貧しき信徒 (新教新書)

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  • 新教出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (126ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784400640219

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  • キリスト教詩人・八木重吉。30歳で結核により夭折した彼は、教師をしながら信仰心と自然や家族の日常などを透明でこわれてしまいそうなほど繊細な言葉で詩をつむぎつづけた。中学生か高校生の頃「こうこうとのぼってゆきたい」という詩を読んで感動したのだが長らく誰の詩が探し続けていた。ネットで検索して彼の詩だと知り、この本を読んでいる途中だったので偶然に驚いた。この詩集には件の詩はないが、この詩集も素晴らしい。感動に涙した。クリスチャンでない人にもお勧めしたい詩集。ぜひ彼の純粋な魂にふれてほしい。

  •  「雨」目当てに買ったんだが、雨違いでお目当ての詩が掲載されてなくて残念。
     著者はキリスト教の熱心な信者で作品にもある程度その信仰心が反映されているように思うが、この詩集には特に信仰心が色濃い作品の掲載が多くて口に合わず。

  • 質朴の詩人、かな。心の純度を感じる。

    八木重吉の詩には「不意をつかれた」、その受動性がよく表現されていると思う。意表をつかれた時に、出会ってしまったもの、目に映った情景から、自分の“今”を知る。僕の思う「詩」の本質に満ち満ちている。


    〇沼と風

    おもたい
    沼ですよ
    しずかな
    風ですよ


    〇美しくすてる

    菊の芽をとり
    きくの芽をすてる
    うつくしくすてる



    〇冬

    木に眼が生って人を見ている


    〇梅

    梅を見に来たらば
    まだ少ししか咲いていず
    こまかい枝がうすうすと光っていた



    〇石

    ながい間からだが悪く
    うつむいて
    歩いていたら
    夕陽につつまれたひとつの小石がころがっていた


    〇春

    原へねころがり
    なんにもない空を見ていた


    〇春

    黒い犬が
    のっそり縁側のとこへ来ていた


    〇森

    日がひかりはじめたとき
    森のなかをみていたらば
    森の中に祭のように人をすいよせるものをかんじた


    〇冬

    葉は赤くなり
    うつくしさに耐えず落ちてしまった
    地はつめたくなり
    霜をだして死ぬまいとしている


    〇雨

    窓をあけて雨を見ていると
    なんにも要らないから
    こうしておだやかなきもちでいたいとおもう


    〇くろずんだ木

    くろずんだ木をみあげると
    むこうではわたしをみおろしている
    おまえはまた懐手しているのかといってみおろしている


    〇障子

    あかるい秋がやってきた
    しずかな障子のそばへすりよって
    おとなしい子供のように
    じっとあたりのけはいをたのしんでいたい


    〇秋のひかり

    ひかりがこぼれてくる
    秋のひかりは地におちてひろがる
    (ここで遊ぼうかしら)
    このひかりのなかで遊ぼう

  • 「きりすとが わたしをだいてくれる わたしのあしもとに わたしが ある」(きりすと)。「私の中の私を私が見る」というような表現は聖書やキルケゴールにも出てくる。真の自分というようなことだろうか?何となく分かる気もするが、よく分からない気もする。非常に深い意味がありそうだ。「私みずからである時のみ神をかんずる」

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著者プロフィール

1898年生まれ。1927年、肺結核により29歳にて妻、二人の子供を残して永眠。その二人の子供も間もなくして父と同じ病で世を去った。東京都南多摩郡の農家に生まれ、師範学校を卒業して教員となる。鎌倉メソジスト教会に出席。小石川福音教会のバイブルクラスで信仰を深め、駒込基督会にて21歳の時に洗礼を受ける。しかし、徐々に内村鑑三の影響を受けて無教会的な信仰へと成長していった。生前に刊行されたのは第一詩集の「秋の瞳」のみ、死後、第二詩集「貧しき信徒」が友人の手によって刊行された。残された作品群は3000あまり。ちくま文庫の全詩集に掲載されている。

「2018年 『うつくしいもの 八木重吉 信仰詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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