殺人犯の家族
    彼らに幸せになる権利はないのか?

    読んでるあいだずっと苦しくて悲しかった…

    さっきもニュースを見ていて犯人の中学生の時の卒業文集を流していた。それが何だと言うのだろう。
    笑わず楽しまず人と関わらず生きる。
    母は自殺し、祖父母も亡くなった兄妹の人生はとことんまで追い詰められる。いつまでも。

    ラストに希望を持たせてくれて救われた(゚´ω`゚)゚。

  • 大門剛明氏の慟哭の社会派ミステリー。
    星5以上を付けたい良い作品と思います。
    各編『歌』になぞらえたテーマも良いですね。
    特に、後半の展開は、ウルウル続きです。

    第一章 奇跡の歌
    第二章 哀しみの歌
    第三章 あやまちの歌
    第四章 喜びの歌
    第五章 うらやみの歌
    第六章 あなたを想う歌

    加害者遺族は、幸せになってはいけないのか。
    被害者遺族の恨みつらみに対し、加害者遺族の罪の償いとは、如何にあるべきか。
    重いテーマですが、ストーリー展開と共に、ひしひしと胸に迫ります。

    小学校の養護教論・宮坂 蒼衣が住む街には悲しい過去があった。
    19年前、クリスマスイベントで賑わう公園で、刃物を持った男により、8人の罪なき人々が亡くなった。

    ある日、蒼衣の務める小学校に、事務職員として1人の寡黙な男がやって来た。
    その男性・野川 隼太は、人と交わらない孤独な生活であったが、徐々にその生活に変化が...

    第四章、最後の1ページ(251p)に、読む手が震えました。
    刑事から蒼衣に伝えられたその言葉とは。
    結婚式を直前に控えた野川の妹・朋美の身に、何が起こったのか。

    そして、最後に野川の取った行動とは?

    明らかになった被害者遺族(浅田)から、加害者遺族(野川)に届いた手紙とは?
    その想いが、野川に届きますように。

  • 大門剛明『この歌をあなたへ』祥伝社文庫。

    書下ろしの社会派ミステリー。被害者家族からの事件の加害者家族への常軌を逸した非難と中傷。憎しみの連鎖は果てしなく続き、いつしか憎しみは悲劇に変わる。

    中盤まではミステリーの要素は薄く、大量殺人事件の加害者家族の苦悩を描いた小説かと思うのだが、終盤に物語は急展開し、ミステリー色が強くなる。そして、結末。なかなか難しいテーマにどう決着を付けるのか、著者の迷いが見えるような結末。個人的にはこの結末には少し違和感を覚えた。

    養護教諭の宮坂蒼衣は、自身が勤める小学校の臨時事務職員の野川隼太に度々助けられ、次第にその存在が気になり始める。しかし、寡黙でいつも独りでいることを好む野川には人には話せない秘密があった。ある時、蒼衣は野川の妹の朋美と偶然知り合い、二人の兄妹が抱える秘密を知る。

    野川兄妹には年の離れた兄がおり、19年前にその兄がクリスマスイベントで盛り上がる公園に刃物を持って乱入し、8人もの尊い命を奪ったのだ。その兄も死刑が執行され、兄妹も加害者家族という呪縛からやっと解放されたと思ったのだが……

    本体価格790円
    ★★★★

  • 今までの大概の推理小説は、事件が起き探偵役や警察が推理捜査し、犯人が捕まる、めでたしめでたしと、終わっていた。
    最近はその後に焦点を当てた作品が登場している。
    この作品も、事件が起き犯人が捕まった後、その加害者家族に起きる苦悩や社会的差別をテーマにした社会派ミステリー。
    小学校の養護教諭宮下蒼衣が主人公。彼女の勤める学校に配属になったのは、19年前に大量殺人事件を起こした犯人の兄だった。彼女の目を通して、加害者家族への偏見や理不尽な扱いを描き出す。
    匿名でのネット情報がはびこる現代のネット社会では、この傾向がますます加速する。
    個人単位が確立しており、加害者家族を励ますこともあるアメリカ社会に対し、家単位の意識がまだ残る日本では、加害者家族も加害者同様の扱いがされている。
    著者は、「犯罪者の家族だって事件が起きたことで苦しむ被害者なんだな」と、作中人物に言わせる。
    現代の状況に一考を促す著者の思いが込められた傑作となっている。

  • 犯罪者家族のつらさを伝えないのはマスコミの卑怯なとこだと思う。

  • 自分が正義側にいるときは何をしても赦されると思ってる人が多いです。
    特に今のこのネット社会では、真偽を確かめるより前に拡散されてしまうことも多々あると思います。
    個人情報も顔写真もなんでも拡散されてしまう世の中です。
    きっと悪気もなく、むしろ拡散して断罪することこそ「正義」だと思っている人もいるかもしれない。
    裁くのは法であって、私たちではないのに。

    綺麗事で終わらせるのは簡単です。
    でも「お前はどうなんだ」と問われると返答に困ります。
    もしかしたら同じように加害者家族を責めているかもしれない。同情なんてせずに。

    上手くまとめられない。
    考えさせられる作品でした。

  • 兄が犯した無差別殺人事件により、加害者家族として理不尽な偏見に晒され生きてきた弟と妹。加害者家族に対して世間は残酷で容赦がない。強く生きることも幸せになることも叶わない絶望という名の人生に苦しくなる。加害者の家族もまた被害者なんだと強く思わさられる。それでも傍にいてくれた人たちは暖かく、最後は穏やかな終わりで良かった。子供たちの純粋さに救われる。


  • 人との交流を極力避け、静かに目立たないように、過ごしていても、どこからか情報は流れ、苦しめられる。
    逃げるように場所を変える。
    いろいろなものを諦めていく。

    目に見えない悪意が瞬く間に広がる。
    SNS、メディア、真意不明の噂話…、追い込む社会、視線。

    「いじめは、やめましょう」というポスターが、何度か、でてくる。

    蓮のいじめ問題、保護者の殺気に満ちた抗議、中傷ビラ等々。

    5章から6章にかけて、登場人物たちの感情が一気にでてくる。
    ページをめくる手が止まらない。

    最後は救いがあってよかった。

  • 犯罪加害者家族のお話。自分自身は何も悪いことをしていないのに、加害者家族だというだけでいわれもない中傷を受けて生きていかなければならない。
    今はネットもあるので、誰でも簡単に加害者家族や被害者家族を傷つけることができてしまう。考えさせられるお話だった。

  • 中盤から後半にかけて、突然のミステリー感!!!!!そういえば…という伏線も後から気付きました。切ない話ではあったけど、最後はかろうじて救われたかな?面白かったです。

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著者プロフィール

1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞、及びテレビ東京賞をW受賞。ほかの著作に、『罪火』『確信犯』『共同正犯』『獄の棘』など。

「2023年 『正義の天秤 毒樹の果実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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