ドールハウスの惨劇

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 495
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396636371

作品紹介・あらすじ

第25回ボイルドエッグズ新人賞受賞、衝撃のミステリー!
正義感の強い秀才×美麗の変人、ふたりの高校生探偵が驚愕の事件に挑む!

カルシウム摂取量全国トップ・滝 蓮司 × 眉目秀麗の超変人・卯月麗一
高2の夏、僕らはとてつもない惨劇に遭う!

舞台は鎌倉にある名門・冬汪高校。
同高二年の滝蓮司は、眉目秀麗だが変人の卯月麗一とともに、生徒や教師から依頼を受け、思ってもみない方法で解決を図る"学内便利屋"として活動している。その名も「たこ糸研究会」。会長は蓮司、副会長は麗一。取り壊しの決まっている古い校舎の一角が、ふたりの部室にして"事務所"だった。
ある日蓮司は、道を歩けばスカウトが群がり学内にはファンクラブすら存在する超絶美少女、藤宮美耶という同級生から、ある依頼を受ける。
その依頼とは――。
蓮司と麗一が依頼を引き受けたがゆえ、惨劇の幕は開く! 舞台は、鎌倉に佇む白亜の豪邸。ふたりは特異な家族にまつわる、おぞましい事件の真相をひもといてゆく。
新進気鋭の著者が放つ、渾身のミステリー!

感想・レビュー・書評

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  • 可愛いキャラの微笑ましい関係性と、凄惨な事件のバランスが絶妙な青春ミステリー #ドールハウスの惨劇

    ■あらすじ
    主人公である男子高校生、真面目で勉学優秀な蓮司と変人イケメンの麗一は、校内で便利屋として活動していた。また同じ学校に通う双子の女子高生、美耶と沙耶は家族の心配事を抱えていた。便利屋の二人は、双子たちから相談をうけて…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    コミックの登場するキャラクターのように、愛着があるキュートな登場人物ばかり。いちいち気が効いた会話も楽しくて、微笑ましく物語を読み進められます。

    しかも鎌倉の豪邸や高校が舞台、お悩み解決便利屋の初々しい高校生たちが活躍するミステリーで青春要素も満載です。
    しかしながら事件の中身はタイトル通り… なかなかの陰惨な事件。ギャップのバランスが絶妙で、読み心地のよい作品でした。

    本作イチオシなのは、やっぱり登場人物がしっかり描けていること。人間性はもちろん、人と人との距離感が巧みなんですよね。

    特に双子の美耶と沙耶、母、主人公たちとのやり取りがお見事です。前半のデートのくだりから、中盤の事件への干渉、真相判明からラストシーンへ。
    全員の距離感が近づいたり、離れたり、恋焦がれたり、裏切ったり。これがJapanMadeミステリーの良いところですよね~

    しかし本作は新人作家先生とは思えないほど、いわゆる小説としての出来がいい。
    起承転結、プロットがしっかり組み立てられていて、そのままアニメやテレビドラマになっても見応えがある作品になりますね。本シリーズは続編も書かれているとのことなので、自作も期待しちゃいます!

    ■絶賛推しポイント
    双子の美耶と沙耶。あまりに二人の魅力を描けているので、これだけで優勝です。

    美耶の物怖じしない迫力、圧倒的なプライドの高さ。
    沙耶の静かで重い粘り強さ、ひた向きさ。

    こんな女性が現実にいたら、二人とも惚れちゃうな~ と思わせる、素晴らしい書きぶりでした、

  • 鎌倉にある名門高校二年の滝蓮司は、眉目秀麗だが変人の同級生・卯月麗一とともに、「学内便利屋」として活動している。そこに現れた依頼者は、学校きっての美少女・藤宮美耶。彼女には双子の妹・沙耶がいたが、母親は美弥には容姿を磨くこと、沙耶には学力を上げることを強要して、二人の生活を完全に管理していた。
    そして、二人の誕生日のあと、悲劇が起きる。

    語り口通り、結末は前向き。
    「惨劇」からもっと惨憺たる事件を期待してしまったのは当方のミス。毒親の束縛というのも、金があるゆえに勘違いしたが、そっちの毒親か。自業自得の感がある。
    蓮司くんの真っ当な感覚は好ましいが、麗一くんは謎。美耶の今後を思うと、沙耶は苦労しそうだな。

  • ドールハウスの惨劇というタイトルからは想像できないくらいに、コミカルな感じのやり取りをする「たこ糸研究会」こと高校内の便利屋2人が巻き込まれる事件。

    惨劇には程遠い…という章から既に惨劇感しかなかったのですが、終わってみれば確かに『ドールハウスの惨劇』だなと思いました。

    ミステリー読むときに、何気ないこれは伏線なのかと疑心暗鬼に読んでいって、糸が解けるとあっ!?そういえばとなる謎解きパート。

    若干アンフェアなところもあるのか?と思いながら、一応それらしいことも書いてたし、多分フェアなんだろうなと思う読後感。

    なかなかいろんな意味で惨劇だった話は一応優しい救いがある中に終わるという感じで読後感も良い作品です。

    主人公達のやり取りがどことなく米澤穂信先生の『本と鍵の季節』みたいな感じを想像してしまい、こういう高校生の高校を舞台にしたミステリーが私は好きなのかなと思いながら、たこ糸触ってどこのメーカーのたこ糸か当てるゲームが個人的には気になっています。

  • 毒親。ひどすぎる毒親。
    事件がおきるまでが長く、どうなって行くのかと思ったが、家で起きたあの事件から一気読み。犯人は当然あの双子の!と思っていたが、いい意味で裏切られて面白かった。
    想像以上の重い展開になり、びっくりした。
    伏線回収もとても良かった。お見事。
    タイトルの意味がわかる。なるほど納得。
    大学生になってからまた再会できたらいいなぁと思った。
    第25回ボイルドエッグズ新人賞。
    デビュー作とのこと。
    完成度が高く、次回作にも期待したい。

  • 「クロコダイル・ティアーズ」に続き、舞台が鎌倉、かぶった。

    滝と麗一のコンビがよい。おちゃらけた感じだけど、内容は結構シビア。
    二人のコンビまた読みたいな。

  • エンタメ性抜群で文句無しに面白かった。シリアスとコメディのギャップが凄まじく、感情を大いに振り回された。事件の真相はとんでもない狂気と恐怖に満ちていた。それを引きずらず爽やかに〆た作者の力量にアッパレ。高校生コンビの魅力的なキャラクターやユーモアセンスに長けた台詞回しも素晴らしい。続編も期待大。

  •  最初の腹下しの件、ししおどし研会、ヘッドライトのゴミ箱探査等、便利屋さんの小ネタが非常に面白かった。

    個人的には、メインの事件より、便利屋さんのストーリーだけで十分良かったのになと思いました。

  • 小柄でお人好しな蓮司と、容姿端麗なのに見た目には無頓着な麗一。高校二年生の二人は表向きは「たこ糸研究会」として学校内で便利屋をしている。そんなある日、蓮司たちの同級生で、学内で有名な藤宮美耶・沙耶姉妹の母親が何者かに殺され……。

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    市立高校シリーズと図書委員シリーズのウィットさとシリアスパートを混ぜて事件は人間模様ドロドロにしたらこんな感じになると思う(たぶん)。
    作中の蓮司と麗一の高校生らしいしょうもないやりとりや探偵役の変人さなど日常パートには安心しつつ、毒親パートは「母という呪縛 娘という牢獄」を思い出して、これはしんどい……と思いながら読んだ。

    結果的に姉妹は色々な意味で解放されたのは救いだが、第三者の犯人も事件の元凶の張本人も死んでいるし、いい意味でも悪い意味でもなんとも気持ち悪い読後感。
    人形ではない沙耶がわざわざあの家の狭い部屋で生かされていたのは何の為?とか(姉は美人で妹は優秀というどちらも欲しい母のエゴなのか、“人形”としてのスペアなのか、張本人は単に汚いものは見たくないというだけなのか……)はモヤモヤするし、相手母とはwin-winとはいえ、一目惚れの少女に邸宅まで用意するのも、第三者を利用して更衣室チェックをするのも怖すぎる。美耶の件にせよ沙耶の件にせよ、自分の思いが高じて執着になるというのが一番怖い。

    トリックに突飛なところはないが、麗一がきちんと詰めていってくれるのでその辺は安心して読めた。
    普通の高校生らしい蓮司と、普段は飄々としているけれどいざという時は機転がきく麗一のコンビや、蓮司に何かとつっかかってくるが憎めない志田のキャラクターは良かったので、夏刊行予定の次巻も読もうかなとは思う。長編も読みたいが、「たこ糸研究会」っぽい日常の謎も読みたいところ(この高校、まりもや冥王星でも部活が成り立っているのが気になる……)。

  • 男子高校生二人組のミステリー解決…これは好きなやつ!しかも結構重いようだ!
    と、即買い、ほぼ一気読み。

    双子と毒親のやりとりが重く、
    一方で男子高校生らのなんでも屋はライトで、
    途中途中『同じ物語??』と疑うくらい温度差があって、また、次々と視点も変わり展開していくのでボリューミーに感じた。
    個人的には各章のタイトルが面白いと思った。じわじわ、ジェットコースターが登っていくように「くるか…?くるか…?」な感じが楽しく読めた。


    登場人物みんな怪しく見えてくる。
    そしてあんなに胡散臭かった志田くんはなんでもなかった謎(笑)
    犯人は結局一言も喋ってない人物だったり、
    保健の先生はとんでもなかったり、
    トイレのケーキは怖すぎたり、
    予想外があって面白かった。

    ただ、スッキリしない部分もちらほら。
    おじーさんはなんで臭かったん?
    娘が臭かったんじゃないのか?
    先生のその大金の出処は??DVDどっかに売ってたわけじゃないよね?
    そしてなんで車そんなに持ってるの
    その描写必要だったか??
    ママ、なんでドレス着て泥酔してたの…

    私が読み取れなかっただけな気もするが、
    部分部分重いので今の所は振り返らずにおこう。

    そしてどうでもいいところで言えば卯月くん(イケメンの方)がぶっ飛びすぎている……
    体操服デートは…どうなんだ…


    あと知り合いにも同じような双子がいるので、双子って大変だよなぁ…と現実と重ねて読んでいた。どっちも同じくらい、ならいいけど、どちらかが『劣っている』とされた時。兄弟でもキツいのに、双子はより強く相手を恨んだり羨んだり妬んだりするんじゃないだろうか。いつしか諦めたりするんだろうか。



    以下バディものに弱い私の垂れ流しメモ






    こういうバディものだと、片方はイケメンだけど変人、でも頭がいい!ってキャラをついつい期待してしまうんだけど、それにしたってぶっ飛びすぎてて…なんだ…うわこのキャラかっこいい!ってならんかった…いや、それが意図なら大成功なんだけども。もう1人のキャラも上手く掴めず……熱血?純粋?かな?それでもお互いウマがあって暗黙の了解だったり、考えが一致したりするのを期待したけど片方は置いてきぼりな感じもあり…どっちが頭いいんだ!?ってなった(笑)ワトソンキャラだったのかな??
    掛け合いも、なんとなく刺さらず…
    この2人は仲がいいのか?どんな関係値なんだ??と最後まで気になって終わりました。

    多分、最近読んだミステリーの図書委員男子高校生バディが理想的で尾を引いているんだろう…読むタイミングが悪かったか…


    それにしても突然、厨房以外に業務用冷凍庫出てきたら100%中に死体入ってる(入れた)説。
    そして業務用冷凍庫の表現しつつ、振る舞う食べものが適当あるある(笑)

  • カバーとタイトルに惹かれて衝動的に買った本だが、読んで正解だったと思う


    全て読むと想像以上に暗い内容だったが、
    鎌倉での爽やかな青春と高校生らしい日常が、この惨劇をより際立たせているようだった。
    ただの日常の中にこそ、このような事件は生まれるのだと思う。


    そして、たこ糸研究会の2人の変人さと優しさが、とても良かった。
    麗一の持つ推理力・行動力ももちろんだが、蓮司の正義感や「普通の幸せ」を持っているからこその視点も、なんだか共感しやすく、内容に没頭できた。



    この方の他の小説が出るならば、また読みたいし、続編も出るようなので楽しみに待ちたいと思う。

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著者プロフィール

遠坂八重(とおさか やえ)
神奈川県出身。早稲田大学文学部卒業後、一般企業に勤務しながら、小説執筆に挑戦。いきなり第25回ボイルドエッグズ新人賞を受賞した。処女作とは思えぬ筆力とキャラクター造形の妙を兼ね備える、期待の大型新人。尊敬する作家は、ヘルマン・ヘッセと川端康成。今作はシリーズ化が既に決定し、2023年夏に続刊を予定。

「2023年 『ドールハウスの惨劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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