ひと

著者 :
  • 祥伝社
3.94
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本棚登録 : 5553
感想 : 657
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635428

作品紹介・あらすじ

激しく胸を打つ、青さ弾ける傑作青春小説!

母の故郷の鳥取で店を開くも失敗、交通事故死した調理師の父。女手ひとつ、学食で働きながら一人っ子の僕を東京の大学に進ませてくれた母。――その母が急死した。柏木聖輔は二十歳の秋、たった一人になった。全財産は百五十万円、奨学金を返せる自信はなく、大学は中退。仕事を探さなければと思いつつ、動き出せない日々が続いた。そんなある日の午後、空腹に負けて吸い寄せられた商店街の総菜屋で、買おうとしていた最後に残った五十円コロッケを見知らぬお婆さんに譲った。それが運命を変えるとも知らずに……。

そんな君を見ている人が、きっといる――。

感想・レビュー・書評

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  • ひと。何てシンプルなタイトル。
    父親も母親も亡くなり、兄弟もいない主人公。戸籍上は孤独となる主人公が、ひとを通して救われていく、繋がっていく。なるほど、それで「ひと」というタイトルかと思いながら読み進めていたけど、終盤のページにタイトルの由来であろう一文が書いてあった。なるほど、と思いながらじんわり目頭が熱くなる。
    私だったらここまで立ち直れるか?直れないな…
    芯の強い主人公に拍手。

  • 久しぶりに、一気読みした作品。
    最後の終わり方も良かった!

    文章がストレートで、だからこそ心情がよくわかる。

    揚げたてのコロッケが食べたくなりました。
    うちの近所にも、お惣菜屋さんがあれば
    いいのにな。

    他の作品も読んでみたい。

  • 東京で一人暮らしをしながら大学に通う二十歳の聖輔のもとに、母が急死したとの訃報が届いた。
    それは、すでに3年前に父を事故で亡くした聖輔が天涯孤独となったことを意味する。
    大学を中退し、家計を切り詰めながら今後の生活を考えていたところ、商店街の揚げ物の匂いが漂う惣菜屋で足が止まった。
    メンチをまけてもらったことをきっかけに惣菜屋でアルバイトとして働くことを志願し、聖輔の新たな生活が始まる。

    主人公である聖輔が置かれた状況は大変なものだが物語は淡々と進み、心の動きもわりとあっさりしていた。
    読んでいてしばらくは、あらすじから想像した重苦しさのようなものがなかったのが意外だった。
    読み進めるうちに、冷静に現実を受け入れることができ、一人で現実的な判断・対処をしようとしていた聖輔が、様々な人との交流によって成長していく物語なのだと感じられた。
    登場人物たちの優しさはどれも押し付けがましさはなく、皆それぞれ違う優しさにあふれていたのが良かった。
    ラストはとても爽やか。多く描きすぎていないことで、その爽やかな余韻が強く残る終わりだった。

  • 物語に波があるというよりは最初から最後まで緩やかでその中に主人公の生活が溢れていて読みやすい本でした。大学生という若さで大切な家族の死を2度も経験して、社会人になって既存の人間関係と新しい人間関係の両方の中で生きら主人公。話が緩やかだなと感じるのは主人公の冷静さや落ち着いてることまた彼の礼儀正しいところから来ているのではと。読みながらこの本に声援を送っている感じでした。

  • 「一人の秋」
    親を亡くして残ったもの。
    生きていくために取捨選択を素早くできたことによって、ギリギリの生活をする前に動き出せたのだろう。

    「一人の冬」
    上京してまで会いに来た。
    本当に貸し借りがあったとしても、それは支払い終わっているというのに今更になって言うのは集りだろ。

    「一人の春」
    少しずつ将来は決まって。
    同情は全くないとは言い切れないだろうが、それでも色んな人が気にかけてくれるのは人柄のおかげだろ。

    「夏」
    想いを口に出す事により。
    呼び出して遠回しに手を引くよう言うなど、完全に自分の負けを認めているだなんて思ってもないのだろ。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1233371

  • 主人公のように逞しく生きれたらいいな

  • この作者の本を初めて読んだ。「27000冊のガーデン」に出てきて知った。中高生におすすめしたい。とてもいい本だと思う。文章短め。会話文多め。主人公の性格の良さに心洗われる。一人っ子で父を亡くし、母も亡くしたとは、どれほどの絶望だろう。残された貯金(けっして多くない)を大切にしながら、アルバイトで生きていく。コーヒー代や電車賃を節約するシーンがとてもリアルで身に沁みて応援したくなる。いとうみくの「車夫」の主人公、吉瀬走と似ている。こういう子は、絶対に幸せになると思う。終わり方も良かった。

  • コロッケ食いたい

    ってな事で、小野寺史宜の『ひと』

    久し振りにええ本読んだなぁって感想です。

    心に染みるって言うか、すんなり綺麗に心を洗い流してくれる様な……。

    また、色々と考えさせてもらう感じじゃね。

    両親を短期間で亡くし、1人で生きて行かざるを得ない聖輔に触れてく人々は良い人も居れば、嫌な人も居る。

    辛い経験を乗り越えしっかり生きて行く聖輔はマジカッコええし尊敬するわ!

    自分の事、自分の子供達の将来の事が不安になる事もあるけど、これ読んだらもっと先の事も色々と考えないと、って思いました。

    ホントにええ本じゃなぁ、紹介してくれた @_aya027 さんにはありがとうって言いたいね

    小野寺史宜さんは初めて読んだけど、他の作品も気になるから読も

    最後にラストが堪らんね!
    聖輔カッコ良すぎるぜっ!尊敬するぜっ!

    2020年51冊目

  • 読み始めたら止まらなくなってしまった。
    厚さがそれなりにあったから、読む前はどうしようかと思ってたんだけど一気に読み終えてしまった。
    読み始めは「線は僕を描く」みたいな方向に行くのかなと思ってたけど、それとは全然違う方向に穏やかに優しく進んでいった。
    頼ってもいい人には頼ってもいい。一人で頑張るのもいいけど、頼れる人にはちゃんと頼る。
    色んな人に言われてたな。
    頼るって一番難しいことよね。
    でもそれをきちんと言葉にして言ってくれる人がいるって幸せなことなんだな。
    読み終えて心の中にまん丸なほわっと温かい物が残る作品だった。

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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