- Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396636012
作品紹介・あらすじ
書けなくなった高校生小説家・綴喜に届いた
『レミントン・プロジェクト』 の招待状……それは、
元・天才を再教育し、蘇らせる国家計画――!
「才能を失っても、生きていていいですか?」
『楽園とは探偵の不在なり』で最注目の俊英が贈るAI×青春小説‼
自分の消費期限は、もう切れているのか──
小学生でデビューし、天才の名をほしいままにしていた小説家・綴喜文彰(つづき・ふみあき)は、ある事件をきっかけに新作を発表出来なくなっていた。孤独と焦りに押し潰されそうになりながら迎えた高校三年生の春、綴喜は『レミントン・プロジェクト』に招待される。それは若き天才を集め交流を図る十一日間のプロジェクトだった。「また傑作を書けるようになる」という言葉に参加を決める綴喜。そして向かった山中の施設には料理人、ヴァイオリニスト、映画監督、日本画家、棋士の、若き五人の天才たちがいた。やがて、参加者たちにプロジェクトの真の目的が明かされる。招かれた全員が世間から見放された元・天才たちであること。このプロジェクトが人工知能「レミントン」とのセッションを通じた自分たちの「リサイクル計画」であることを──。
感想・レビュー・書評
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綴喜文彰18歳は天才小学生と言われた小学4年生でデビューした小説家です。
しかし中学2年の時に出した三冊目の『春の嵐』の大ヒット以来四冊目がずっと書けずにいました。
その綴喜が若い世代の天才を一つのところに集めて交流させる十一日間の合宿に招かれます。
そのレミントンプログラムには同じ年ごろの別の分野の参加者が他に5名いました。
天才料理人の真取智之。ヴァイオリニストの秋笠奏子。帝都藝大三年で日本画を描く秒島宗哉。将棋の御堂将道。映画監督世界のナギデラの娘、凪寺映深。
しかし六人の天才と呼ばれた若者たちはレミントンプロジェクトが「かつて天才と呼ばれていたのに今はもう活躍していない人間」をレミントンというAIとのセッションによって才能をもう一度開花させるものであると知って一度は愕然としてしまいます。
綴喜のプロジェクトは小説なのですが、レミントンのプロットはここにいる六人を登場人物とするミステリー小説を書き上げることでした。綴喜のミステリーと実際の六人はリンクしていくのか…。果たして犯人は誰で動機は何なのか…。
天才にとってはAIは脅威となるものなのですね。
最近時間に関する本を読んだので『ゴールデンタイムの消費期限』というタイトルは上手いと思います。
私はピアノを20年近くやっていたので、全く天才ではありませんが、この中では奏子の気持ちが一番よくわかる気がしました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書は天才といわれた子どもたち6人の葛藤を描いた小説です。私たちは才能のある人をみて「うらやましい」や「自分もあの人みたいになりたい」などの感情を抱きます。もっとひどい人は「いいよなあいつは才能があるおかげで楽に生きれるんだろう」などと嫉妬します。
本書の最大の魅力は才能を持つものがゆえに持っている葛藤です。期待されているけどうまくいかない。やればうまくいくのにできない環境になった。周りから笑われるルーティンをやめられない。そんな天才が物語を通していろんな意味で成長するのは学びの多いものでした。
本書の登場人物が学生であるという点も好感を持てました。大人なら自分の意志で本当に自分がやりたいことを選べばいい。小学生なら大人の期待に大きな疑問は抱かないでしょう。
しかし、本書の主人公たちは高校生が中心です。自分で自分の未来を決めるのは怖い。でも、自我も芽生えてきた時期に訪れるチャンス。物語を通して主人公たちは子どもから大人へと進化していきます。
才能がなくて葛藤する物語はよく見てきましたが、才能があることに対し葛藤する物語は新鮮でした。 -
天才は2種類あると思う。ひとつは最初からその才能に恵まれている人。もうひとつは努力でその才能をキープすることができる人。この物語の登場人物たちはみんな後者だ。自分たちのことを「元・天才」なんて呼んだりするけど、この出来事をきっかけにまた新たな努力を重ねて天才の域に達することができそうな気がする。みんなのこれからの未来を応援したい。
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幼くして天才小説家として持て囃されていた主人公。しかし、三作目のベストセラー以後、全く作品を出せずにいた。そんなときに参加をすすめられた謎のプロジェクト。そこには主人公と同じようなかつての天才たちがいた。
天才って、神様から与えられた才能だから天才なんじゃんって思ってたけど、ずっと天才でい続けるための計り知れない努力と苦悩があって。そこがとても丁寧に描かれていて、展開と合わせて絶妙な作品でした。登場人物一人一人の設定もしっかり描き込まれててみんな魅力的でした。
それぞれが選ぶ結末も、最後まで読んでいけば納得できるものだと思うし、みんな幸せになってほしいなぁと思う。個人的には天才でい続けられないことに絶望しても、そこに必死にしがみついて生きていく御堂くんが好きです。読んでくと彼の強がりも愛おしくなってくる。凪ちゃんとの掛け合いもすき。 -
過去に天才ともてはやされていた6人。レミントンというAIとセッションすることにより、再び天才として復活させようとする国家プロジェクトに参加する。
共同生活の中でレミントンとの関係や、自己を振り返り、苦悩し、同じような境遇の仲間たちとの触れ合いから、各々が進むべき道を見つけて行く。
文体が読みやすくスラスラ読める。
重い感じではなく、素直に登場人物の感情が頭に入ってきて、私だったら…と考えつつ、最後はとても爽やかで晴々とした気持ちになった。頑張れ! -
肩書きを守ろうとしすぎるあまり、自分が見えなくなったとき。
そのとき若き、元・天才たちは、何を思い、どう動くのだろうか?
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書けなくなってしまった高校生小説家・綴喜。
そんな彼は国家主導の「レミントン・プロジェクト」へ参加しないかと声をかけられる。
そこで出会ったのは、今は活躍しきれていない「元・天才」たち。
若くして才能を消費しきってしまった、とされる彼らは、何を思いどう生きるのか?
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肩書きとは、便利ではあるけれど厄介なものです。
その肩書きが自分の生きたい道に沿っていて、成長してもその道を歩きたいと思えたとしても、才能が枯渇してしまった自分に出会ってしまったら?
または、ついた肩書きの道は、実は自分の生きたい道と違っていたとしたら?
才能のない自分は、はたして存在していていいのだろうか?
この物語では、そんな道たちを前に、苦悩する若き元・天才たちの姿が、えがかれています。
若いときは特に「何者かにならなければ」と思ってしまいます。
だから、何者かになりたくて、名前のある職業につきたがり、自分に肩書きをくれる会社を探して就職活動をしていく…
これはもう、日本の子どもたちに代々かけられた、呪いのようなものだなと感じました。
肩書きって便利です。
なぜなら、何者かになったような気分になれ、ホッとするからです。
でも肩書きは永遠ではありません。
肩書きがポンとなくなってしまったとき、それでも生きる光を見つけられるかどうか。
肩書きを得ることを目標にするのではなく、自分の生き方をしてきたら、たまたま肩書きをつけられてしまったのだ、くらいにおもえる人で在れるかどうか。
サラッと読める小説でありながら、生き方についての問いが満載なこの物語。
「何者かにならなければ」と焦る気持ちが少しでもある方は、なにかヒントが得られるかもしれない1冊です。 -
ある事件により小説が一切書けなくなってしまった元・天才少年作家。同じく若くして頭角を現したにもかかわらず、挫折した若者達が集められ、AIの力を借りて、再起を図ろうとする青春小説。
純然たるミステリではないかもしれないですが、謎とその解決にカタルシスがあり、エンディングまで駆け抜けていく爽やかな小説です。女性作家の中で、プロットの独創性は随一といつも敬服します。 -
斜線堂有紀の創り出す世界とそれをわかりやすく表現する文章が好き。
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元天才作家の主人公はいろんなジャンルの若き天才を集めAIでの再教育にて復活させまっせ計画「レミントン・プロジェクト」に招待されて…
今までの人生で天才やったことがいっこも無いはずやのに、何故か主人公にしっかり感情移入できて元天才の苦悩を疑似体験してしまえるのは斜線堂さんの作品の力によるものなんやろな〜さすがです。
ほんま才能ってなんなんやろう?って才能の一欠片も持っていないけど考えたけども才能が無いことは悲劇ではなくて下手こそものの上手なれじゃないけども才能がなくても好きなことがいっぱいあれば楽しい人生なのかな〜って思った。