大久野島からのバトン (文学のピースウォーク)

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  • 新日本出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784406060332

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  • 14歳の香織は夏のYMCAキャンプで、広島の後に大久野島を訪れ、元毒ガス資料館の館長、柳沢進一と出会う。彼は14歳の時に大久野島の陸軍技能者養成所に入学し、終戦まで毒ガス作りに従事していた。
    ウサギの島として知られるのどかな国民休暇村の過酷な過去に関心を持った香織たちは、彼の経験談に耳を傾けるうちに、戦争による被害と加害、戦争回避のための行動などについて考えを巡らせていく。

    毒ガス製造に携わって被害を受けた人たちの経験から、そこで作られた毒ガスで被害を受けた人たちへ思いを巡らし、戦争へ傾く世の中に対してできることは何かを考えさせる作品。

    表紙絵と文体は幼く、このような辛い事実を語るにはアンバランスな感があるが、考察は深い。
    文学作品としてよりも、事実を伝える役割が評価できるため、ノンフィクションで読みたい。

  • 児童文学なので、実にわかりやすく、
    大久野島について書かれている。

    大久野島、毒ガス工場の証言集を読むつもりだが、
    その前にざっくりと概略をつかんでおきたかった。
    ウィキなどでもわかるのだが、物語なので頭に入りやすい。

    あらすじは・・・
    夏休み、Y(YMCAなど)の活動の一環で
    大久野島を訪ねた中学2年の香織と清海。
    ふたりは、かつて毒ガス製造工場で働いていた
    進一というおじいさんに出会う。
    ふたりが聴いた大久野島の歴史と今・・・

    こういうことがありました、
    ではなく、
    そこからどうするかが描かれるのが
    子どもを対象とするからだろう。

    でも、大人も同じ。
    きちんと何があったかを知り、
    そこから、考えていくこと。

    証言集から入っていたら、たぶん、知ったことで
    満足していただろう。
    知ったことで満足してしまう自分に自戒を込めて。

    最後に明治大学登戸研究所の功労者である
    渡辺賢治先生の解説があり、
    きちんと書かれた作品と感じさせられる。
    (かつての登戸研究所は偽雑はじめ、風船爆弾など
    戦時中の秘密兵器などの開発にあたっていた)

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著者プロフィール

1942年、東京に生まれる。幼稚園教員を経て、創作活動に入る。現在は児童文学とともに、こどもの遊び、文化、生活に広く関心を持ちながら活動している。作品に『小犬の裁判はじめます』(童心社)、『琵琶湖のカルテ』(文溪堂)、『永遠に捨てない服が着たい』(汐文社)、『大久野島からのバトン』(新日本出版社)、『三河のエジソン』『ぼくらが作った「いじめ」の映画』『津波をこえたひまわりさん』(以上、佼成出版社)など多数。

「2018年 『デニムさん 気仙沼・オイカワデニムが作る復興のジーンズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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