現代日本女性詩人85

制作 : 高橋 順子 
  • 新書館
4.33
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 14
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784403250835

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 女性詩人のアンソロジーの詩集ですね。
    詩人の高橋順子さんが編集された八十五人の詩人が網羅されています。
    上段に詩を下段に解説の形で紹介されています。
    『生きていくために詩を書かずにいられなくて、そうゆう現代詩の潮流とははずれたところで自己流に書いてきた女性詩人は少なくない。その言葉は洗練を欠いているかもしれないが、破れそうなほど内圧が高かったり、血をながしていたりする。そういう言葉を私はもう一度聞きたかったのである。』と高橋順子さんは述べられています。

    正直、読んでいて女性詩人の方々の力強いエネルギッシュな詩の数々に圧倒されそうになりました。

       花かぞえうた
              岸田衿子 『あかるい日の歌』

      いちごのはなは さくばんは
      いちばんぼしの いちみつけ

      にわうめのはなは にわにさく
      にわのにわとり にげてった
      
      さざんかのはな さいたとき
      さむいほっぺた さんりんしゃ

      しひらのはなは しろじろと
      しなののやまに ちっている

      ごまのおはなに ごごのかぜ
      ごくぼそけいとで なにあもう

      ロダンセのはな むすんだら
      六かいのろうかに はしりましょう

      なしのはなは ゆきみたい
      ないているこは なきやんだ

      やぐるまそうの はないくつ
      やまのたきぎに さしてある

      コクリコのはな けしのはな
      ここに こどもが かくれてる

      とうもろこしは とおせんぼ
      とうさんよんで とおまわり


         六月のうた
          ーーこどもの絵本のためのエスキス
            鈴木ユリイカ
              『ビルディングを運ぶ女たち』

       だれだ
       ドアのむこうの
       ひるのおつきさん

       だれだ だれだ
       かきねの むこうの
       あおいあじさいの むこうのへいの
       まだらねこの ぴんくのあじさいのあくび

       だれだ だれだ
       でんせんのうえで ひかるのは
       だれだれだ
       あまだれ あまだれ
       あまだれだれだれだれだ
       あまだれのこどもと
       あまだれのおばあちゃんと
       あまだれのおんなと
       あまだれのおとこが
       くっついて 
       みな おちた

    メルヘン的な詩を二篇のみえらびました。あとはダイナミックな詩編にあふれています。すごいですね、高橋順子さんの言われるように、ほとばしる言葉に感性の血潮をみる想いです。

  •      むじゅん       吉原幸子

     とほいゆきやまがゆふひにあかくそまる
     きよいかはぎしのどのいしにもののとりがぢっととまつて
     をさなごがふたりすんだそぷらのでうたってゐる
     わたしはまもなくしんでゆくのに
     せかいがこんなにうつくしくては こまる
                       (以下略)

     編者高橋順子は<まえがき>にこんな趣旨を書いている。
    「これまでに公にされたアンソロジーに女性の仕事がなおざりでなく評価されていたら、(新しくこのようなアンソロジーを)夢見ることはなかった。」
    「本書は日本の女性詩人によって書かれた詩を選び出し、私はこう読んだという読みを示したものである。感動とともに、戸惑いをも記さないわけにはいかなかった詩もある。」
    「こうして百年の女性の詩を一望したわけだが、けっこう多様性に富み、一色でないことに私は安堵した。」
    「いまの私にできることは、残された詩、生まれたばかりの詩と対話していくことだけである。」

     収録されたのは、1900年代初頭の大塚楠緒子「お百度詣」から、1995年の川口晴美「夏の部屋」までの、20世紀詩人たちの作品。
    アンソロジーを編むにあたり、新川和江・吉原幸子の季刊女性詩誌「ラ・メール」にも助けられたと編者は語る。
    多くの高名な詩人とともに、中島みゆきもいるし、初めて読む詩人達にも出会う愉しさがあるのはこのためだろうか。

     それぞれの詩に編者はコメントをつける。あるいは連想するその作者の別の詩を載せる。
    編者が「感動し戸惑う」ここが実はこの一冊の読ませどころだろう。  

  • 数年前に読んだ。しかし高橋順子さんが、あの車屋さんの奥さんだとは昨日まで全くしらなかった。雨や風のシリーズを出していることは、図書館で知っていたけれど。この本は文字通り女性詩人の作品と解説。一番驚いたのは、人間がどこから、おんなの大事な部位から生まれてくることを書いた詩。でもその方は、出産の経験がないようだった。。

全3件中 1 - 3件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×