いえ

著者 :
  • 祥伝社
3.76
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感想 : 183
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396636180

作品紹介・あらすじ

妹が、怪我を負った。案外面倒な兄なんだな、おれは――。
家族と、友と、やりきれない想いの行き先を探す物語
累計32万部突破『ひと』『まち』に続く新たな感動作、誕生!

友がいて職場があって、ひとが築く、まち。
その中に暮らす我が家。近くて遠い、家族。
社会人三年めの三上傑には、大学生の妹、若緒がいた。仲は特に良くも悪くもなく、普通。しかし最近、傑は妹のことばかり気にかけている。
傑の友だちであり若緒の恋人でもある城山大河が、ドライブデート中に事故を起こしたのだ。後遺症で、若緒は左足を引きずるようになってしまった。
以来、家族ぐるみの付き合いだった大河を巡って、三上家はどこかぎくしゃくしている。教員の父は大河に一定の理解を示すが、納得いかない母は突っかかり、喧嘩が絶えない。ハンデを負いながら、若緒は就活に苦戦中。家族に、友に、どう接すればいいのか。思い悩む傑は……。

感想・レビュー・書評

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  • 『ひと』が面白かったので手に取った1冊。
    途中までクサクサしてて、家族も仕事も、彼女とも、うまくいかなくなってしまうのではないかと、嫌な予感を常に抱いていたが、後半はそれらをスッキリ回収していき、気分良く終われた。
    主人公は、決して「できる人」ではないのかもしれないけど、素直に自分と向き合ことのできる人。そして妹と彼女は彼よりもちょっと強い人。
    『まち』も読んでみたい。あと作中に出てきた『ホケツ!』も。

  • 事故で足に障害を負ってしまった妹の兄が主人公。
    後天的な障害を持った人のきょうだいもそれはそれで受け入れるのも辛いんだろうな。
    しかもその事故は妹の彼氏であり、兄の友達でもある人が運転していた車に乗っていたから巻き込まれてしまった部分もあるし。
    憎むに憎めないし、でも許すこともできない。
    難しい立場だわー。
    だけど、思い立ったが吉日で間髪入れずに謝ってしまうって見習いたいと思ったね。
    思いは言葉にしないと伝わらないのは知ってるけど、それができずに大人になってしまったからな。
    なんか一冊で色んなことを感じた。

  • 「三月 雨」
    歩けるだけ良かった。
    責任を持って添い遂げろとまでは言わないが、自分を過信してしまった末の出来事なのだから一言ぐらい言うべきだろ。

    「四月 空」
    職場での立ち位置は。
    店長に直接言えないから周りくどくても頼んでいるのだろうが、それを報告し結論を聞いて再び伝えるのは面倒だろう。

    「五月 花」
    場の空気を悪くして。
    知らなかったとはいえ冗談で済ませれるレベルを越していたからこそ、他のイライラも重なったとはいえ言い過ぎたな。

    「六月 鳥」
    久しぶりに会った時。
    互いに言葉の選び方や言うタイミングが悪いのもあるが、毎回呼び出され注意されるのが自分だと気分も良くないだろ。

    「七月 風」
    悪化していく関係は。
    あのまま家に居続けてもいい方向に転がることはなくとも、何度話し合っても平行線の時点で離れることで変わるのか。

    「八月 月」
    許せない相手は誰か。
    連絡は取り合っていても会おうと言わないことを言及せず、自ら誘うだけでなく次の約束までしてくれるのは愛情だろ。

    「九月 川」
    謝れる時に伝えてく。
    自分の中でしこりとして残っていることがあるのなら、相手に迷惑にならない程度に想いを伝えるのは大切なことだな。

    「十月 家」
    移動になったけれど。
    簡単に会えない距離になってしまったら考えものだが、少し離れるぐらいならば報告だけで終わってしまう話なのでは。

  • 安定の小野寺節。言い回しが小野寺節。
    別作品に出てきた人が出てきて楽しい。けど、意外と覚えてない私。
    小野寺さんの作品に出てくる人って、みんな優しい。ほんわかあったか系。

  • 家族を思うがゆえに、すれ違う物語。

    ▶︎読んでほしい人
    兄妹がいる人。

    ▶︎きっかけ
    まち、ひとの続き。

  • 妹の足の事故を境に、自分の頭の中で悩み続ける毎日。悩む中で、自分の嫌な所に気づいて自己嫌悪し、周りが見えなくなって更に自己嫌悪する。
    しかしふとした会話で、他者の立場になって考えることができた。すると、素直に相手に思いを伝えたり、反対に話を聞いたりすることの良さに気づく。今まで言いたくなかった「ごめん。」の一言が、スルッと出るようになる。
    この物語を通して、主人公と自分を重ねることがあった。そんな書き方ができる小野寺さんの本が好きです。

  • 主人公は家族想いで、家族にも周りの人にも気を使う性格。気の使い方や思考回路が私と似ていると思った。心にモヤモヤが残っていた人との事を勢いに乗って次々に謝っていき心を軽くしていくところは、読んでいて私も一緒にスッキリした。自分軸で決着をつけていくことで前に進める。同じような負の感情を持ちがちだから共感できたのかもしれない。
    田野倉の名前が出てくるとなんだか懐かしい気持ちになる。

  • 社会人3年目の三上傑には、大学生の妹若緒がいる
    傑の親友であり、若緒の恋人でもある城山大河がドライブデート中に事故を起こし、後遺症で若緒は左足を引きずるようになってしまった

    それ以来、何かにつけ妹のことが気になって仕方がない
    事故以来一変してしまった親友との関係、家族の中もどこかぎくしゃくしている

    妹の事故を通して、自分を見つめ直し、職場や友人との人間関係を立て直していく傑の真摯な態度が素晴らしいと思う

    おれはいやなやつだ。人の好き嫌いも多分多い。それはもう認めるしかない。この先もそんなには変わらないだろう。ただ嫌いな人がいやな目に遭えばいいとは思わない。幸い、そう思うようにはできてない。それが救いだ。
    人間、ものの感じ方は変えられない。これはちょっといやだな、と感じてしまうのはしかたない。でも、感じたあとの行動を変えることはできる。こうは動くまいと努めることはできる。その意味でのみ、人は変われる。ただし、とても難しい。それは、生きている間ずっと自分を律し続けるということだから。

    小野寺作品に出てくる青年は本当に温厚で誠実だ
    さらに、その彼女も聡明で明るくて実にさっぱりした女性なのだ

    「ひと」「まち」「ライフ」、そして、この「いえ」
    江戸川区平井を舞台にした4部作
    荒川沿いの高い堤防とその下に広がる河川敷
    砂町銀座商店街、惣菜屋の田野倉、
    消防士を目指している筧ハイツの江藤瞬一くん
    駅向こうの製パン会社に勤めている井川幹太さん
    懐かしい風景と人物が次々と出てきて、嬉しくなった

    しっかりと人々が日々の暮らしを営んでいる感じが、平凡だけれどこの本の魅力だ
    この本を持って、この辺りを歩いてみたいなと思った

  • 江戸川区平井から荒川河川敷。この舞台がとても好きだ。いろんなぎくしゃくやわだかまりを取り除くのは、自分から動くしかないんだ。こんなにすっきりといくことはないかもしれないけど。

  • 兄目線から、家族の様子、友人,彼女、職場、近所、様々なつながりが描かれていて、どんどん読める作品。いいところも悪いところも含めて、人間らしくていいなと思えた。

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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